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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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覚えのない怒り

 
前書き
最近別サイトで学生時代に読んでいた小説が更新されてテンション上がってました。
この勢いでヒーローズも復活してくれないかと切に思ってます。 

 
しばらくの間、船に揺られながら過ごしていると、少しずつ船の速度が落ちてきていることに気が付いた。実はほとんどの時間寝ていたため、ほとんど記憶にないのは内緒である。

「この貨物なら中入れそうだな」
「そうだね。ウェンディたちを先に入れちゃって・・・」

中にわずかながらにスペースがあった貨物の中にうまいこと入り込む。俺たちは小さいから割と楽に入れたけど、レオンとシェリアは少しずつ大人に近付いているようで、少し窮屈そう・・・

「なんかすごい複雑・・・」

この場合は喜びたいところではあるけど、どうにもそうはいかない。やっぱりこいつに身長を置いていかれているのが非常にムカついてしまう。

「この荷物はどの辺に出るのかな?」
「さぁ?」
「うまいこと街に出れるといいね~」

ここから俺たちがどこに運ばれていくかは完全な運任せ。ラウルたちも不安そうではあるが、俺とウェンディは揺れているこの中ではまともに動けないためじっとしているしかない。

「まぁ、見つかったら相手を倒せばいいだけだよ」
「うんうん。みんながいるから大丈夫だもんね」

この状況をむしろ楽しんでいるのではないかというほどのレオンとシェリア。ただ、そう言っている二人の距離がなんだか近い気がする・・・いや、この場所が狭いからそうなっているだけとも取れるけど・・・

(やっぱり違和感があるよな・・・)

一度気になり出すとモヤモヤが止まらなくなってしまう。後で落ち着いたら聞いてみよ・・・そうしようと思いながら、俺は早く陸地に着くことを祈っていた。
















「へぇ・・・こんなところに倉庫があるんだ」

揺れが収まったところで恐る恐る貨物の中から外へと出る俺たち。その場は中心街と思われる街から外れたところにある、大きな倉庫がたくさん乱立しているような場所だった。

「でも倉庫の割に監視役が少なくない?」
「言われてみると確かに・・・」

シェリアと揺れが収まったことで回復したウェンディがそう言う。倉庫の中もだったけど、外に出るとよりそれが際立つ。たくさんの倉庫がある割には、監視している人数が明らかに足りていない。どうやっても死角が生まれるような人数しか配置されていないように見える。

「薄々気付いてたけど、あの貨物船って密輸船なんじゃない?」
「だろうね」

俺の思っていたことにレオンも同意する。闇ギルドが国王に着いている国に評議院が管理しているフィオーレが荷物を輸送するわけがない。大方、こちらの闇ギルドも金欲しさにこの国に荷物を輸送しているのだろう。

「この国だと今は闇ギルドが最大勢力だもんね」
「一般市民が荷物を奪えるわけがないってことか」

だから監視の人数は最小限でいい。武力を持たない市民を警戒する必要など皆無・・・という考え方なんだろうな。

「・・・なんかここで大暴れしたい気分なんだけど?」
「奇遇だな、俺もだ」

体が大きくなってもこういうところは変わっていないのだと安心した。俺とレオンは目を合わせニヤリと笑みを浮かべると・・・

「はいはい、そんなことしたら警戒されちゃうでしょ」
「ダメだよ、シリル」
「「はい・・・」」

動き出そうとする前にシェリアとウェンディに止められた。せっかくストレス発散になると思ったのに・・・

「まずは相手に悟られないように現状調査をしよう」
「それに、依頼主たちも探さないといけないし」

今回の依頼主は一般市民。しかも国を通しての依頼ではないため、その人たちのいる場所を自力で見つける必要がある。地名も立地もわからない他国でこうなってしまうと、確かに顔が割れていると動きづらくなる。

「じゃあチャチャっと街に出よう」
「向こうの方が明かりが多いから、あっちから行ってみよ」

恐らく街と思われる方向へと向かうことにした俺たち。見張りに気付かれないように慎重に・・・と思ったが、元々警戒が薄いからか、特に何かが起きることもなくあっさりと街へと抜けることができてしまった。

「なんか今回の依頼、楽勝な気がしてきた」
「奇遇だね、俺もだよ」

あまりにも簡単に物事が進みすぎて、まるで張り合いがない。街の中には闇ギルドの人っぽい奴もいるけど、そいつらはあまりにも堂々としていてすぐにどれがそれなのかわかってしまう。
内心、こんな簡単な依頼でいいのだろうかと思ってしまうくらいの展開になっていた。

「街の活気はあまりないみたいね」
「うん。監視されてるからか、みんな怯えてるみたいだよ」

楽観視している俺たちとは異なり、キチッと現状調査をしているシェリアとウェンディには頭が下がる。
本来ならすぐにでも依頼主のところに行きたいけど、まずこの街が指定の街で合っているかもわからない。しばらくは紛れ込みながら、街を闊歩しなきゃいけないかな?

