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最も相応しいプレゼント

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第一章

                最も相応しいプレゼント
 この時百田家の夫婦は日曜の自宅でもてなしの用意をしつつにこにことしていた。
「いや、この娘が産まれたから」
「わざわざ来てくれてプレゼントしてくれるなんてね」
「嬉しいよな」
「そうよね」
「だからな」
「ここはね」
「おもてなしをしないとな」
 部屋を奇麗にしてご馳走を作って酒も用意していた。
「こうしてな」
「ええ、じゃあね」
「皆来てくれたら」
 夫はプレゼントを持って来てお祝いしてくれるという上司や同僚それに後輩のことを思いつつ話した。
「食べてもらってな」
「飲んでもらってね」
「楽しんでもらいましょう」
 夫婦は明るい笑顔で話していた、その時。
 夫の会社の同僚達は夫婦の家に向かいつつプレゼントが入った奇麗なな紙とリボンで飾られた箱を見つつ話していた。
「さて、あいつ等どんな顔するかな」
「このプレゼント見たらね」
「きっと驚くな」
「じっくり話して考えて買ってアレンジしたプレゼントだ」
「それじゃあな」
「絶対に忘れないプレゼントになるぞ」
「今から楽しみね」
 誰もが意地の悪い笑顔になっていた、そうして。
 そのうえでだ、彼等は。
 百田家に着くとチャイムを鳴らしてだ、家に迎えられた。だが。
 一人はこっそりとトイレと行って家の中を調べに行ってだった。
 残りの面々は夫婦の前に出てまずはおめでとうと言い。
 夫が所属している課の課長が言った。
「お祝いのプレゼントをしたいけれど」
「プレゼントですか」
 話は聞いていたが笑顔でだ、夫は応えた。そして見れば妻も彼の横で同じ顔になっていてそのうえでソファーにいる。
「有り難うございます」
「皆で考えてね」 
 課長はにこやかに言った、だが。
 目は笑っていなかった、家に来た他の面々も同じだった。
「それでだよ」
「僕達にですか」
「一番いいと思うプレゼントね」
「くれるんですね」
「今からね、じゃあ出すからね」
「出す?」
「ここでね」 
 こう言ってだ、課長は。
 にこにことしたままプレゼントが入った箱のリボンを外してだった。
 紙も取った、そして。
 箱を空けてそこからプレゼントを取り出したがそれは。
「なっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 夫婦は絶句した、そのプレゼントは何と。
 犬のぬいぐるみだった、それも。
 外見も色もふわりそっくりだった、大きさまでだ。課長はそのぬいぐるみをにこやかな顔で出して言った。
「君達にいいものはないか」
「そう思ってなんだよ」
「俺達じっくり考えてな」
「それでこれにしたんだ」
「お前等に一番いいプレゼントはこれだってな」
「選んで買ったのよ」
 只のトイプードルのぬいぐるみでなくというのだ。 
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