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族のヘッドよりも

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第一章

                族のヘッドよりも
 梶谷真人は高校時代伝説の不良であった、喧嘩では無敗であり暴走族のリーダーでもあった。かつてはリーゼントだったが今はスキンヘッドでサングラスに髭を生やし一九〇以上の筋骨隆々の大男である。
 今は繁華街で居酒屋の店長をしている、彼はよくこう言っていた。
「うちの店に用心棒はいらないからな」
「店長さんがそうだからですね」
「それで、ですね」
「ああ、ガキの頃から喧嘩は負け知らずでな」
 彼は店員達によく言っていた。
「中学から柔道もやってるしな」
「店長さんもう六段ですよね、柔道」
「黒帯どころじゃないですね」
「この前七段になった」 
 そこまでに至ったというのだ。
「帯は紅白だ」
「五段までが黒帯で」
「六段からそうでしたね」
「三十五でこれは凄いらしいな、それで喧嘩もな」 
 これもというのだ。
「負けなかった、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「俺は喧嘩はしないしいじめもな」
 これもというのだ。
「しないからな」
「店長さんはそうですね」
「いじめはしないですね」
「そうした人ですね」
「ああ、本当に強い奴はしない」
 そんなことは絶対にというのだ。
「ガキの頃親父に言われてだ」
「それで、ですね」
「ずっといじめはしない」
「そうですね」
「あとシンナーとかヤクもだ」
 こうしたこともというのだ。
「しないからな、族のヘッドでもな」
「それでもですね」
「喧嘩はしてもそうしたことはしない」
「道は踏み外さないですね」
「突っ張るのと外道は違うんだ」
 梶谷はこのことを強く言った。
「だからな」
「それで、ですね」
「店長さんは今もそんなことはしない」
「それで、ですね」
「このお店でもですね」
「健全経営でな、あと用心棒はな」
「必要なしですね」
「店長さんがおられるから」
「だからですね」
「ああ、そういうことだ」
 笑顔でこう言っていた、そして実際にだった。
 彼の姿を見ただけで誰も悪いことはしなかった、そうして彼は祖父からの店を守って切り盛りをしていたが。
 ある日のことだった、店に。 
 一人の老人が来た、小柄で白髪頭で顔は皺だらけだ。
 だがその老人を見て梶谷は店員達に言った。
「あの人普通じゃないぞ」
「あのお爺ちゃんがですか?」
「そうなんですか?」
「ああ、絶対にな」
 店員達にも話した。
「只者じゃない」
「そうですか」
「そんな人ですか」
「あの人は」
「百歳に達してるかも知れないけれどな」 
 それだけの高齢だが、というのだ。見れば一杯の大吟醸をを冷奴を肴にして少しずつ飲んでいて至って静かだ。
「凄い人だぞ」
「店長さんがそう言うならですね」
「あのお爺さん相当ですね」
「滅茶苦茶強いですね」
「ああ、俺なんかな」
 それこそというのだ。 
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