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ヘタリア大帝国

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TURN49 騎士と海賊その五

「あの方がおられればこそです」
「宮中は保たれているのですね」
 その秩序がだった。
「成程、日本には人が多いですね」
「ははは、買い被りじゃないのか?」
 東郷が笑いながら応える。
「それは」
「いえ、そうではありません」
「人は多いか」
「はい、かなり」
 ネルソンの見立てではそうだった。
「ではこの国の帝も」
「待っていた」
 ここで柴神が出て来た。
「では行こう」
「はい、それでは」
 山下が陸軍の敬礼で応える。ネルソンは山下のその敬礼を見ても言う。
「日本では陸軍と海軍で敬礼も違いますね」
「そうだ。海軍は肘を折るがな」
「陸軍では違いますね」
「陸軍は基本的に艦内にはいない」
 柴神はその事情をネルソンに話す。
「外で戦うからな」
「だからですね」
「肘を折らない敬礼になる」
 それが陸軍の敬礼なのだ。
「山下長官はそれをしたのだ」
「そういうことですか」
「そうだ。そしてだ」
 柴神はさらに話す。
「貴殿の敬礼だが」
「エイリス軍の敬礼ですか」
「それは海軍のものだな」
「エイリス軍では軍は分けられていません」
 分けられているのは日本だけである。
「ですから敬礼は一つです」
「そうだったな」
「むしろ陸軍と海軍に分けられている方が」
 ネルソン自身もこのことについて言及する。
「稀かと」
「我が国だけだな」
「他の太平洋諸国の軍もですね」
「分けられている国はない」
 やはりそうだった。
「我が国だけだ」
「それが日本の特色になっていますね」
「陸軍は海軍とは違う」
 山下の方からこの言葉が出た。
「惑星に降下し己の身体で戦う、まさに武士なのだ」
「陸戦隊ですね」
「陸軍なくして決めることはできない」
 戦局をだというのだ。
「海軍には逆立ちしてもできないことができるのだ」
「おやおや、利古里ちゃんのいつもの言葉だな」
「その名で呼ぶな」
 山下は東郷の軽い調子の返しにきっとした目で返した。
「山下と呼ぶのだ」
「そう呼ぶと素っ気無いからな」
「素っ気無くともいいのだ。私は武人なのだ」
 心に刀を構えての言葉だった。
「貴様の様にちゃらちゃらとした輩と一緒にするな」
「これは手厳しい」
「手厳しいのではない。当然のことだ」
「ううむ。どうやら」
 ネルソンは二人のやり取りを聞いてからそっと日本に囁いた。
「お二人は。いえ、日本の陸軍と海軍は」
「あまり仲がいいとは言えません」
 日本はやや困った顔でネルソンに答えた。
「頭の痛いところです」
「軍服も違えば食事も違う」
 柴神もそのことについて話す。
「国家の両輪だがな」
「それでもですか」
「関係はよくはない」
 柴神も認識していることだ。それもよく。 
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