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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百四十一話 八条荘に帰ってその十

「いいんだよ」
「そうだね」
「だから俺は言うな」
 親父は笑って言った。
「巨人には無様な負けがよく似合う」
「それでこれからもだね」
「負け続けてくれたらな」
「日本にとってもいいわね」
「景気にもいいんだ」
「そして景気だけじゃなくて」
「日本全体にとってもな」
 こう僕に言ってくれた。
「日本がずっと不況だった時だってな」
「失われた十年とか二十年とか言うね」
「その間巨人はな」
「ずっと補強していたね」
「青天井でな」
 それでお金を使ってだ」
「毎日不況言ってたキャスターが年五億貰っていたけれどな」
「それってね」
「ああ、マスコミだけがな」
「不景気の中で肥え太っていたんだね」
「あの不況はマスコミ不況だったんだよ」
 こう言うのだった。
「マスコミが不景気を煽ってな」
「そして自分達はだね」
「肥え太っていたんだよ」
「ふざけたことだね」
「そして巨人はそこそこ優勝していた」
 その補強によってだ。
「けれどな」
「それでもだね」
「ああ、景気にはな」
「関係なかったね」
「だからな」
 それでというのだ。
「本当にな、巨人はな」
「弱くてだね」
「いいんだよ」
 まさにというのだ。
「それでな」
「やっぱりそうなるよね」
「弱い巨人」
 親父は一言で言った。
「いいな」
「それに尽きるね」
「九連覇なんてな」
 昭和四十年代のことだ、日本のスポーツ史において永遠に刻まれてしまっている暗黒の金字塔である。
「二度とな」
「なって欲しくないね」
「そうだろ、戦争が終わってな」
 親父の話は一気に時代を遡ってきた。
「妙に巨人が強くなってな」
「色々汚い補強したんだよね」
「別所強奪とかな」
 南海からそうした、まさに巨人と言うべきダーティーな手口だった。
「それで新聞やテレビの宣伝でな」
「ファン増やしたんだね」
「ナチスやソ連と同じだ」
「もうずっと巨人押ししてて」
「ゴリ押しでな」  
 親会社の力をこれでもかと使ってだ。
「子供も洗脳したんだ」
「それでファン増やしたね」
「それが戦後の日本だったんだよ」
「マスメディアの力が強かったね」
 戦後日本の特徴の一つだ。
「そうだったね」
「学者とな」
「所謂知識人だね」
「知識人が滅茶苦茶強かったんだ」
「その中にマスメディアもあって」
「東京から一気に宣伝したんだ」
 東京一極集中もマスメディアの権力と無関係じゃない、彼等の本社が軒並み東京にあったからである。 
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