おっちょこちょいのかよちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
137 再会、そして合流
前書き
《前回》
三木首相は赤軍の人間に偽物である事を隠して杖、護符、そして杯を赤軍に引き渡す事に成功する。だが、憲法9条の改正をすぐにでも改正する事を求める赤軍の長・房子達は政治委員の足立正生・吉村和江を首相の監視下に置かせ、交戦権の復活を余儀なくされる目に遭ってしまう。かよ子達が抜けた学校の3年4組の教室は欠席者が続出した事で寂れてしまっていた。そしてかよ子達は遂に異世界へと足を踏み入れた!!
友蔵をこの話に絡ませる予定はなかったのですが、多分孫可愛さと寂しさで癇癪起こすのではないかと思い、とりあえず登場させました。周りの事態をひっかき回さないといいんですが・・・。
異世界の某地。西洋系の女性が攻め込むように歩き出す。そこには多くの人々がバリケードを張っていた。
「この先は通さんぞ!!」
「ナポレオン様やラマルク将軍の栄誉に掛けて!!」
人々は叫ぶ。
「邪魔よ」
女性は香水を取り出すと、周囲に振りかけた。バリケードは一瞬で溶解する。
「何!?消された!?」
そして女性はバリケードを設置した守衛隊にも香水をかけた。
「あ、ああーーー!!」
守衛達は苦しみながら消滅してしまった。
「この菫の香水は私が愛せない者や汚らわしき者は一瞬で消え去らしてくれるのよ」
女性はその先を行く。
(さあ、待っていなさい、テレーズ!母の言う事をちゃんと聞くのよ!!)
女性の名はマリー・アントワネット。嘗て自分は贅沢な暮らしをし、民衆の苦しい生活に見向きもしない事で国民たちから顰蹙を買い続け、結果処刑される事になった王妃である。平和を正義とする世界の陣地を進みながらアントワネットは娘を探す。
「アントワネット。貴女は間違った方向に進んでしまったわね」
「お、お母様!?」
アントワネットの前に現れたのは彼女の母・マリア・テレジアだった。
かよ子達は異世界のとある地へと辿り着いた。
(ここが『私達が住んでいる世界』とは違う世界・・・)
そこには二人の女の子がいた。中学生程の女子で、西洋系のような顔立ちだった。
「あの二人にこの手紙を見せればいいのかな・・・?」
すみ子は気になった。
「どうやらそうに違いない。今、『例の手紙はお持ちでしょうか?』って言ってたし」
すみ子の兄は察した。
「じゃ、行きましょう」
かよ子の母はそう言った途端・・・。
「ま、まる子~!!」
奥から誰かが走って来た。
「お、おじいちゃん!?」
「なんでおじいちゃんがいるのよ?」
まる子とその姉は祖父・さくら友蔵の登場に驚いた。
「だって、儂、まる子とお姉ちゃんが心配でしょうがなかったんじゃ~。寂しくて、つい、つい、ついて来たんじゃ!!」
まる子の祖父はその場で泣いた。
(まるちゃんのお爺さんがいつの間に・・・)
かよ子はその場で泣き出す老人にどうすればいいのか解らなかった。
「あの、まるちゃんのおじいさん・・・」
かよ子の母はまる子の祖父に聞く。
「お孫さんを心配する気持ちは解りますが、この手紙はお持ちでしょうか?」
まき子は異世界から送られた手紙を見せた。
「なんじゃ、それは、どこの国の言葉じゃ?」
「この世界から送られた手紙です。これを受け取っていない人はこの世界に入れないんです」
「おじいちゃん、これだよ」
まる子とその姉は祖父に手紙を見せた。
「ああ、まる子もお姉ちゃんも持ってるなら大丈夫じゃ。儂も行けるということじゃな」
