それだけは苦手
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第一章
それだけは苦手
原友香は黒髪を長くストレートにした切れ長の澄んだ目で面長で顎の先が細く短くきりっとした顔立ちである。背は一六〇程で均整の取れたスタイルだ。
成績は通ってる高校は進学校だがそこでも学年トップクラスでありスポーツもそつなくこなし性格も冷静沈着で公平である。
兎に角いつも乱れないので友人達は彼女についてこう話した。
「怒ってるところ見たことないわね」
「意地悪とかもしないし」
「真面目でね」
「いつも冷静で」
「笑っても崩れないし」
「一緒にお酒飲んでも幾ら飲んでも平気だし」
一人こっそり実は高校生がしてはいけないことも話した。
「兎に角冷静よね」
「一緒に遊びに行ってホラー映画やお化け屋敷行っても平気だし」
友香は友達付き合いは問題ないのでこうした場所にも行くのだ。
「ホラー漫画やギャグ漫画でも態度変えないし」
「冷静よね」
「夢野久作読んでもポー読んでも淡々で」
「何ていうかね」
「あそこまで乱れないとね」
「ちょっと人間味ない?」
「悪い娘じゃないけれど」
こうした話をした、友香のその冷静沈着さがどうも人間味のなさにもつながってるとも思われていた。
そんな中で学校の秋のイベントでオリエンテーションが行われた、そこでもだった。
友香は冷静なままだった、学校指定の体育の授業で使われている上下共に青のジャージ姿でクラスメイト達と共に参加しているが。
秋の景色を見ても微笑んで言うだけだった。
「奇麗ね」
「ま、まあね」
「奇麗よね」
「それはそうね」
「奇麗なのは事実ね」
「紅葉も銀杏もね」
クラスメイト達は微笑んでいるがやはり表情に乏しくそして景色を見回すだけの彼女を見て応えた。
そしてだ、昼食の弁当を食べても淡々としている彼女を見て話した。
「今日も同じね」
「原っちクールよね」
「景色見てもお弁当食べてもで」
「お池見てもね」
「もう何見ても冷静」
「冷静過ぎてね」
「やっぱり人間味少ないわよね」
こう言うのだった。
「もっと奇麗とか美味しいとか」
「はしゃいだら面白いのに」
「人間味あるのに」
「それがだから」
そんな友香を見て言うのだった、彼女に聞こえない様に。しかし友香は冷静にもっと言えば淡々とだ。
景色を見て歩いていた、写真も結構撮るがそれでもはしゃがない。
だがそれでもだった、不意に。
一行の目の前に何かが出て来た、それは。
地面を這い回る無数の節があり身体の左右に節ごとに一本ずつ無数の足があり頭には牙がある生きものだった。
その生きものを見てだった、友香は。
「ぎゃああああああああ!!」
「えっ、どうしたの!?」
「原っち急に騒ぎだしたじゃない!」
「一体何があったの!?」
「何か出て来たの!?」
「ムカデエエエエエエエエエエエ!!」
驚くクラスメイトの前でこう絶叫してだった。
友香はその場で卒倒して倒れ込んだ、その彼女を見てだった。
クラスメイト達は自分達の前にいた一匹のムカデに気付いて話した。
「ムカデ?」
「ムカデじゃない」
「原っちひょっとしてムカデ苦手?」
「そうなの?」
「とりあえず原っち気絶したし」
「介抱しないとね」
「そうよね、まずはね」
気絶して目を回して仰向けに倒れている友香を見て話した、そしてだった。
友香を介抱して事情を聞くと友香は項垂れて話した。
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