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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十二話 一同、赤壁に出陣するのことその四

 それがわかっているからだ。夏侯淵も今言えた。
「認めるものは認めるのだ」
「だからか。変われたのか」
「それはあちらもだな」
「覇王丸もか」
「そうだ。あの御仁も決めた様だ」
 そのだ。何を決めたかというと。
「若しもあちらの世界に帰ればその時は」
「お静殿とか」
「共に生きる。それを決めた様だ」
「漢ですね、本当に」
 顔良はそんな覇王丸についてこう言った。
「その覇王丸さんだからこそ」
「剣の道を極めそうして」
「お静さんもですね」
「幸せにできる」
 こうだ。覇王丸についての話もしたのだった。その覇王丸は。
 彼もまた飲んでいた。その彼にだ。
 関羽が来てだ。そしてこう声をかけた。
 今彼は星空を見ながら飲んでいた。その無限に広がる星空をだ。
 無数に瞬く星達が夜空を照らす。その星達を友に飲んでいるのだ。
 その彼に関羽がだ。来てこう尋ねたのだ。
「何か考えているのか?」
「ああ、少しな」
「私は今一つそうしたことに疎いが」
 前置きしてからだ。覇王丸に話した。
「お静殿のことか」
「俺は今まで逃げていた」
 そうだとだ。覇王丸は星空を見上げながら関羽に答えた。
「お静からな」
「剣に理由をつけてか」
「ああ、そうだった」
 こうだ。澄んだ顔で言うのである。
「幻十郎とのことも理由に過ぎなかった」
「あの御仁のことは聞いているが」
「俺とあいつは殺し合う関係だ。しかしだ」
「実際にはだな」
「御互いに目指しているものは同じだ。侍だ」
「まことの意味での侍だな」
「俺達は殺し合い、いや勝負の中で」
 お互いに全てを賭けて斬り結ぶ。その中でだというのだ。
「その侍の道に辿り着こうとしていた」
「そうしていたのだな」
「そこには他のものは不要だと」
 そうしてだ。お静もだというのだ。
「理由を付けてお静から逃げていただけだった」
「しかしこれからは違うか」
「俺はお静を幸せにする」
 それをだ。今言った。
「必ずな」
「そうか。そうするか」
「この世界に来て決めることができた」
 まさにだ。この世界でだというのだ。
「俺もだ」
「そうか。この世界に来たのはそうした意味もあったのだな」
「不思議だな。元の世界ではそこまで考えられなかった」
 だが、だ。この世界ではというのだ。
「俺はそこまで至れた」
「何よりだな」
「他の奴等もそうだと思う」
 そしてそれはだ。覇王丸だけではないというのだ。
「俺以外にもだ」
「やはり運命だったのだろうな」
 関羽はこんなことも言った。
「貴殿達はこの世界に来たのは」
「俺達全てがか」
「その迷い、手に入れたくても自分で拒んでいたそれをだ」
「手に入れる為にか」
「この世界に来た。そうした意味もあったのだろう」
「本当に不思議なことだな」
 関羽の話を聞いてだ。覇王丸は。
 微笑みになりだ。夜空を見上げたまま述べた。
「この世界で。色々な奴がそうしたものを手に入れられるなんてな」
「全くだ。私もだ」
 ここでだ。関羽は微笑んでみせた。それは包容力のある大人の女の笑みだった。
「御主達と出会えてよかった」
「あんたもかい?」
「そうだ。多くの。かけがえのないものを見られた」
 だからだというのだ。
 
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