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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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天界の掟

 
前書き
書いてみると意外と時間がかかることに気がついた今日この頃。 

 
遡ること少し前・・・エルザside

「天輪・五芒星の剣(ペンタグラムソード)!!」

相手の能力がわからない以上、持久戦に持ち込ませるわけにはいかない。それにナツの状態も気になるため、短時間で仕留める必要がある。そう思いすぐに攻撃を繰り出すが・・・

「おぉっ、なかなかの速度だな」

男はそう言うとあっさりと攻撃を掻い潜ってしまう。

「なっ・・・」

あまりにも速い動き。まるでこちらの攻撃を最初から理解していたかのような反応に思わず目を見開く。

「タウロス!!バルゴ!!」
「Mo!!」
「お呼びですか?姫」

ルーシィはタウロスとバルゴを呼び出す。パワーのあるタウロスと戦闘能力が高めのバルゴならいけるか?

「あれ?二人増えたよ?」
「二人・・・え?あれも人のカウントでいいのか?」

二人は星霊魔法を見るのが初めてなのか、困惑したような表情を浮かべている。

星霊衣(スタードレス)・タウロス!!」

さらにはルーシィは自身にもタウロスの力を宿らせる。それにまた二人が驚いている隙に、タウロスとルーシィが突撃していく。

「ハァァァァ!!」
「Mooo!!」

パワーに特化している二人の攻撃。しかも相手は驚くばかりで全く警戒を怠っていたために反応が遅れている。

「あっ、ミスった」

完全に間合いに入られている男の口から思わずそんな声が漏れる。相手は間違いなく大ピンチに陥っているはず。それなのに、全く慌てている様子がない。

「はいはい、そういうこと言わなくていいから」

ルーシィの鞭とタウロスの斧が捉えると思ったその瞬間、突如風が舞い起こる。それも、一瞬で体力を奪われるほどの熱風が。

「キャッ!!」
「Mooo!?」

予期せぬ風にバランスを崩されたと思った途端、二人は風に押し流されてしまう。そのせいで、相手に攻撃を入れることができなかった。

「自分たちに注意を引き付けておいて・・・」

目の前の敵を取り除いたと思った瞬間に、男の方はすぐに視線を落とす。

「下からも攻撃とはなかなか考えるじゃんか」
「!!」

地面を掘って相手の足元に来ていたバルゴ。それを彼らはわかっていた。

「ほらよっと」
「キャッ!!」

炎を纏わせた張り手でバルゴの頭を叩きつける。すると、そのダメージが大きかったためか、バルゴは星霊界に帰されてしまった。

「なるほど、人間じゃなかったわけね」
「他空間からの召喚者ってわけね」

バルゴもタウロスも瞬く間に倒されてしまった。それだけで相手の力が高いことはよくわかる。

「いやぁ、いい風だ」
「この世界はあまりにも寒い(・・)からね」

先程の風はアンラッキーかと思ったが、どうやら違うようだ。しかし、それで確信も持てた。あいつらがこの国を苦しめている犯人で間違いがないということに。

「なぜこんなことをしているんだ?お前たちは?」
「なんで?それ聞くのか?」
「聞いても理解できないと思うわよ、あなたたちでは」

この物言いには思わず頭に血が上るのがわかった。彼らが私たちより強いことは確かにわかる。しかし、それでもここまでナメられては、黙っていられない。

「換装・天一神の鎧」

相手がそういう反応なら、その隙に片を付けるしかない。

「行くぞ、グレイ」
「あぁ!!」

ルーシィが倒されてしまった以上、二人の力を合わせるしかない。ハッピーたちでは、到底戦力にはならないしな。

「なんだか怒らせちまったみたいだな」
「言い方が悪かったわね。なんて言えばよかったのかしら?」

何かブツブツ話しているがそれを気にしている余裕はない。目の前に依頼の対象がいるのであれば、それは排除しなければならない。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「これでも・・・」

呼吸を合わせて突進していく。グレイの造形魔法は相当な実力だ。加えてこの鎧も私が持っている中でも最強クラス。よほどの相手じゃない限り、対処することすらできない。

「おっ?さっきよりもかなりいいな」

そのはずだったのに・・・

「えぇ、そうね」
「でも残念だ」

男は手をこちらに向けると、そこに魔力を集中させていく。

「グレイ!!」
「わかってる!!」

急遽ではあるが、グレイに盾を作ってもらい対処することにする。その隙に相手に一太刀入れる!!

