ラブレターを奪われて
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第一章
ラブレターを奪われて
この時沖徹、眼鏡をかけて黒髪を短くしている一七一センチ程の痩せた身体の彼は心から悩んでいた。
それで自宅で親しい友人に密かに言っていた。
「何とかな」
「ああ、坂塩先輩な」
「坂塩理恵さんな」
「あの人に告白してだな」
「付き合いたいんだ」
徹は友人に思い詰めた顔で語った。
「何があってもな」
「お前一回告白したな」
友人は徹に真剣な顔で問うた。
「そうだったな」
「いや、けれどな」
「それでもか」
「もう一度な」
徹も真剣な顔だった。
「告白してな」
「今度こそはか」
「そう考えているんだ」
「そうか、一度断られてもか」
「諦められないんだよ」
自分の部屋の中で真剣な顔で述べた。
「本当にな」
「だからか」
「また言うな、そしてな」
「今度こそはか」
「先輩とお付き合いするんだよ」
「一途だな」
ここまで聞いてだ、友人は徹の目を見て言った。
「先輩のことそこまで好きなんてな」
「駄目か」
「いや、いいと思うぜ」
友人は今度は微笑んで述べた。
「浮気性よりもな」
「一途な方がいいか」
「俺はそう思うからな、だからな」
「それでか」
「お前がそうしたいならそうしろ、ただな」
「ただ。どうしたんだ」
「前と同じ告白の仕方はな」
それはというのだ。
「止めろよ」
「二番煎じはか」
「それはな」
「前は下駄箱に校舎裏に来て欲しいって手紙書いて告白したけれどな」
「それで断られたな」
それならというのだ。
「止めろよ」
「それはか」
「他のやり方でいけ」
絶対にというのだ。
「いいな」
「じゃあどうすればいいか」
「先輩の好み考えろ」
「先輩は文学部と科学部に所属していてな」
そしてとだ、徹は考える顔で述べた。
「文学少女でかつ白衣が好きだな」
「文学かなり好きらしいな」
「特に恋愛小説がな」
「だったらそこから考えてやっていけ」
告白をというのだ。
「いいな」
「それじゃあな」
徹は友人の言葉に頷いた、そして暫く考えてだった。
ラブレターを書いてそれで告白することにした、それでだった。
友人に言うと友人はそれでよしと頷いた。
「前はただ下駄箱に来てくれって言っただけだったけれどな」
「今回はか」
「そこに全力を注げ」
ラブレターにというのだ。
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