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夢幻水滸伝

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第二百四話 穀倉地帯からその十三

「わらわはどの子も公平に育てるけえ」
「贔屓はされないですね」
「贔屓自体がよくないけえ」
 だからだというのだ。
「そうしたことはじゃ」
「されないですか」
「子育てでものう」
「その心掛けはええことですね」
 スーンが聞いてもだった、その横でコープチッティもそれはいいことだと納得している顔で頷いている。
「ほんまに」
「そうじゃ、だからじゃ」
 それでというのだ。
「婿を探しておるのじゃ」
「こちらの世界でも」
「そうじゃ、しかし一人もおらん」
 碧は口をへの字にさせて腕を組んで述べた。
「わらわに魅力が足らんか」
「皆そのお言葉に引いています」
 コープチッティが率直に答えた。
「そうなのです」
「そういうことか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「そうしたことを言われないことです」
「ううむ、しかしのう」
「国木田さんとしてはですか」
「言わずにおれんけえ」
 だからだとだ、碧はコープチッティに返した。
「それでじゃ」
「言われますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「これからも」
「そうですか」
「それで婿殿を見付け」
 碧はさらに言った。
「生涯添い遂げるのじゃ」
「それで今もですか」
「タイに来て探しちょるが」
「どなたもですか」
「困ったことじゃ」
 碧はまた口をへの字にして語った。
「積極的というイタリアおのこも皆断わるしのう」
「むしろどなたかおられたら」
 スーンは真顔で述べた。
「僕はその方を心から尊敬します」
「そうか」
「はい、国木田さんに応じられる方に」
 真顔のまま述べた。
「僕ではないですが」
「わしでもないです」
 コープチッティも断った。
「それは」
「そうか、残念じゃのう」
「他の方です」
「その他の人と会う時を楽しみにするしかないか」
「そうかと」
「わかった、ではわらわはここでお暇するが」
 それでもとだ、碧は二人にこうも言った。
「ちょっと一杯やらんか」
「お酒ですか」
「そちらをですか」
「折角三人一緒になったのじゃ」
 それならというのだ。
「それで親睦を深める為にのう」
「飲む」
「そうされますか」
「そうしたいがどうじゃ」
 こう二人に言うのだった。
「これから」
「はい、今は縁がなくともです」
 それでもとだ、スーンは碧に笑顔で応えた。
「やがては一時敵同士になるかも知れませんが」
「その後は仲間じゃ」
「そうなりますので」
「そうじゃ」 
 だからだというのだ。 
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