石切り場の女
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第四章
「はい、石もです」
「狐や狸の様にですか」
「化けますか」
「そうなのですか」
「長い歳月を経ると」
まさに狐や狸の様にというのだ。
「心を持ってです」
「精となってですか」
「化けるのですね」
「今話した様に」
「はい、ですがその精は悪いことはしていないので」
極めて安く上手な按摩をしていることについても話した。
「放っておいてもです」
「いいですか」
「あの女は」
「特に何もしなくていいですか」
「左様ですか」
「はい」
こう石工達に答えた。
「心配はいりません、ですからこのままです」
「按摩を受けていいですか」
「あの女の」
「そうしていいですか」
「はい、安くて上手な按摩なら」
僧は笑って話した。
「それに越したことはないですね」
「人手も下手で高い按摩いますし」
「そうした按摩よりずっといいですね」
「確かに」
「ですから」
それでというのだ。
「このままでいいかと」
「わかりました」
「それならです」
「このまま受けていきます」
「そうしていきます」
石工達も頷いた、そしてだった。
僧と話をした次の日茂吉は女の按摩を受けた、その後で仲間達にすっきりしたという顔になって話した。
「いや、すっかりな」
「疲れが取れたか」
「仕事のそれが」
「そうなんだな」
「あの按摩はやっぱりいいな」
女のそれはというのだ。
「しかも安い」
「本当にいいことばかりだな」
「じゃあこれからもな」
「按摩をしてもらうか」
「そうだな、石でもいい」
その正体がというのだ。
「按摩が上手で安いならな」
「心根もいいしな」
「じゃあこれからもな」
「按摩してもらおうな」
「ずっといて欲しい位だ」
持木はこうも言って他の石工達も頷いた、そしてだった。
女はそれからも按摩をしていった、石工達はそんな彼女の存在を喜んだ。伊豆に伝わる古い話である。
石切り場の女 完
2021・3・12
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