友蔵はあっさりと元気になった。
「いえ、そうではなく・・・」
まき子も友蔵が理解を間違えていると思い、説明し直した。
「この手紙を貰った本人じゃないと駄目なんです。さくらさん自身にこの手紙が渡されましたか?」
「はて・・・、ワシは貰ったかどうか・・・」
友蔵は自身の記憶を探った。
「いいや、貰ってないわよ。私とまる子宛てに来たわ」
さきこは断言した。
「あ、そうじゃった。でも、まる子の友達のお母さんがいるなら儂も来て大丈夫じゃろ」
あまりに楽観的な友蔵に呆れるまき子であった。
「それでは駄目なんです。私は娘と同じこの手紙を貰っているからここにいるんです。おじいさんがこの手紙を直接貰っていないのでは駄目なんです」
「な、なんと!!」
友蔵はショックを受けた。
「い、嫌じゃ、嫌じゃ!!儂はまる子達を危険な目に遭わせたくないんじゃ~!!」
(どこまでも我が儘なじいさんだな・・・)
三河口は心の中で思った。
「おじいちゃん、悪いけど帰ってくれるかしら?」
さきこは頼んだ。
「お姉ちゃん、大丈夫なのかい!?その恐ろしい敵とやらに殺されたならワシは黙ってられん!!」
「まあ、そこで見送るならいいでしょう。皆、行きましょう」
まき子はこれ以上相手をしても埒が明かないと思い、先に進む事にした。皆はその場にいる二人の少女に手紙を見せる。
「ありがとうございます。お進みください」
かよ子もその女子に自分の手紙を見せる。
「最高位の道具・杖の所有者・山田かよ子さんですね?おいでいただきありがとうございます。では、お進みください」
「あ、はい」
かよ子は緊張のあまりお辞儀をして進んだ。他の皆も手紙を見せると共に先に進む。まる子は後ろで待っている祖父が気になった。
「まるちゃん、行こうよ」
かよ子が呼び掛けた。
「う、うん・・・」
そして、祖父が叫ぶ。
「ま、まる子~!!頼む!儂はまる子の祖父じゃ!どうか儂も行かせておくれ~!この通りじゃ!!」
友蔵は土下座した。
「手紙はお持ちでしょうか?」
「手紙なら孫が持っとる・・・」
「お孫さんではなく、貴方はお持ちですか?」
少女は聞き返す。
「儂は持っとらん!でもまる子達が心配なんじゃ」
友蔵は強行突破しようとする。しかし、見えない壁によって弾き返された。
「私達の世界から送られている手紙がないとここから先はお通りできません」
「頼む、通してくれ~」
まる子はその場へ戻ろうとする。
「お願いだよお~。おじいちゃんも連れて行かせてよお~。この手紙を見せればいいんだから」
まる子は祖父に手紙を渡そうとする。
「申し訳ないですが手紙は受け取った本人しかお使いできません。別の人に譲渡して通す事も認められておりせん」
「そんなあ・・・」
「まるちゃん、仕方ないよ。行こう」
かよ子はまる子の腕を掴んで引っ張った。
「そうだぜ、そういう決まりだから仕方ねえじゃねえか」
「うん・・・」
皆は先へ進んだ。その場に一人の女性がいた。
「あ、お母さん、健ちゃん、かよちゃ~ん!」
隣人のおばさんの娘・羽柴さりだった。
「お姉さん、いたんだ」
「勿論」
「さり、はしゃぎすぎよ」
「このくらいどうって事ないじゃん」
もう一人女性がいた。さりの姉のありだった。夫の悠一もその場にいる。
「ありや悠一君もいるのね」
「こ、こんにちは」
かよ子は礼をした。
「かよちゃん、久しぶりね」
「うん」
「皆、来てたのね」
「久しぶり・・・です」
また別の女性と女子高生が一名、現れた。
「ゆりちゃん、光江ちゃん」
さりとありの姉・ゆりと彼女の家の隣に住む鷺森光江だった。
