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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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バリーザウィッチの狙い

 
前書き
今回早めに更新できそうとか思ってたのに結局はこのくらいのスピードにしかならない件について 

 
シリルside

城の中へと潜入した俺とユウキさん。その中は先ほど見た通り、人がほとんどいない上に、こちらに気付いた人も難なく倒せるほどの人しかおらず、どんどん城の最奥へと進んでいく。

「これ・・・本当にバリーザウィッチいるんですか?」

あまりにも歯応えのない相手を前にして思わずそんな言葉が口から漏れてしまう。もしかしたらバリーザウィッチは既にここにはいなくて、俺たちは無意味な突入をしているのでは?そんな疑問が脳裏をよぎる。

「もしそうだとしても、居場所がわからないなら進むしかないだろ?」
「いや・・・それはそうなんですけど・・・」

そんな不安な声に対してユウキさんのもっともな意見。やっぱりこの人ナツさんと根本的なところが一緒なのかもしれない。この深く考えていないところが特に・・・

「今失礼なこと思わなかったか?」
「キノセイデスヨ」
「動揺が丸見えだぞ」

こうやって図星を突いてくる辺りもナツさんたちを彷彿させる。特に勘づかれてほしくないところに関しては鋭いんだよな。

「あそこだ!!あの部屋が王座の部屋だ!!」

そんなことを考えながら進んでいくと、一目でわかるくらい扉がしっかりとしている部屋が目に入る。本当にここにいるのかは不安ではあるが、今はとにかくその可能性に賭けることしかできない。

扉の前まで来た俺たちはその両脇にそれぞれ隠れるように立つ。ここまで罠もなければ敵からの奇襲もなかったため、扉を開けた瞬間に攻撃されるなんてことも十分に考えられるからね。

「せーのでいきますよ」
「何かあったらすぐ交わせよ」

中に聞こえないくらいの小さな声で打ち合わせをすると、集中力を高めてドアノブへと手を伸ばす。そのまま勢いよく扉を開き、中へと踏み込むと・・・

「やぁ、待っていたよ」

そこにいたのは王というには若すぎる青年がいた。

「え・・・本当にいたよ」
「だから言っただろ?今は行くしかないんだって」

予想していたよりも遥かに若い敵を前に様々な疑問点が浮かんでしまい、呆気に取られている。扉が開いた瞬間に攻撃をしてくるわけでもなければ、すでにどこかに雲隠れしていたわけでもない。俺たちが攻めてきているのを知っているはずなのに、護衛も付けずにこの場で待ち続けていたのだ。

(この部屋に何か罠でも仕掛けているのか?)

あまりにも無防備な相手に色んなことを考えてしまう。パッと見た感じ何か仕掛けてきそうな部屋には見えないが、この自信たっぷりな様子を見ると裏があるに違いない。そう思わずにはいられない。

「どうしたんだい?私の首を取るためにここまで来たんだろ?」
「あぁ!!そうだ!!」

こちらから踏み込んではいけない。そんな気がしていた俺をよそに隣にいた青年は相手の挑発に乗ってしまう。

「ちょっと!?ユウキさん!!」

動いた瞬間に何かが起きてもおかしくないのに、そんなことなど考えてもいないのか、目の前の敵に向かって突っ込むユウキさん。

「はぁ!!」

彼は魔法を使えない。ただ、魔力を纏わせた剣を準備していたため、それを大きく振りかざし攻撃に出る。
しかし、バリーザウィッチはそれを難なく回避した。

「くっ!!」

交わされたユウキさんは着地と同時にすぐに切り返すと、再び彼へと向かっていく。それに対し、バリーザウィッチは反撃をするでもなく、ひたすらに回避し続けていた。
それを見て俺の頭の中には再び大量の疑問符が浮かび上がっていた。

(まさかここまで誘い込んでおいで本当に何の罠もなし?そんなことがありえるのか?)

