馬との最後の別れ
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第一章
馬との最後の別れ
ヒューストン警察に勤務している雌の茶色のテネシー=ウォーキング=ホースのシャーロットは非常に優秀であり働き者だった。
その為彼女のパートナーであるドワイト=ハーリジョン隊員はいつも彼女を大事にしていた、だがある日のこと。
署長は彼の泣きながらの報告に驚き電話の向こうの彼に聞き返した。
「本当だね」
「はい・・・・・・」
電話の向こうの彼金髪を短く刈った緑の目で引き締まった長身で脚の長い彼は沈痛な顔と声で署長に答えた。
「残念ですが」
「そうなのか」
「私とパトロール中にです」
「突然出て来た工事用のコンクリート車の音に驚いてか」
「それまでこんなことはなかったのですが」
「誰にでも過ちはあるからな」
「それで逃げ出して、咄嗟の動きで私は振り落とされて」
そうなってというのだ。
「そこに悪いことに車が来て」
「シャーロットははねられたのか」
「そうなりました」
「それで君もシャーロットも無事か」
「私は幸い擦り傷位ですが」
ハーリジョンはこのことも報告した。
「ですがシャーロットは」
「そうか」
「まだ息はありますが」
「わかった、ではすぐに手配する」
署長はこう言ってだった。
すぐに数台のパトカーと馬用の搬送車を用意して自らも現場に向かった、するとシャーロットはまだ息があったが。
倒れ伏し血の海の中にあった、もう手の施し様がないことは明らかだった。その彼女の傍にだ。
ハーリジョンはいた、彼も血が流れているまでの怪我をしているがそれでもだった。
そこにいた、そしてだった。
今にも世を去ろうとしているシャーロットをじっと見ていた、そして。
「安心するんだ、僕はここにいるからな」
「ヒヒン」
「だから最後まで頑張るんだよ」
泣きながら優しい声をかけていた、そうして。
シャーロットが遂に目を閉じるとだ、泣きながらも直立不動になり敬礼をした。署長も他の者達も言葉がなかった。
この話を知ったオーストラリアニューサウスウェールズ州ニューカッスルの病院で勤務している看護師マーク=ロード濃い髭を生やしているがっしりとした体格の彼は今七十五歳の老婆であるリタ=メレディスもう余命幾許もなくベッドの中にいる彼女にこの話をした。
すると老婆はこう言った。
「私もです」
「貴女もといいますと」
「最後は馬に会って」
そうしてというのだ。
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