「シェリア、こっち」
「うん」

怪しまれないように街の中を進んでいこうとすると、隣にいたレオンが後ろにいたシェリアを呼び寄せる。呼ばれた彼女も彼の隣に来ると、それぞれの手を絡ませ歩き始める。

「え?何あれ?」
「なんか近くない?」

自然と押し出される形になった俺は後ろにいたウェンディの横へと付く。そこから見たレオンとシェリアはお互いの肩を寄せ合っており、今まで見た彼らとの距離感とは全く違っていた。

「なんかいつもと違うと思ってたけど・・・」
「やっぱりそうだよね?」

船にいた時からなんとなくわかっていた。でも、確信が持てないから気にしない振りをしていたけど今回ので確信を持てた。

「「二人、付き合ってるよね?」」

周りに聞こえないほどの小さな声でお互いの思考を伝える。それは当然ながら合致しており、思わず笑ってしまった。

「えぇ・・・でもすごい距離近いね」
「うん・・・ちょっとびっくりしちゃうよね」

恥ずかしがってなかなか先に進まない俺たちとは違い、付き合い始めたと思った途端に驚くぐらい距離を詰めている二人に感心してしまった。
それと同時に、なんだか自分が情けなくなってしまった。

「ウェンディ」
「何?」

こちらを振り向いた彼女に俺はそっと手を差し出す。別に負けていられないとかではない。これは俺たちがもっと先に進むためのステップだから、やらなきゃいけないことだから。

「うん!!」

ウェンディも俺が何をしようとしているのかすぐにわかったらしく小さくうなずく。そのまま彼女は差し出された俺の手をーーー

「お前!!」

握ろうとした瞬間、前方からの大声で俺たちは思わずそちらを向いた。

「おい、ユウキ。突然どうしたんだよ」

静寂に包まれていた街の中が一瞬でざわつき出す。大声を血走った目をしている真っ白な髪の毛をした青年と、それを周囲を見渡し、慌てながら宥めている紫色の髪をした青年。彼らの目の前にいるのは・・・

「なんだ?お前」
「突然どうしたの?」

俺たちの前を歩いていた、レオンとシェリアだった。

「まさかまたこの国に来ていたとは・・・」
「どうしたんだよ?ユウキ」

二人を見据えて明らかに憎悪の感情を滲み出させている青年。相方と思われる青年は訳がわかっておらず、この街を監視している闇ギルドの魔導士が騒ぎに気付いて向かって来ていることに気付き、よりあわてふためいている。

「そこ!!何をしている!!」
「全員動くな!!」

街の至るところにいる監視役たちがゾロゾロと集まってきている。これは完全に顔バレしてしまう。そう思った俺とウェンディ、シャルルとセシリーは二人から距離を取る。二人の後ろに引っ付いていたラウルは逃げ遅れていたが、猫の姿のままだったため、そこまで問題でもないか。

「なんか面倒くさいことになったな」
「うん。どうしよっか」

絡まれている二人も訳がわかっておらず、厄介なことになったという感じ。レオンなんか完全にダルそうにしており、早くこの状況をなんとかしてほしいといった顔をしていた。

「気にしなくていい。お前はここで死ぬんだから」

全員がいまだに状況を理解しきれていない中、殺意剥き出しの青年はポケットから何かを取り出す。それを見た俺たちはゾッとした。

「爆弾魔水晶(ラクリマ)!?」

見覚えのある形の魔水晶(ラクリマ)に血の気が引く。街の中・・・しかも騒ぎを聞き付けて野次馬が大勢集まっているこんな状況でそんなものを出されたら・・・

最悪の事態すら想定される状況。それは当然レオンとシェリアもわかっているようだったが・・・

「死ね」

その反応よりも早く、青年はそれを二人目掛けて投じた。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
もう少し進めようかと思いましたが一度切ることにしました。
次も少しずつ進んでいく感じになるかな?と思います。 
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