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木箱の中

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第一章

               木箱の中
 メキシコのテイフアナ空港でのことだ。
 警察官のホセ=ガルシア一七〇位の背でやや腹が出た黒髪と黒い目で浅黒い肌に口髭を生やした中年男性の彼はこの時空港をパトロールしていた。
「何もないですね」
「何よりだよ」
 一緒にいるサントス=バビントン若い警官である彼に応えた。バビントンは明るい顔で色白で髪の毛は赤が入っていて黒い目は明るく背は一八〇近く痩せている。
「本当に」
「何もないのが一番ですね」
「ああ、本当にな」
 こう言うのだった。
「だからな」
「今もですね」
「ただパトロールをしているだけでな」
「それでよしですね」
「ああ、それじゃあな」
「このままですね」
「散歩していくぞ」
「わかりました」
 バビントンはガルシアの言葉に頷いた、そしてだった。
 二人でパトロールをしていった、すると。
 二人は空港の端に怪しい木箱を発見した、バビントンはその木箱を見てそのうえでガルシアに尋ねた。
「まさか」
「中は爆弾とかな」
「ありますよね」
「調べるか」
「そうしましょう、そしてです」
 そのうえでというのだ。
「何とかしましょう」
「それがいいな、爆弾の担当者を呼ぶぞ」
「そうしましょう」
 すぐにそうしてだった。
 実際に処理班に来てもらった調べてもらうと。
「グルル」
「ガルル」
「あれっ、これは」
「虎とジャガーですね」
 ガルシアとバビントンは処理班が木箱から出したそれ等の生きものを見て言った、見れば虎とジャガーの子供達だった。
「これはまた」
「そうだな、あれか」 
 ガルシアは処理班のスタッフ達が大事そうに抱えている彼等を見て言った。
「密輸だな」
「密猟してですね」
「どうせ何処かのタチの悪い金持ちか動物園の要望でな」
「密輸業者がですね」
「売ろうとしていたんだろう」
「それですね」
「本当によくあるからな、我が国じゃ」
 ガルシアは苦い顔で言った。
「こうしたことは」
「ですね、元をどうにかしないと駄目ですが」 
 それでもとだ、バビントンも苦い顔で話した。
「今はですね」
「ああ、この子達を救えた」
「それでよしとしますか」
「麻薬も密猟も何とかしたいが」
「難しいですね」
「相手が強過ぎてな」
 麻薬カルテルも密猟や密輸の業者も巨悪となっている、ガルシアは今のメキシコの深刻な問題についても述べた。
「だからな」
「それで、ですね」
「中々上手くいかないが」
「何時かは何とかして」
「今はな」
「この子達を救えた」
「それでよしとしよう」
 こうバビントンに言うのだった、そして保護された子達が心ある動物園に引き取られ密かに買おうとしていた悪質な金持ちと売ろうとした業者が捕まったことを聞いて喜んだ。それがどれだけ巨悪の一部であったとしても。
 この事件の後ガルシアは休暇でトルコの方に旅行に行こうとしていた、その途中にベイルートの空港に寄ったが。
 ここでだ、彼はある木箱が開けられているのを見て開けている空港職員達に自分の素性を明かしたうえで尋ねた。
「爆弾か?」
「いえ、生きものです」
「これはシベリアトラですね」
「この木箱ここに一週間位置かれていてです」
「いい加減怪しいと思って開けたんですが」
 スタッフ達は英語で話した、ガルシアは英語はある程度だが空港をパトロールしていてアメリカから来る者の話もよく聞いているのでわかった。 
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