ハゲワシ達に囲まれた子犬

「事情はサイトで知ったよ」
「酷いことね」
「そんな気の毒な娘だから」
「うちで幸せにしたいわ」
「うちにはセラピードッグもいるしね」
「きっとあの娘を幸せに出来るわ」
「幸せに出来るんだな、じゃあな」
　シピンは夫婦の言葉を受けてこう返した。
「実際に会って確かめて考えてな」
「ああ、決めさせてもらうよ」
「そうさせてもらうわ」
「宜しく頼むな」
　こう言ってだった。　
　リロに夫婦を会わせた、すると夫婦は彼女を会っても気に入った。そうして家に迎え入れたのだが。
　夫婦は後日様子を確かめに自宅に訪問してきたシピンにだった。
　ダークブラウンと白の小柄なピットブルに似た雌犬と遊んでいるリロを見せた。
「ワンワンワン」
「ワンッ」
　見ればリロはとても元気そうだ、そして小さな犬と遊びつつ彼女に癒されてる感じだ。夫婦はシピンにその光景を見せて話した。
「うちに前からいる娘でジェマというんだ」
「この娘がセラピードッグなの」
「飼育放棄されてハゲワシに囲まれて怖かっただろうけれど」
「今はこの娘が癒してくれてるわ」
「そして貴方達からも」
　シピンは温かい顔で話す夫婦にもと言った。
「そうだな」
「いや、僕達は何もしていないよ」
「ご飯やお水あげてお散歩に連れて行ってるだけよ」
「あとお風呂に入れてブラッシングもして」
「フィラリアとかの検査もしてもらってるだけよ」
「それがいいんだよ、そうして接してもらってるからな」
　だからだというのだ。
「リロは幸せなんだよ、ハゲワシに囲まれていたけどな」
「今は幸せに包まれている」
「そう言うのね」
「そうさ、一旦幸せに包まれたら」
　それならとだ、シピンは二人に話した。
「もうな」
「それからは」
「ずっと幸せに包まれるべきね」
「そうじゃないとな、今のリロを見てよかったと思ってるよ」
　彼女が幸せになれてというのだ。
「じゃあこれからもな」
「任せてくれ」
「このまま幸せにしていくわね」
「頼むな、誰もが幸せになるべきだが」　
　シピンは夫婦に応えて言った。
「酷い目に遭った子はな」
「余計にな」
「幸せにならないとね」
「不幸に遭った分な」
　こう言うのだった、見ればリロは本当に幸せそうだった。今は確かにハゲワシ達に囲まれておらず幸せに包まれていた。


ハゲワシ達に囲まれた子犬　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２１・７・２５