おっちょこちょいのかよちゃん
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164 異世界の夕刻時
前書き
《前回》
学校から帰ってきた笹山は異世界から訪れたフローレンスと出会う。笹山はフローレンスに藤木の失踪の件について、藤木が嫌われ者になった経緯を話し、やクリスマス・イブの日に届いた手紙を見せる。そしてフローレンスは笹山に異世界に向かって藤木の救出に動き出すのか、藤木が戻ってくるのを待ち続けるのか、選択肢を与える。そして笹山に決意が決まった時の為のボールペンのような道具を託して平和主義の世界へと帰るのであった!!
かよ子達は藤木を取り返す為に異世界を飛行する。日が暮れて来た。
『皆の者、本日任務ご苦労様。夕刻となったので食事を支給する』
イマヌエルが通信機で全員に連絡を入れた。
「おお、まる子、夕食じゃ!」
「そうだね、まる子お腹が空いてしょうがなかったよお~」
まる子と友蔵は食欲に満ちていた。
(呑気なんだから・・・)
かよ子は内心呆れつつも、何が出るのか少し気になった。皆の前にお盆が出現する。そして飲み物として緑茶にご飯、味噌汁、塩もみ野菜に鯖の焼魚と質素だった。そしてデザートに桃のゼリーだった。
「ええ~、こんなのお~、まる子、ハンバーグが良かったのに~」
「さくら、贅沢言ってんじゃねえよ」
大野が窘めた。
「さくらもももこ、お主、ここに来てから弛んどるぞ!食べられるだけで十分有難いと思え!」
「ブー・・・」
まる子は不満であまり食べる気がしなかった。
「ももこちゃん、文句言わないで一緒に食べようよ!私、ももこちゃんと一緒に食べると幸せに感じるもん!」
のり子も説き伏せようとする。
「のりちゃん、うん、分かったよ・・・」
「ありがとう」
のり子が珍しく笑顔になった。
(何だよ、コイツ、笑えば可愛いのにブー・・・)
ブー太郎はまる子にしか心を開かないのり子に対して少し変に思うのであった。
「それにしても大丈夫かな?」
かよ子はある事を気にしていた。
「ある事って何だブー?」
「こうして食べている時に襲われないかなってふと思って・・・」
「大丈夫だよ、かよちゃん!そいつらもきっと食事中だよ!それにあのお坊さんの能力でこの羽根で守ればいいんだしさ!」
まる子が元気づけた。
「うん、そうだよね・・・」
かよ子は心配を拭って安心して食事した。
別の地、さり達本部守備班もまた食事の刻として休息していた。
「それにしても護符で一応結界は張ってるけど、襲ってこないかしら?」
「まあ、結界を張っている以上、問題はなかろう」
「そうね」
さりもまた食事中の敵の急襲を気にするのだった。
その頃、本部の一室。先代の杖、杯、そして護符の所有者達もイマヌエルに呼ばれて食事にした。
「皆さんも休息するといいよ」
「そうね」
皆が食事する場所へ移動した所、丁度フローレンスが戻って来た。
「フローレンス、戻って来たか」
「はい、只今戻りました」
「一体何をしに行ってたの?」
りえの母が質問した。
「ええ、赤軍の長・重信房子が私達が差し出しました偽物の道具に気付きましてまたそれらを狙いましょうと東京、名古屋か静岡を襲撃しますのではと思い、会ってきました」
「え?命懸けの行動じゃん!」
「はい、しかし、ここに護符も杖も杯もありませんと伝えておきました。これで『向こうの世界』で不用意な攻撃はなくなりますでしょう。そしてもう一つ・・・」
フローレンスは言葉を続ける。
「行方不明の藤木茂君が好きになっていましたと言います笹山かず子ちゃんって子にもお会いして参りました」
「笹山かず子ちゃん・・・?誰なの?」
りえの母が聞く。
「うちのかよ子の学校の友達ですよ」
「はい、その子にお会いしまして藤木茂君の失踪前の動向を聞いてきましたのです。笹山かず子ちゃんも藤木茂君に戻ってきてくださいと願っています。もしかしたら藤木茂君の奪還に何らかの貢献ができますかもしれません」
「もしかしてその笹山さんもこっちに呼び寄せるって事?」
「選択肢は与えましたがその可能性もあります。確かに不安に思われますかもしれませんが、藤木茂君を呼び戻します為には失礼ですが少なくともさくらももこちゃんとさくらさきこちゃんのお爺様よりはお役に立てます筈です」
「そうね・・・」
かよ子達は荒野での休息時、椎名と関根が交代で見張りをする形で他の者には睡眠をとらせていた。しかし、かよ子達は不安で上手く熟睡できなかった。
(こんな時に攻めてきたら・・・)
かよ子はそんな事を考えていた。他の皆も同意見であった。そして・・・。
(ん・・・、眩しい・・・?)
