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胸が薄くてもいい

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第二章

「本当にね」
「胸がなくてもなの」
「大丈夫よ、というか優ちゃん私よりずっと奇麗だから」
 これは優の外見を素直に評価した言葉だ、早紀から見て優は文句なしの美少女であるのだ。それもかなりの。
 だからだ、今もこう言うのだ。
「絶対いい人とね」
「巡り合って」
「そしてよ」
 そのうえでというのだ。
「素敵な恋愛も経験出来るわ。悪い人に引っ掛からないとね」
「そうなのね、悪い人には気をつけるけれど」
 優自身もと答えた。
「けれど安心していいのね」
「絶対にね、本当に胸のことは心配無用よ」
「叔母さん見てたらね」
「だからその叔母さんは叔母さんよ」
「人は人自分は自分なの」
「そう、それでやっていけばいいのよ」
 優は優でというのだ、早紀は優にあくまで強く言った、部活前に部室の中で練習用のジャージに着替える中でのやり取りだ。
 だが優はどうしても自分の胸について自信が持てなかった、どうしても胸がないと駄目だと思っていた。
 それで牛乳を飲んだり豊胸のトレーニングに必死になっていた、そしてブラにはパッドも入れていたが。
 ある日そんな優に同じ塾に通っている辻茂則別の高校に通っている彼が優に声をかけてきた。
「島津さん大学何処目指してるのかな」
「八条大学の社会学部よ」
 優は辻にすぐに答えた、この時は通っている高校の制服姿で青のブレザーと緑のミニスカートとリボン、白のブラウスという恰好である。辻は水色のブレザーとグレーのズボンに赤いネクタイとややグレーがかかった白のブラウスという制服である。背は一七四程でやや面長で黒髪を七三分けにしていて切れ長のきりっとした目をしている。眉は細めで短い。空手部に所属しているとのことだがそれを思わせる引き締まった身体つきだ。
「そこなのよ」
「ああ、八条大なんだ」
「そうなの」
「実は僕も八条大目指してるんだ」
 辻は優に笑って答えた。
「あそこをね、文学部だけれど」
「そうなの」
「じゃあ一緒に合格したら」
 その八条大学にというのだ。
「告白していいかな」
「えっ、私に!?」
 優は辻の今の言葉に驚いて返した。
「告白って」
「駄目かな」
「いや、私にって」
 信じられないという顔でだ、優は辻に返した。
「ないでしょ」
「何でかな」
「私胸ないわよ」
「胸なくても裏表なくて明るい性格だし」
 まずは優のその性格のことを言った。
「それに顔もスタイルもね」
「いいの」
「モデルさんみたいだよ」
 そう言っていいまでだというのだ。
「今まで結構告白されたよね」
「全然よ」
 優は正直に答えた。
「そんなことはね」
「なかったんだ」
「一度もね」
 またしても正直に答えた。 
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