東洋のお城のような形をしているこの場所は外の景色を見える窓も大きく、さらには床はフィオーレでは見たことがない畳を使っている。仕掛けようと思えばいくらでも罠を仕掛けられるのに、それを使わないなんてことがあるのか?

(もし何もないと仮定するなら・・・)

敵はユウキさんに気を取られていたこちらに背を向けている状態。本当に何もないのなら、このチャンスを逃す手はない。
俺はユウキさんに意識が向いているであろうバリーザウィッチに向かって突進する。なるべき静かに、ただ、最速で到達するように加速し、間合いに入ったと思った瞬間・・・

「悪いが、君の攻撃は受けられないんだ」

その言葉と同時に、俺の踏んだ畳から無数の矢が突き出してきた。

「なっ・・・」

まるで俺が突っ込んでくるのがわかっていた・・・いや、そうなるようにと仕向けたのではないかと思うくらいの罠の発動に痛みと驚きを覚える。
身体中に矢が突き刺さったため、痛みでふらつきながら横に倒れそうになると・・・

バンッ

「!?」

今度は俺の身体が向かう畳が開き、下の階へと落ちそうになる。

「とと・・・」

激痛に耐えながら落ちないように堪え、突き刺さった矢を抜きながら二人の方へと視線を向ける。その間もユウキさんは果敢に攻撃を仕掛けてはいたのだが・・・

「ぐっ!!」

その一撃は一つも入ることなく、それどころかバリーザウィッチのたった一度の攻撃がその頬を捉えていた。

「なんだ・・・重てぇ・・・」

たった一度の攻撃だったにも関わらず、ユウキさんは壁に激突するほどの勢いで飛ばされていた。彼も無事ではあるようだが、その力を見ただけで相手がどれだけ強いのかを感じさせるには十分だった。

「生死の神・アンクセラムの使い・ヨザイネ」
「!!」

こちらに背を向けたままのバリーザウィッチが突然発した名前に目を見開く。母である彼女の名前を知っているって・・・

「天界の法を破り、自分たちの世界の住民と結ばれ子を宿したということだったが・・・なかなかの遺伝子を残したものだな」

踵を返しこちらへと身体を向けるバリーザウィッチ。さっき俺が動いた途端に罠を発動させたことといい・・・まさかこいつも・・・

「シリル・・・私はある使命を受けてこの世界にやってきた」
「俺たちアースランドの人間を抹殺でもするのか?」

違うとわかっているものの、そう言いたくもなってしまう。当然彼は首を振り、笑みを浮かべた表情で答える。

「バーンから聞いているんだろ?俺たちは他の世界の住民を安易に殺すことはできないと」
「それが本当かどうか、疑わしいけどね」

確かにあいつらは仕留められるはずだった俺たちにトドメを刺さなかった。だが、こいつはこの国の住民たちに多大な被害を出している。それではその言葉を信用することなどできない。

「本当だよ。まぁ、この世界の住民同士が殺しあうことは我々には関係ないからね」
「そういうことか」

こいつはなぜこの部屋から出なかったのか・・・それは極力敵との戦闘を避けるため。自らが手を下すと法に触れてしまうが、指示を出す分には何も問題がない。ましてやその指示が生死に触れるものでなければ、彼に落ち度などないのだろう。

「それで?お前の使命って一体何なの?」

わざわざこの世界に来たからには何かしらの目的があることは間違いない。ただ、以前の奴らと同じ目的なんだろうと思っていると、予想しようがない回答が返ってきた。

「君を天界に連れ帰ること」
「・・・は?」

思っていた回答とはかけ離れた答えに思わず変な声が出てしまった。俺が唖然としていると、彼の後ろに人影が現れる。

「何ごちゃごちゃ話してんだよ!!」

俺たちの会話の隙を突いてバリーザウィッチに攻撃を仕掛けたユウキさん。しかし、彼の攻撃をバリーザウィッチは受け止めると、こちら目掛けて彼を投げつけてきた。

「なっ!?」
「うわっ!?」

距離も近かったこともあり、避けることができずにユウキさんごと隣の部屋まで飛ばされてしまう。その部屋も先ほどまで戦っていた部屋と同じように、畳張りの大きな窓がついた東洋の部屋になっていた。
















