ドリトル先生と幸せになる犬
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第五幕その六
「この娘のことはよく覚えています」
「今の名前はふわりといいますが」
「うちに来たトイプードル系の子で一番可愛かったですから」
「そうなのですか」
「はい、タイニープードルやティーカッププードルも含めて」
「この娘はティーカッププードルで」
「特に可愛かったので」
だからだというのです。
「覚えています、性格も頭も凄くよくて」
「そのこともあってですね」
「これはいい娘だ、絶対に幸せになると」
「思われていましたか」
「それで一目惚れしたという優しそうな夫婦に買われて」
それでというのです。
「お話もして誓約書も書いてもらって」
「絶対にですか」
「幸せになると」
その様にというのです。
「思ったのですが」
「それがですか」
「こんなことになっているなんて」
店長さんは項垂れて言いました。
「正直ショックです」
「そうですか」
「二度とこんなことが起こらない様にします」
先生に約束しました。
「本社の方にもお話して」
「そうしてですね」
「はい、それでよかったら」
店長さんは先生にこうも言いました。
「その娘ともう一度会いたいですが」
「お店に連れて来てですね」
「そうしていいでしょうか」
「はい、実はふわりの実の両親と両親の飼い主にもお話しようとです」
「お考えですね」
「その時にふわりも連れて行こうとです」
その様にというのです。
「考えてますので」
「ではその時に」
「お願いします」
こうお話してでした。
先生は店長さんとお話してそうしてでした。
この時はお店を後にしました、ですが。
先生はお家に帰るとお家に来ていた王子にもお話しました。トミーも一緒です。
「こうしたことがあったんだ」
「ペットショップの考えからもだね」
王子は難しいお顔で応えました。
「どうもね」
「考えるべきだね」
「あの、命を売買することも」
「このこと自体がね」
「どうかって議論があるよね」
「極端に言うと」
先生はこう前置きして言いました。
「奴隷売買にもね」
「近いね」
「確かに人類の歴史には奴隷が存在していて」
先生は暗いお顔でお話しました。
「僕の祖国イギリスでもね」
「十九世紀まであったね」
「そうだったよ、アメリカの奴隷解放の話は有名だけれど」
「多くの文明であったね」
「今でも酷いところだとね」
「あるね」
「そうした待遇を受けている人達はね」
実際にというのです。
「存在しているよ」
「そうだね」
「日本には奴隷制度はずっとなかったよ」
「江戸時代でもね」
「江戸時代の前の安土桃山時代では豊臣秀吉さんがね」
太閤さん、この人がというのです。
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