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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督のBlackOps遍
  真相

 秘書艦・長門の語る事件の真相を全て聞き終えた提督と青葉は、他のメンバーを一旦集めた。

「それで?提督よ。こうして私達を集めたのだから、何かしらの事実を掴んだ、という事で良いのか?」

 あからさまに不満げな声を上げたのは武蔵。その頬は酒精のお陰か赤らんでおり、不満の元は楽しい宴会を邪魔されたかららしい。

「ほうでふよへいほふ、ひぇっはふもりああってひゃほころらっひゃのひ」

「……赤城さん、口に物が入ってるせいで何を言ってるか解らないわ」

 残念な事になっているのは武蔵だけでなく一航戦の2人もだった。赤城は口に食べ物詰めすぎてリスみたいになってるし、加賀も若干ふらついている。

「まぁな。今回の海賊騒動の首謀者、及びその動機が判明した」

 提督がそう言った瞬間、一同に緊張が走る。先程までの酔っ払いや食いしん坊とはまるで別人。そこは鍛え上げた自慢の艦娘達だ。メリハリがはっきりとしている。

「今回の一連の騒ぎの首謀者はこの鎮守府……正確に言うならば秘書艦・長門による物だ」

「質問。ここの提督は絡んでいないのか?」

「その辺もこれから説明する。青葉?」

「はいはいっと。え~、端的に言いますとこの鎮守府の提督は、今現在何処かに拘留されている物と見られます」

 淡々と語る青葉の発言に、息を飲む一同。

「…………殺されている可能性は無いのかしら?」

「残念ながらというか、それはここの連中がやらかしている海賊行為が提督の存命を証明しちゃってるんだなぁコレが」

 提督のぼやきに首を傾げる一同。

「あ~、まぁコレ本当はオフレコなんだがなぁ。今現在、艦娘の艤装にはとある電子的なロックが掛かっていてな」

「ロック?」

「提督が居なくなると艤装が動かなくなる」

「そ、そんな機能が!?」

「初耳っぽい……」

「本来なら艦娘に明かすのはご法度なんだがな。まぁ、艦娘による提督への傷害事件やら武装蜂起やら何かと物騒な話が出てるからってんで、後付けでチョイとな?付ける事になったんだと」

「提督の人命尊重の為、か……」

「あぁ因みに、ウチの連中の艤装には付けてねぇぞ?」

「んなっ……!?そんな勝手が許されるのか?」

「まぁ問題ねぇだろ。お前らが俺を裏切るとは思わんし、第一……お前ら俺に勝てる気でいるのか?」

「愚問、だな」

「物量戦で押し潰すならワンチャンあるかも?」

「その前にゲリラ戦にされて各個撃破されますよ」

 流石に人数差で押し潰されると勝ち目はないが、何でもアリのゲリラ戦なら負けるつもりは無い。電子ロックなんぞに頼らなくても俺一人で制圧出来るなら、必要ねぇだろ?




「話が逸れたな。まぁ兎に角、提督が指示して海賊行為をやらせてる訳じゃねぇ。寧ろ、提督を拘留したからこそ海賊行為が必要になったと言うべきか」

 あらましはこうだ。予てより後方で指示するだけ(と思われている)の提督という存在に疑問と不満を抱いていた長門が、鎮守府内に居た同じ様な考えの者達と共謀して提督を拘留。あわよくば殺害しようとしたが提督の生命による電子ロックの存在が発覚し、断念。しかし拘留自体は解くつもりはなく拘留を続行。そのせいで事務作業等の後方での仕事が滞った上、提督の決済が不可能になり補給が断絶。物資欲しさに海賊行為に及び、今に至る……とこういう訳らしい。

「何とも、お粗末な話だな」

「しかも、男嫌いの自分の性癖を押し付けて、ストレスの捌け口に暴行も加えてやがるらしいからな。擁護のしようもねぇや」

「では提督、どうなさるおつもりで?」

「そりゃあ霧島お前、証拠は上がったんだ。やる事ぁ1つだろうに」

 軍令部の上の方からは内々に『処理』してくれと頼まれている。つまりは、そういう事だ。

「……一部でも、助けてはやれんのか?」

 状況を鑑みて、助け船は出せないのかと問う武蔵。

「無理だな。鎮守府所属の艦娘全員が提督の暴行に加わって居ないとしても、その状況を静観している」

「つまりは、イジメを見て見ぬフリをしている者も同罪……というのと同じよ」

「海賊行為にはほとんどの娘が参加している様ですしね。幾ら餓えていたとはいえ、見過ごせませんよ」

 その辺は割とドライな一航戦。

「じゃあ、いつ乗り込むんだい?」

 鎮守府を制圧、と決定した時点で戦闘モードに切り替わる時雨。

「ん~……向こうはこっちが疑ってるとは思ってるだろうが、まさか容疑を確定してるとは思ってねぇだろうからな。今晩辺り、行ってみるか?」

「素敵なパーティ、しちゃうっぽい?ぽいぃ?」

 やたらと鼻息の荒い夕立。普段は大人しいが、戦闘となると張り切り具合が違う。

「すまんが時雨と夕立にはこの鎮守府の提督の捜索・救助を頼む」

「ぽ~い~……」

「そう落ち込むな。基本隠密行動だが、襲って来る奴には反撃しろ。意味、判るよな?」

「っぽい!」

「よし。鎮守府の制圧は雲龍、お前だ。明石開発の『アレ』のいいテストになる」

「……任せて」

「霧島と武蔵はこの船と雲龍の護衛だ。帰る脚が無くなるからな、しっかり頼むぞ?」

「了解しました」

「うむ、任されよう。しかし……残りの3人はどうするんだ?」

「あぁ、俺達か?」

 提督は背後に飾られていた刀を手にすると、腰に差した。

「俺もたまには身体を動かして錆落としせんとな。って訳で派手に暴れて陽動だ」

「腕がなりますね」

「流石に気分が高揚します」

「やれやれ、血の気の多いことだ」

 三つ子の魂百まで、という言葉がある。赤城も加賀も、空母となる前は戦艦だったのだ。その精神は戦艦から空母へと成り、生まれ変わって艦娘となった今でも変わらない。その上司令官である提督がとびっきりの武闘派なのだから、その影響を受けない方がおかしいのである。提督本人は、その自覚は無かったりするのだが。

「作戦開始は24:00。日付が変わったら行動開始だ、それまでしっかりと休んどけよ?」

 提督の言葉に、7人は無言の敬礼を返した。 
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