「他にも沢山来てるね」
「ああ・・・」
杉山は素っ気ないような素振りだった。大野と喧嘩している影響もあるのだが。
「かよちゃん、大野君と杉山君って子、なんか離れてるわね」
さりが聞いた。
「うん、喧嘩しちゃって・・・。大野君が四月から東京へ転勤になっちゃうんだ・・・」
「そうなの・・・。何か悪い感じで来ちゃったみたいね・・・」
「うん・・・」
その時、また別の女子が現れた。
「あらっ、かよちゃんっ!!久しぶりっ!」
そこには杯の所有者・安藤りえがその場にいた。彼女の母親やその友人と思われる女子が二名いる。
「りえちゃん!」
「あら、こんなに友達がいるのね」
「かよちゃん、その子は・・・?」
すみ子が誰なのか気になった。
「ああ、東京に住んでる安藤りえちゃんだよ。異世界の杯を持ってるんだ。りえちゃん、私の隣町に住む友達だよ」
「宜しくね。こちらは私の学校の友達よ」
「宜しく・・・」
りえは友達の鈴音とみゆきをかよ子達に紹介した。一方のすみ子達も挨拶をした。
「おい、お前、三河口じゃねえか!」
一人の男子高生がかよ子達の所に寄って来た。
「お前は確か・・・」
三河口はその男子とは面識があるようだった。
「三河口君、知り合いなの?」
奏子が聞く。
「ああ、小学校の頃の友人、湘木克也だよ。お前も異能の能力があったのか?」
「ああ、この斧を持ってんだ。こいつで水に火、木の三つを自在に操る能力があるんだ」
「ほう」
「お前は小学生の頃、なんだかんだで暴走してたけど、今は落ち着いていそうだな」
「ああ、清水に来て変わったんだよ。実はあの時俺が暴れたのは能力の暴走によるものだったんだ」
「そうか、俺もそんなんだと思ったよ」
「でも、今は無闇に暴走する事はなくなったよ。おばさんの家に来た影響もあるかな」
「そうか」
「前に兄貴が清水に来た時はボコボコにされたがな」
「マジかよ。そんな事があったのか」
「ああ、お前の兄貴も元気かい?」
実は三河口の兄と湘木の兄は友人同士である。
「ああ、大学生活楽しんでるぜ。そうだ、こちらは俺の学校の友達、濃藤徳崇、北勢田竜汰、徳林奏子だよ」
「宜しく」
(なんか、同窓会みたいな感じだね・・・)
そしてかよ子と同じ年頃の少女がこちらを見ている。
「あ、ももこちゃん、ももこちゃん・・・!!」
一人の女子がまる子を本名で呼んで近づいて来た。
「あれ、ええと・・・」
「忘れたの、私のり子だよ」
「のり子・・・。あ!小鳥屋ののりちゃんだね!?」
「うん、また会えて良かった・・・。あの時貰った人形、今でも大事にしてるよ!」
のり子と名乗った女子は感動の涙を流すのであった。
「ありがとう~、私、もう会えないかと思ったよお~」
「のり子ちゃん、知ってる子なの?」
その場にいる人形が喋った。
「うん、ももこちゃんって言うんだよ」
「に、人形が喋った!!」
まる子は喋る人形に驚いた。かよ子は命懸けの戦いに参加すると解っていながらもこのような和気藹々とした雰囲気を見て少し心が落ち着くのであった。
「まるちゃん、昔の友達に会えて良かったね」
「うん、のりちゃん、こっちは友達のかよちゃんだよ~」
「友達・・・」
「こんにちは」
のり子はなぜかかよ子の方を冷めた目で睨みつけた。
後書き
次回は・・・
「唯一の友達」
友蔵は必死で二人の少女に通行を乞うも、叶わずに土下座を続ける。のり子は昔仲良くしていたまる子が他の友達が出来た事に気に食わず、癇癪を起しだす。さらに三河口達は広島のスケバンの女子とも再会し・・・。
ページ上へ戻る