「本気で戦ってやれないのが、申し訳なく思えてしまうな」

彼の手から放たれたのは炎系の魔法。私たちを飲み込めるほどの大きな炎はグレイの氷の盾を瞬く間に破ってしまう。

「しまっ・・・」
「任せろ!!」

前に出てくれていたグレイを守るために剣を振るう。全ては弾けないだろうが、少しでも被害を食い止めなければ・・・

「ますます勿体ないわ、これが本気の戦争だったらよかったのに」

首を振りながら何かを呟いている女。それを気にする暇もなく、男の放った炎は私とグレイを飲み込んだ。

「なっ・・・」
「バカな・・・」

防ぐことどころか威力を抑えることすらできずに炎に包まれる私たち。それは後方にいたハッピーたちまで巻き込んでいた。

「なかなかのもんだけど、相手が悪かったな」
「きっとこの世界(・・・・)では、トップクラスの実力だったんでしょうね」

かろうじて残っている意識の中、目の前までやってきている二人はそんなことを話している。

「くっ・・・」
「あら?まだ意識があるのね?」

グレイたちは全員気絶している状態。しかし、私ももう今にも意識が途絶えてしまいそうだ。

「どうしようか?」
「いいよ、もうすぐにでも気絶しそうだし」

トドメを刺されるかと思われたか、二人は全くそんな気配を見せない。それどころか、追撃してくる様子もない。

「全員の意識が戻ったら伝えておいてくれ、ここから手を引いてくれとね」
「お前たちの・・・目的はなんだ・・・」

相手を殺すことなく、ただ困らせることに特化しているような行動。その理由がわからない私は、ただ問いかけることしかできない。

「目的?う~ん・・・」

その問いに男は腕を組んで頭を悩ませる。全く悪人のようには見えないその姿にますます困惑の色が深まる。

「まぁ、簡単に言うなら、困らせたいんだよ。お前らを」
「何・・・」

どんどん視界もなくなっていく中、そんな惚けた回答で納得できるわけもない。そう反論しようとしたが、私の意識はそこで途絶えてしまった。

















シリルside

「ナツさん!!シャルル!!」
「エルザさん!!セシリー!!」

開けたところについた途端、皆さんの倒れている光景に驚愕し、すぐさま駆け寄る。明らかに不審な相手がいるのに、本来なら完全に不用意な動きをしてしまった。

「ありゃ、面倒くさいのがきたな」
「大丈夫よ、十分効いてる(・・・・・・)みたいだし」

完全に自分たちに意識が向いていないはずなのに、オレンジ髪の男と緑髪の女はこちらに何かを仕掛けてくる気配がない。

ドクンッ

「!!」

走り出した直後、先程までの体調不良が増したような感覚に襲われる。それはあまりにもひどくて、その場にうずくまってしまった。

「ナツさん!!」

真っ先に駆け出していたウェンディは一番近くにいたナツさんに駆け寄っている。動けない俺は、こちらから状況は把握しようと頭を働かせながら、周囲を見渡す。

(といっても、何があったかはすぐにわかるけどね)

恐らくこいつらがこの異常気象の原因で、それを解決するためにナツさんたちが挑んだが、返り討ちにあってしまったのだろう。
見たところ相手は二人だけ・・・でも、全員が倒されていることを踏まえると、相当な実力者であることは間違いないだろう。

「シリル!!立てる!?」
「なんとか・・・」

ウェンディがこちらに気付いたようで声をかけてくれる。心配してくれているのはわかるんだけど、どうにも調子が上がらないせいか、リアクションもできない。

「私たちが何とかしないと・・・」

皆さんがやられてしまったからか、妙に気合いが入っているウェンディ。それは俺も同じはずなんだけど、やっぱり調子が上がってこねぇ・・・

「ホントだ、これなら問題無さそうだな」
「えぇ、早いとこ引き上げましょ」

しかし、そんなこちらを一瞥すると距離を取り始める二人。妙な違和感に襲われていると、目の前の少女が真っ先に動いた。

「天竜の・・・」

見た目からは想像できない動きを見せるウェンディ。わずかな隙に距離を詰められた相手は目を見開いていた。

「翼擊!!」

ドラゴンの翼に見立てた風で相手を撃ちにいくウェンディ。魔力も成長していることもあり威力は申し分ない。しかし・・・

「危ね!!」

男はそれを片腕でガードし、あっさりと防いでしまう。

「え・・・」
「ヤバい!!」

あっさりと自身の技を止められたことに驚いているウェンディ。そして俺は、これは反撃されると思い無理矢理身体を動かして走り出す。

「とりあえず寝ててくれ」

一瞬の隙をついてウェンディの首元にチョップをしようとする男。俺はそれを防ぐために二人と間に割って入る。

「おっと」

かなりギリギリだったので、正直相手のそれを防げるとは思ってなかった。少しでも邪魔できればぐらいの気持ちでいたのに、男は突然手を止めると、慌てたように距離を取る。

「大丈夫?ウェンディ」
「うん。ありがとう、シリル」

とりあえずは大丈夫そうかな?と思ったけど、どうにも違和感も拭えないし、どうしたものかと頭を悩ませる。

「おい、どうする?」
「ん~・・・どうしよっかな?」

挟み撃ちにされている状況。相手に動かれても、後ろに仲間がいるから迂闊には動けない。それなのに、なぜか相手はなかなか動きを見せないでいる。

「おい!!さっきからなんなんだよ!!」

微妙な距離感を持たれている上にこちらに仕掛けてくる気配のない相手に思わず声をあげる。すると、男は数秒の沈黙の後、またしても訳のわからないことを言い出した。

「俺たちはお前とは戦えないんだよ、チビッ子」
「戦えない?」

その言葉の意味が全くわからずウェンディと目を合わせ、首を傾げる。それにそもそも、ナツさんたちが倒されている時点で、戦っているような気がするのだが・・・

「別世界の天使同士は戦えない。それが全ての世界を守るための天界の掟だ」
「え・・・天使?」

ずいぶんと久しぶりに聞いた単語に思わず額に汗を浮かべる。それを見た男女はようやくわかったのかと、深いタメ息をついた。

「俺たちはお前の母親と同じ天界の使いだ。天使の子よ」

予想できるはずもなかった敵の正体に思わず固まる。想定を遥かに越えてくる大きな敵に、俺とウェンディは唖然とすることしかできなかった。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
原作最終章からの流れをどこまでも引っ張り続けるポンコツですが何か?|ョω・`)モンクアンノカ?
これでシリルは完全な天使属性になってます。色々と強くなりすぎてますが、その辺は大目に見てください。
次でこの章は終わるかな?次回もよろしくお願いしますm(__)m 
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