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ドリトル先生と幸せになる犬

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第六幕その九

「赤ちゃん生まれてその日から一日中ケージに閉じ込められてね」
「お散歩も行かないでね」
「遊ぶこともブラッシングもなしでね」
「飼い主達は赤ちゃんばかり見てるんだ」
「そんなことされたら」
「こんなの人間でも訴えるよ」
「そこから出せってね」
 王子は怒った声で言いました。
「そうなるね」
「そうだよ、ケージを齧ったりね」
「そんなことをするね」
「当然としてね」
「ずっと入れられたままだとね」
「けれどこの娘はそんなこともしなかったね」
 先生はふわりを見て言いました。
「聞く限りだと」
「ケージは齧ったらいけないから」
 ふわりもこう答えました。
「だからね」
「そうしたことはしなかったね」
「私そんなお行儀悪いことはしないよ」
 また言いました。
「絶対に」
「そうだね」
「それでね」 
 ふわりはさらに言いました。
「ケージの中はベッドも古いもので」
「おもちゃもだね」
「何もなかったけれど」
 それでもというのです。
「私赤ちゃん泣いたら前のママに教えたし」
「他にはどうして鳴いたのかな」
「私はここだよってね」
 今ケージの中にいることを知らせていたというのです。
「それでなの」
「鳴いていたね」
「だってずっと返事なかったから」
「中に出してとはだね」
「鳴かなかったよ」
 一度も、そうした返事でした。
「確かにお外に出たかったけれど」
「そのことは我慢したね」
「それでね」
「自分の居場所を知らせていたね」
「聞こえないの?って」
「ここまで聞いてもいい娘だね」
 老馬も思いました。
「本当にね」
「というかこんないい娘滅多にいないよ」
「僕が見てもそうだよ」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「本当にね」
「はじめて見る位だよ」
「よく我慢したね」
 トートーは言葉でふわりの肩を叩きました。
「ずっとね」
「そんな目に遭ったら僕だったら怒るよ」
 チーチーは自分の感情を述べました。
「絶対にね」
「僕もだよ」
「私だってそうよ」
 チープサイドの家族もチーチーと同じでした。
「そんな風に扱われたら」
「ずっとケージに入れられて無視って」
「おもちゃもなくてベッドも古いもの」
 ガブガブもプリプリと怒っています。
「完全な飼育放棄ね」
「もう生きもの飼う資格なし」
 ホワイティは言い切りました。
「何度聞いても思うよ」
「どうせ赤ちゃんも同じ目に遭うわ」
 ポリネシアは赤ちゃんのお話をしました。
「そんな人達だとね」
「何でこんないい娘がそんな目に遭わないといけないのかな」
 老馬はこう思いました。 
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