ユウキside

「くそっ・・・」

バリーザウィッチの見た目と全く噛み合わないパワーを前に動揺が隠せない。おまけに俺の攻撃は全て防がれてしまうせいで、奴を倒せるビジョンが見えてこない。

「シリル、君がこちら側に来てくれれば我々は手を引く。全ては君の回答次第なんだ」
「っ・・・」

さっきからシリルのバリーザウィッチが何の話をしているのか全くわからない。ただ、話している最中は隙が生まれているはずと思って攻撃を仕掛けたのに、こいつはそれをいとも容易く受け止めてきやがった。

「今は私しか来ていないが、もし拒むのであれば他の者も連れてこの世界に攻めてくる。そうなったらバーンたちが言った通りの世界になるかもしれないぞ?」
「・・・お前もアポロっていうのの配下なのか?」
「いや・・・私は叡知の神・メーテス様の使い。アポロ神とは全く関係ないよ」

その回答を受けたシリルの顔は険しいものへとなっていた。そんな彼は何を思ったのか、気付かれないよう少しずつ窓側へと移動していくため、俺もその隣に付くように移動する。

「じゃあお前が引いたところで、アースランドが危ういことには変わらないじゃないか」
「それはどうかな?もし君が付いてきてくれるなら、メーテス様が他の神を説得してもよいと話している」
「できるのか?そんなことが」
「できるよ。もっとも、君が付いてきてくれるなら、ではあるが」

バリーザウィッチの言葉に不思議そうな顔をし、シリルは足を止める。先ほどから全く話についていけてはいないが、この二人が何かしらの取り引きをしているのは容易に見当がついた。

「俺がついていくとなんで説得できるんだよ」
「簡単だよ、君なら私たちを縛り付ける法が適用されないからさ」
「??」

彼の言葉の意味がわからなかったようでシリルがこちらを見るが、そもそも何の話をしているかもわからない俺は首を傾げてみせることしかできない。

「私たち天使は他の世界の天使と戦うことはできない。だが、君にはそれが適用されないんだ」
「え?そんなわけ・・・」
「バーンたちは知らなかったようだがね。天使同士の戦いは天界の崩壊・・・つまり世界の崩壊を意味してしまう。神同士が戦うことも同様だ。だが、君は天使の子であって天使ではない。ましてや君の母は天界を追放され配置的(・・・)には人間扱いになっている。つまり君は天使にダメージを与えられる数少ない人間と考えることができるんだ」

バリーザウィッチの説明に納得したような表情を見せるシリル。完全に蚊帳の外になっているが、話しているバリーザウィッチに隙がまるでないため、迂闊に動くことができない。

「それともう一つ大事なことを言っておこう。君は天使と戦っても問題はない・・・それはつまり、私が君に危害を加えても問題がないということと同義と捉えてもらっていい」
「!!」

その言葉を聞いた瞬間に、シリルの表情と雰囲気が一変したのがわかった。下を向いてしばし沈黙したシリル。彼は小さく息を吐くと、こちらに視線を向ける。その左目は黒く変色しており、目が合った俺は思わず身体が震えた。

「なるほど・・・わかりました」

そう言ったシリルはあろうことか、俺を窓の外へと突き飛ばした。

「え・・・」

何が起きたかわからずにいる俺。そしてそれを見下ろしているシリルの左半身に変な模様が浮かび上がっていた。

「すみません、ユウキさん」
「シリル!?」

突然の裏切り行為。予期できなかった事態に対応することができず、俺はそのまま地上へ向かって落ちていった。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
まだ結末を決めきれていないのであと何話くらいになるかわからないですが、ゆっくりやっていきたいと思います。 
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