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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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番外
  Cold Moon

※咲夜視点




ー紅魔館ー


レミリア「咲夜、出かけるわよ」


12月12日の夜、レミリアお嬢様が急に言われた。


咲夜『“出かける”って、どちらへ?』

レミリア「愚問ね。そんなの決まっているじゃない」


お嬢様が指差す先には霧の湖があり、その上空に満月が昇っていた。湖上を冬の妖怪「レティ・ホワイトロック」が悠々と飛んでいる。
そうか、今日は今年最後の満月だ。里の寺子屋で教鞭を取っているハクタクの上白沢慧音は今ごろ寺子屋で歴史の編纂作業に勤しんでいることだろう。


『なるほど、月見ですね』

レミリア「そういうことよ。フランも呼んできなさいな」

『えっ、フランお嬢様もですか!?』


私は少し驚いた。
フランお嬢様は以前より良くなったとはいえ、今でもたまに情緒不安定になられるときがあるからだ。


レミリア「ええ、今年最後だから特別にね。それにーーー」


いざというときには力で抑え込むから大丈夫よ、と不敵な笑みを浮かべるレミリアお嬢様。
その『いざというとき』が永遠に来ないことを願いたいものだが…。


『かしこまりました。呼んで参りますので少々お待ち下さい』


そう告げ、私は時を止めた。



ーー
ーーー


-霧の湖-


『綺麗ですね』

レミリア「ええ。たまには外に出るのも悪くないでしょう?」


私とレミリアお嬢様、そしてフランお嬢様は月を見るため霧の湖へやってきた。
この日は珍しく霧も晴れており、湖水は月光に照らされ薄青色に輝いていた。


『外の世界では12月の満月を“Cold moon(コールド・ムーン)”と呼ぶそうですよ』

フラン「“凍れる月”ね…。まさにその通りだわ」


フランお嬢様が呟く。
凍てつくような冬の寒さに加えて冷たく透き通った光を放つ月。確かに的を射た表現だ。


?「あら、貴女たちもお月見?」


声に振り向くとそこにいたのは永遠亭の姫君「蓬莱山輝夜」とその従者でもある薬師の八意永琳。
驚いたことに兎たちも一緒である。


『そうよ。そちらは大所帯でお出ましなのね』

輝夜「ええ、屋敷の中か竹林でしか月を見たことがなかったから永琳に頼んで付いてきてもらったの。そうしたらイナバたちまで“行きたい”って言いだして…」

鈴仙「こういうことって滅多にないから…」


玉兎の「鈴仙・優曇華院・イナバ
」が照れたように頭を掻きながら言った。


レミリア「ふうん…。まあ、好きにすればいいわ」


レミリアお嬢様は無関心を装ってはいるものの、これは『居たければ居てもいいわよ』という意思表示だ。


永琳「そう?じゃあ、お言葉に甘えて」


果たして、連中は私たちの隣に腰を下ろした。


レミリア「貴女たちと月を見るのはいつぶりかしらね」

てゐ「さあ。永夜異変のとき以来じゃない?」


永遠亭の妖怪兎「因幡てゐ」が即答した。


『……時が経つのは早いものね』

輝夜「そうね、でもこの月の美しさは昔とちっとも変わらないわ。そしてこれからもきっと……ね」





私たちは月を見る。
十年後、百年後、千年後の幻想郷でもこうして美しい満月が見られることを願いながらーーー


(了) 
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