何か光が差してきた。もう朝になったのかとかよ子は思った。
「おい、来るぜ」
大野が皆を起こした。
「ん、なんじゃ?もう朝か?」
友蔵は寝ぼけていた。
「違いますよ、敵ですよ」
「敵!?」
「もしかしたらバレているかもしれません。ここはひとまず場所を移動させたほうがいい。かよちゃん、できるかな?」
椎名はかよ子に頼んだ・
「うん、やってみるよ・・・!!」
かよ子は羽根を移動させた。玄奘の法力によって強化された羽根は敵の妨害がなく動けた。しかし、敵は普通に追ってくる。
「攻撃が来るぞ!」
大野が喚起した。攻撃は羽根が結界を作り出して防げたが、相手も攻撃を止める気配がない。
「私と椎名で外に出ますよ。皆は結界の内側から援護頼むよ」
「はい!」
椎名と関根は羽根から降りて迎え撃ちを図った。
「何者だ!?」
そこには一人の男がいた。
「貴様こそなんだ?この神聖なる私を誰だと思っている?」
「自分で言って恥ずかしくないのか?」
「はあ?私はローマ皇帝でもあるカール5世様だ。先ず貴様ら下衆共から裁きを下そうか。そして向こうにある杖を頂こう」
「関根、奴も例の『あれ』を持っているはずだ」
「ああ、まずそこから狙うよ」
関根は刀を突っ込ませる。
「うおおお!!」
「ふん、愚か者め、そんな手で私を潰せるか!」
カール5世は関根を弾こうとした。関根は弾き返された。
「貴様らこの私に近づけると思っているのか?」
カール5世が光線を発射した。
「うお。だー!」
関根は国定忠治の刀で光線を斬り消した。その時、カール5世の背中に向けて激流が押し寄せて来た。
「奇襲を使ったか。なかなかの戦略である。だが・・・」
椎名が使った潮水の攻撃は容易く防がれてしまっていた。
「貴様が後ろに回る事くらいは気づいていた」
「な・・・!!」
かよ子達はカール5世と椎名、関根の戦いを傍観している場合ではなく、どうかしないととそわそわしていた。
「私達も援護しないと、でもどうやってやろう・・・?」
「お前、その人形に機械の場所を探知させるブー!」
ブー太郎はのり子に頼んだ。
「わ、分かったよ・・・」
のり子は命令された事に気に食わないと思いながらもキャロラインに頼んだ。
「キャロライン、あいつの持ってる機械が何処にあるか探して」
「うん!」
キャロラインは探知した。しかし、その時、キャロラインが「きゃあっ!」と悲鳴を挙げた。
「ど、どうしたの!?」
「向こうの貴様ら、私の中を探ろうとしたな?この神聖なる私の弄ろうなど不謹慎なる下衆共め、成敗させてくれるわ!」
カール5世は羽根上のかよ子達の場所にも気づいているようだった。
「何で場所が解るの?」
「おそらく見聞の能力だ!赤軍が発明した機械とやらで探知できるのだ!」
石松が解説した。
「こうなったら某の『奥の手』を使うべきだな・・・」
「石松、さてはあれを使うと言うのか!?」
かよ子は石松にまた別の能力があるのかと気になった。
「『奥の手』!?一体何なの!?」
「某のこの目だ」
石松は眼帯を外した。
後書き
次回は・・・
「石松の左目」
石松がカール5世に対抗して左目を露わにする。彼の左目には一体何があるのか。その後、疲れたかよ子が眠ったその時、夢の中にある声が聞こえてくる・・・!!
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