ドリトル先生と幸せになる犬
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第十幕その五
「もう全部ね」
「定まっている」
「そうなるしかない」
「そうした状況なのね」
「だからね」
それ故にというのです。
「僕は全くね」
「心配していないのね」
「ふわりのことを」
「そうなんだね」
「そうだよ、さてはじまったね」
ここで玄関からです。
人同士のやり取りが聞こえてきました、ご主人と若い男女です。聞けばご主人は怒っていても冷静ですが二人は感情的になっています。
その声を聞いてです、先生歯また言いました。
「あの若い人達がね」
「ふわりの前の飼い主の人達ね」
「ふわりを捨てた」
「その人達だね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「その人達だよ」
「お前等ふわりを捨てたんだろ」
ここでご主人の声が確かに聞こえました。
「それでよくそんなことが言えるな」
「いえ、ふわりは私達の娘です」
「だから返してもらいに来たんです」
若い二人の言葉も確かに聞こえてきました。
「僕達が飼っていたんですよ」
「それなら私達の娘じゃないですか」
「娘の遊び相手にもなりますし」
「それに凄い人気じゃないですか」
若い人達は本音も出しました。
「動画も」
「そんな人気があるならです」
「早くわかれば捨てなかったですよ」
「けれどあんな娘の家族になって人気が出て」
「物凄くお金になるなら」
「お前等ふわりをそう思ってるんだな」
ご主人の声はさらに怒ったものになりました。
「人気や金が何だ」
「どっちも大事ですよ」
「そうに決まってますよ」
「ふわりが人気があってお金になるなら」
「元々家族なんですから」
「何て浅ましいんだ」
息子さんは二人の言葉を聞いて苦い顔で言いました。
「酷い人達と思っていたけれど」
「あそこまでなんて」
奥さんも眉を顰めさせて言いました。
「思わなかったわ」
「全くだよ」
「ふわりを完全にステータスやお金の元としか思っていないわね」
「本当におもちゃなんだな」
「人気が出てお金になるおもちゃね」
「それがふわりなんだな」
ふわりの前の飼い主の人達にとってはです」
「最低だな」
「本当にね」
「愛情なんて全くないな」
「微塵も感じられないわ」
「ふわりは道具か」
「だから捨てたのね」
「そして全く変わってないな」
二人の心はというのです。
「酷いままだよ」
「最低なままね」
「全く、あんな人達が知り合いなんて」
「親戚だったなんてね」
「どうしたの?」
ここでふわりが目を開いてでした、声をあげました。
「一体」
「君の前の飼い主の人達が来たんだ」
先生は起きたふわりに答えました。
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