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十万回の戦闘

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第一章

               十万回の戦闘
 ある共産主義と自称しながらも世襲でしかも階級をその出自で定めている誰もが何処が共産主義国家だと思う国のことは世界の誰もが知っていることだ。
 そしてこの国の国家元首が世襲制の独裁者であることも世界の誰もが知っている、しかも寿限無寿限無後光の擦り切れの様な賛美がいつも最初に来ることも。
 その中に百戦百勝の鋼鉄の霊将という賛辞もあってだった。
「ええと、十万回の戦闘に勝った?」
「凄い数だな」
「何だよそれ」
「無茶苦茶だろ」
 ある大学の軍事研究のサークルで部員達がその賛辞について言っていた。このサークルは主に資料や文献で学びボードゲームに興じている。
「百戦百勝ってだけであれなのにな」
「それ孫子で駄目だって言われてるだろ」
「最善は戦わず勝つ」
「それが最善だってな」
「戦争したら絶対に損害出るぞ」
 部員の一人である横溝秀喜が言った、細い目で色黒で頬の上が出た面長の顔だ。黒髪をセンター分けにしていて背は一八三ある。実は空手部と掛け持ちである。軍事にも興味があってそれでこちらのサークルにも参加しているのだ。
「空手だって試合したら怪我しかねないしな」
「そうだよな」
「戦死者の出ない戦争ってないからな」
「勝ってもダメージ受けるしな」
「実際戦争ばかりして衰えた国あるしな」
「ルイ十四世の頃とかナポレオンの頃のフランスもそうだし」
「中国の戦国時代の魏なんかもそうだな」
「その時点でおかしなこと言ってるよ」
 横溝は友人達とその国についての本を一緒に読みつつ話した。
「本当に」
「何から何までおかしな国で」
「このこともおかしいよな」
「孫子もわかってないとかな」
「おかしなことばかりだな」
「というか何時百戦したのかな」
 横溝はその戦いをした数のことを話した。
「初代の人も」
「日本軍とゲリラ戦したって言ってるよな」
「あれのことか?」
「実際は野盗みたいなので負けっぱなしでソ連に逃げ込んだっていうけれど」
「パルチザンっていうのは大嘘で」
 その実はというのだ。
「逃げ回ってばかりで」
「戦争なんて立派なことしてなかったんだよな」
「その後はソ連軍で戦ってたんだよな」
「スターリングラードの戦いにも参戦していたらしいな」
「みたいだね、それであの国の国家元首になって」 
 横溝がそこからのことも話した。
「それで戦争起こして」
「最初は威勢がよくて」
「アメリカ軍が来たら横っ腹衝かれて負けまくった」
「それで中国の義勇軍に助けてもらった」
「それが実情で」
「その戦争の後は戦争してないよな」
「後はテロとか工作ばかりで」
 それでというのだ。
「百戦百勝どころか」
「全然勝っていない」
「そうだよな」
「負けてばかりだろ」
「テロとかも結局ばれてるし」
「百戦百勝じゃないだろ」
「それが初代の人で二代目も今の三代目も言っているけれど」
 横溝は部員達と部室の中の席に座ったままさらに話した、手にはその国の本があり周りの本棚やケースには本やボードゲームがありパソコンもある。 
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