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イベリス

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第十一話 アルバイト初日その十一

「それでね」
「そのうえでなの」
「徹底的にそれをやる人もいるけれど」
「意地悪いわね」
「だから嫌いな相手だからね」
「そこまでするの」
「そうした人もね」 
 世の中にはというのだ。
「いるのよ」
「そうなのね」
「こんな人にもなったら駄目よ」
「それ絶対に嫌われるわよね」
「嫌いな人にしてもね」
 それでもというのだ。
「それでもね」
「やられたらね」
「そこまでされたら」
 咲に言った。
「誰だって怨むわね」
「そうよね」
「こうしたことと人の恋愛のことは言わないの」
「それが大事ね」
「あと好きな野球チームを何処かのチームの引き立て役とかね」
「それリアルで殴られない?」
 咲もそれはと言った。
「その場で」
「そうなってもおかしくないでしょ」
「それ阪神ファンに巨人のとか言ったら」
「関西じゃ死ぬかも知れないわよ」
「ええ、そんなこともね」
「言わないことよ」
「最後は私もわかるわ」
 咲は眉を顰めさせて答えた。
「流石にね」
「だからよ」
「言わないことね」
「こうしたことはね」
「失恋のことに野球でそんなこと言うことと」
「わざわざ人の嫌がること調べてね」
 そうしてというのだ。
「それをするのはね」
「どれも一生怨まれるのね」
「そう、兎に角人のトラウマに触れないこと」
「それが大事ね」
「下手しなくても逆鱗だから」
 母はこの言葉も出した。
「それには触れないことよ」
「逆鱗はそれよね」
「何があってもね」
「相手が誰でもなのね」
「本気で怒って」
 そうしてというのだ。
「その場で本気で怒られるか」
「一生怨まれるか」
「どっちも嫌でしょ」
「絶対にね」
「だったらね」
「こうしたことも気をつけることね」
「それがあんたの為でもあるのよ」
 母は娘に真顔で話した。
「時土岐人の気持ちをお年寄りでも全くわからない人いるけれどね」
「物凄い稀少価値ね」
「普通最悪でも毒親とか言われる時点でどうにかなるけれど」
「そこでならなくて」
「そう、それでお年寄りになってもね」
「そんな人いるのね」
「所謂糞婆とか糞爺とかね」
 そうしたというのだ。
「老害とかいうでしょ」
「よく言われるわね」
「そうした人もいるけれど」
「そうはなったら駄目ってことね」
「お母さんもお父さんも気を付けてるしね」
 老害、そう言われる様な人間にならない様にというのだ。母は娘に自分に言い聞かせながらそのうえで話した。
「だからよ」
「私も今から」
「そう、気をつけて」
 そうしてというのだ。
「暮らしていってね」
「そうするわね」
「結局それもあんたの為なのよ」
「人から嫌われない様にすることも」
「嫌われていいことないから」
「そういうことね」
「そうしたことも気をつけてね」
 こう娘に話した、そしてだった。
 一家で色々と話した、それは普通の世間話もあったが大事な話もあった。その話もまた咲の糧になっていくのだった。


第十一話   完


                2021・4・15 
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