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八条学園騒動記

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第六百三十六話 泉燗その二

「狂犬病を警戒することは」
「その他にも色々あった人なの」
「そうなのか」
「清潔さに気を付けてね」
 畳に掌を触れさせなかったり掃除の仕方も独特だったりした、家の女中さんにもそうした掃除をさせていた。
「ちなみに女性みたいな名前だけれど」
「男の人だな」
「そうよ、鏡花はペンネームでね」
 それでというのだ。
「本名は鏡太郎といったの」
「泉鏡太郎さんか」
「本来の名前はね」
「そうだったか」
「そしてね」
 さらに話した。
「そうした人だったの」
「お酒の飲み方も独特か」
「間違ってもロックなんてね」
 氷を入れて飲むことはというのだ。
「なかったの」
「そうだったか、僕はロックも好きだが」
「本当に沸騰させないとね」
「ここまで徹底させてか」
「飲まなくて」
「他の食べものもか」
「よく火を通したものをね」 
 そうしたものをというのだ。
「食べていたの、例えばステーキも」
「食べるとしたらか」
「もうね」
「ミディアムだな」
「レアはね」
 この焼き方はというのだ。
「間違いなくね」
「食べなかったか」
「極端な細菌恐怖症で」
「それで潔癖症でか」
「義理の弟さんが泊まって使ったお布団を熱消毒したのよ」
「布団までか」
「それで義理の弟さん激怒されたの」
 こうした逸話もこの作家にはあるのだ。
「それでお酒もそうだけれど」
「流石にもう沸騰していないな」
 碗の中の酒はそうなっていた。
「だがさっきまでそうだったしな」
「熱いわよ」
「そうだな」
「これを泉燗というのよ」
「そのまま鏡花さんの名前か」
「それが付けられたのよ」
「そこまで独特か、しかし夏でもか」
 ギルバートは女生徒に真顔で問うた。
「そうして飲んでいたか」
「食べものもね」
「どちらもか」
「そうしていたのよ」
「熱いだろうにな」
「熱くてもよ」
 それでもというのだ。
「それでもね」
「細菌が怖いからか」
「そうしていたのよ」
「そこまでいくと相当ね」
 アンもここまで聞いて言った。
「自分でしていることにしても」
「凄いな」
「ユダヤ教の戒律程じゃなくても」
 そこまで厳しくはないというのだ。
「相当なものね」
「ユダヤ教の方が凄いか」
「別にそれで何もならないでしょ」
「神罰が下るとかか」
「細菌が怖くても」
 それでもというのだ。 
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