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八条学園騒動記

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第六百三十六話 泉燗その六

「肖像画でないとな」
「いいのね」
「そうだからな、ただ漫画ではアッラーはな」
「出せないのね」
「お姿は出せない」
「それこそ偶像だからね」
「ムハンマドはいいがな」 
 預言者の彼はというのだ。
「別に」
「只の預言者だから」
「普通の人だからな」
「神様じゃないから」
「イスラムは個人崇拝はしない」
 一切というのだ。
「それもな」
「アッラーを崇拝するのね」
「崇拝するのはアッラーのみだ」
「だからムハンマドも崇拝されていないのね」
「偉大な人だが」
 そのことは事実だがというのだ。
「しかしな」
「それでもよね」
「人間だ」
「神様じゃない」
「そしてイスラムはアッラーのみを信じる」
「だからムハンマドといえど」
「崇拝されない」
 絶対にというのだ。
「尊敬はされるが」
「尊敬と崇拝は違うからね」
「だから崇拝されていなくてな」
「漫画にも出せるのね」
「そういうことだ」
 そういう論理だというのだ。
「要するにな」
「その場合はな」
「そこは違うわね」
「ユダヤ教とはな」
「寛容ね」
「そうだな」
 ギルバートも否定しなかった。
「それもかなりな」
「同じルーツの宗教なのに」
「神様も同じとされているしな」
「けれどね」
「寛容さがあるな、イスラムには」
「そうよね、というか」
 アンはその熱い酒を飲みつつ述べた、その酒は確かに普通の熱燗より熱くまるで熱湯の様であった。
「ユダヤ教は布教とかはね」
「考えていないか」
「あくまでユダヤ人の宗教で」
 そうしたものでというのだ。
「外にはね」
「向かわないわ」
「内向きの宗教なの」
 ユダヤ人の中のというのだ。
「イスラエル市民の、そして」
「連合の中のユダヤ系の人達の中のか」
「宗教で。というかユダヤ教を信仰していたら」
「ユダヤ人だな」
「十二支族といってもね」
 ユダヤ人を構成するこの括りはというのだ。
「人種かなり色々だし」
「混血していてか」
「アフリカ系の人も普通だしね」
「元々ヘブライ人はアジア系か」
「キリストの顔だってね」 
 キリストがユダヤ人であったことからの指摘だ。
「実はアジア系の顔だったっていうから」
「科学的に再現すると意外と男性的でな」
「目が細かったわね」
「髭も十字架のものでないな」
「イスラムだとやっぱりアラビア風だと思うけれど」
「やっぱり普通に考えるとな」
「キリストもアジア系で」
 その顔立ちでというのだ。 
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