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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百六話 夏侯惇、妹を救うのことその十

 その彼女がだ。二人にさらに言う。
「そしてだ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「私だけではない!」
 こうだ。二人に高らかに言うとだ。
「季衣!」
「はい、春蘭様!」
「遠慮はいらん。思う存分やれ!」
「わかりました!」
 許緒の声が応えてだ。そうしてだった。
 あの巨大な鉄球がだ。兵馬妖達の中で荒れ狂いはじめた。それでだ。
 彼等を完膚なきまで粉砕していく。それを見てだ。
「くっ、私の兵馬妖達が」
「そうだ、これで終わりだ!」
 于吉は歯噛みしだ。夏侯惇が言い返す。
「貴様のここでの目論見はな!」
「無念ですね」
「そしてここで死ね!」
 今度はだ。こう返す夏侯惇だった。
「貴様は私が倒す!」
「姉者、私も行こう」
 夏侯淵は弓を手にしてだ。姉に告げた。
「姉者だけでは。あの男は厄介だろう」
「そうだな。この男の力は」
「尋常なものではない」
 それはだ。二人の目からはすぐにわかることだった。腕が立つからこそだ。相手の力量も見極められる、そういうことなのだ。
「だからだ。ここはな」
「うむ、二人で戦おう」
 こうしてだ。姉妹二人でだ。于吉に向かおうとする。
 だが于吉はその二人に対してだ。
 悠然とした笑みでだ。こう告げたのだった。
「生憎ですが」
「まさかここでもか」
「逃げるというのか」
「そうなりますね」
 逃げると言われてもだ。彼はそこに恥を見出してはいなかった。
 それでだ。その笑みのままでだ。二人に言うのだった。
「ではこれで」
「逃がすか!」
 夏侯淵が矢を放つ。しかしそれは。
 于吉の前でだ。壁に当たったかの如く弾き返され折れてしまった。
「何っ、弓を」
「貴様、まさか」
「確かに貴女の弓は素晴らしいです」
 于吉は驚く夏侯姉妹に対して話す。
「ですが私の結界の前にはです」
「効かぬというのか」
「私の弓も」
「そうです。残念でしたね」
「それなら!」
「僕達が!」
 典韋と許緒も仕掛けようとする。だがだった。
 夏侯惇がだ。その二人に告げた。
「無駄だ」
「無駄っていいますと」
「じゃあ僕達の攻撃も」
「あの男の結界に防がれる」
 そうなってしまうというのだ。
「だからだ。止めておけ」
「わかりました」
「それじゃあ今は」
「行かせるしかない」
 今度は夏侯淵が言う。
「忌々しいがな」
「ではまた御会いしましょう」
 于吉は目だけは笑わせずに話した。
 そして一礼してからだ。彼も闇の中に消えたのだった。かくしてだ。
 戦いは終わった。白装束の者達はかなりの数が倒されたが于吉の撤退と共に彼等も姿を消してだ。残ったのは漢の兵達だけだった。
 その中でだ。劉備が孔明達に尋ねた。
「あの、勝つには勝ったけれど」
「はい、山も制圧しました」
「夏侯淵さん達も救出できました」
 孔明と鳳統の顔は晴れない。
「ですがそれでもです」
「肝心のことがまだ」
「わからなかったわよね」
 こうだ。劉備も浮かない顔で話す。
 
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