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イベリス

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第三十四話 中間テストの結果その五

「私もとです」
「お師匠さんをですね」
「超えられると信じています」
「それで劣等感もですね」
「それは克服出来ます」
 こう咲に話した。
「そう信じています」
「そうですよね、きっとです」
「はい、あと小山さんもです」
「私もですか」
「劣等感はです」
「克服出来ますか」
「何らかのことで」
 咲を見つつ話した。
「出来ます、カエサルもです」
「髪の毛ですね」
「実は必死に増毛を考えていました」
「そうだったんですか」
「月桂冠もです」
 これもというのだ。
「前髪を隠せるので」
「好きだったんですか」
「何か髪の毛を前にやり」
 カエサルの髪の毛は前からなくなっていっていたという、それで後ろにある毛を前に必死にやっていたのだ。
「何とかです」
「隠していたんですか」
「その様です、ただそれでもです」
「髪の毛はですね」
「戻らなかった様ですが」
「だからああした仇名でしたか」
 咲は考える顔で述べた。
「禿の女たらしとか」
「酷い仇名ではありますね」
「ちょっとないですね」
「女性で有名ですが男性からもです」
「そうした趣味は」
「なかった様ですが」
 そうした噂はあったが実はそうではなかったという。
「しかしです、人を魅了したので」
「男の人からもですか」
「もてました」
「そうでしたか」
「そうです、それと劣等感ですが」
 速水はこの話に戻してきた。
「ヒトラーはそれの塊でした」
「そうだったんですか」
「若い頃は」
「そうでしたか」
「美大を受けて落ち続けていて」
「画家志望でしたね」
「そうでしたが」
 ウィーンの美大に落ち続けていてだ、彼はこの街であてもなく暮らしていたのだ。それが戦争がはじまるまでの彼であった。
「平民出身でこれといって何もない」
「そうした状況で」
「劣等感の塊で」
「色々あったんですね」
「ですが彼はやはり天才だったのでしょう」
 速水はヒトラーをここでこう評した。
「一次大戦後ナチスに入り」
「ああなったんですね」
「語学も堪能で」
 英語やフランス語、イタリア語を話せたという。ドイツ語だけでなく。
「どんな難しい本も読破し記憶力もです」
「よかったんですね」
「はい、そして」
 それでというのだ。
「教養もです」
「あったんですか」
「どんな本も読めたので」
 その為にというのだ。
「そちらもありました、そして政治家として」
「凄かったんですか」
「演説は言うまでもなく」
 これで頭角を現したことは歴史にある通りだ。 
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