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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

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特別編 追憶の百竜夜行 其の八

 
前書き
◇今話の登場ハンター

◇ビオ
 イビルジョーに敗れた過去を持つ新人ハンターであり、友の仇を討つべく仇敵を探し続けているハンマー使い。武器はストライプストライクIを使用し、防具はスキュラシリーズ一式を着用している。当時の年齢は22歳。
 ※原案はX2愛好家先生。

◇カノン・アルグリーズ
 正確無比な射撃の腕を持つ新人ハンターであり、お調子者ながら人情味溢れる好漢。武器はスアルクピウスIを使用し、防具はロワーガシリーズ及びブナハシリーズの混合装備を着用している。当時の年齢は18歳。
 ※原案は疾風。先生。
 

 
 ノーラが鳴らしたドラの効果によって「反撃の狼煙」が上がり、ハンター達は一気に攻勢へと転じていた。これが今回の群れを撃退し得る、最後にして最大の好機であることを直感したのだ。

「この全身に迸る力の奔流……! これを活かさない手はないなッ!」

 スキュラシリーズの防具を纏うビオも、ストライプストライクIを振るってフルフルを殴打している。
 柵を破り、門に迫ろうとしていた白い飛竜は頭部に痛烈な一撃を浴び、地響きを立てて転倒していた。

「やはり違う……! あのドラの音を聞いてから、俺の力は格段に跳ね上がっている! この力なら……『奴』にも勝てるかも知れないッ!」

 かつて自分を打ち倒した凶暴な竜――イビルジョーが落としていった黒い鱗を握り締めて。雪辱を誓っていたビオは、より強くなれる可能性をその肌で実感し、打ち震えていた。
 ――自分の身体からこれほどの力を引き出せるのなら、鍛錬次第でより精強なハンターになれるはず。その時こそ必ず、あの凶暴竜を討ち取ってやる。

「俺は必ず強くなってみせる……! お前もせいぜい、そのための『糧』になるがいいッ!」

 その殺意にも似た闘志を胸に、再び立ち上がろうとしていたフルフルにハンマーを振り上げたビオは。渾身の力を溜め込み、とどめの一撃を放つのだった。
 電撃を放つ間もなく、頭を叩き潰されたフルフルは白い肉塊となり、倒れ伏してしまう。その光景を高台から目撃していた弓使いは、ビオが見せた破壊力に感嘆し、口笛を吹いていた。

「ヒューッ! ビオさん、相変わらず容赦ないねぇ。どんな力で殴ったら、あんなにド派手にブッ潰れちまうんだか」

 遠くで戦っているビオの様子を眺めながら弓を構えているカノン・アルグリーズは、この時すでに何頭もの大型モンスターを仕留めていた。彼が愛用しているスアルクピウスIは、ドラの影響で尋常ならざる威力を発揮していたのである。

「さぁーて……俺も負けてらんねぇし、もうひと仕事しちゃおうかね。カノン・アルグリーズ様の武勇伝が、また一つ増えちまうなぁ?」

 ロワーガシリーズとブナハシリーズの混合装備を纏う彼は、軽薄な言葉遣いとは裏腹な鋭い眼差しで、次の獲物を射抜いている。
 彼の狙いは、1頭のバサルモス……ではなく。その岩竜を追い、幾度となく棘を飛ばしているトビカガチに向けられていた。

「くッ、あの飛雷竜……どうあっても俺達を見逃す気はないみたいだねッ!」
「……あんな奴に構ってる暇なんてないのに、面倒っ……!」

 バサルモスの背に乗り、操竜状態の岩竜を走らせているウツシ。彼のガルクに乗って、その隣を並走しているエルネア。
 彼ら2人を背後から追い掛けている飛雷竜は、己が纏う電流と棘の威力を以て、眼前の獲物を仕留めようとしていた。故に、気づいていなかったのである。

 狩られる側にいるのは、自分なのだということに。

「へっ。あんなにでけぇ図体のバサルモスが的だってのに、1発も当てられてねぇじゃねぇか。情けないねぇ」

 巧みに岩竜を操り棘をかわしているウツシの技量に感心しつつ、カノンは相棒の弓を静かに引き絞る。高台の上から風を読み、目を細める彼の狙いはすでに、トビカガチの眉間を正確に捉えていた。

「『当てる』ってのはな――こうやるんだよ」

 大自然の息吹に同調し、風と一つになる感覚の中で弓を引き、矢を射る。それは本来、熟練のハンターでも余程の才能がなければ辿り着けない境地なのだが。
 このカノン・アルグリーズという男は、訓練所を出たばかりの1年目でありながら。すでにその感覚を、己の肌で会得していたのである。

 まるで風に運ばれる葉のように、自然な軌道を描いて空を翔ける1本の矢は。やがて「必然」であるかの如く、飛雷竜の急所へと突き刺さる。
 そして、断末魔を上げる間も無く。トビカガチは、糸が切れた傀儡のように崩れ落ちてしまうのだった。

「飛雷竜が……!?」
「あそこにいるカノンがやってくれたんだな! ありがとうカノォオンッ! 恩に着るよぉおぉッ!」

 その瞬間を肩越しに目撃したウツシは、矢が飛んで来た方向からカノンの狙撃によるものだと悟り、大声で感謝の想いを告げる。彼の叫びは、遥か遠くの高台にいる本人にまでしっかりと届いていた。

「……近くで聞いたら、さぞかしうるせぇだろうなぁ」

 ウツシ達に手を振りつつ、彼の声量に苦笑を浮かべているカノンの懸念は的中していたらしい。隣を走っていたエルネアは、耳を塞いでウツシを睨み付けている。
 あれほど元気ならば、もう先刻の負傷を心配する必要もないのだろう。

「決着を付けに行くんだろう? ……かましてやりな、ウツシ」

 岩竜に跨り、大物のリオレイアがいる前線を目指して走り去っていくウツシ。そんな彼を見守りながら、同行しているエルネア。
 彼らならきっと、アダイト達に勝利を齎してくれる。その信頼を胸に微笑を浮かべるカノンは、2人の姿が見えなくなった後。

「さぁて。あいつらの邪魔になる奴らは、この俺が……」

 再び弓を握り締めると――次の獲物に向けて、容赦なく矢を放つのだった。

「……綺麗さっぱり、掃除してやりましょうかね」
 
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