犬が座っている理由
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第一章
犬が座っている理由
アメリカテキサス州の小学校で教師をしているカレブ=コレイスキーは眼鏡をかけた短い黒髪と黒い目の中年の男だ、その彼は。
今目の前にいる犬を見て首を傾げさせた。
その犬はラブラドールのミックス犬だった、黒くて足が白い。しかもかなり皮膚病が酷い。
犬はじっと学校の校門の前に座っていた、その犬を見てだった。
カレブも他の教師達も生徒達も何だこの犬と思っていた、そして犬は次の日もまた次の日もいた。彼は引き取ろうと思ったが。
住んでいるマンションにはもう二匹のつがいのチワワがいた、黒い雄のオセローと白い雌のデズデモナだ。
妻と暮らしてるそのマンションはペットは二匹までと決まっている、それですぐに引き取る選択肢は打ち消した。
だがその犬がずっと学校の前にいてとても寂しそうでしかも皮膚病が酷いので放っておけずだ。彼は家で妻のミーシャに話した。金髪が長く青い目で真っ白な肌でクールな顔立ちの中背の三十代の女である。
その彼女がだ、こう言った。
「じゃあシェルターに預かってもらって」
「そうしてか」
「皮膚病を治して里親もね」
「探してもらおうか」
「ええ、そうしましょう」
「命は見捨てられないな」
「あなたも私も子供に教える先生だし」
同業者同士で結婚したのだ。
「だからね」
「そうだね、命は粗末にしない」
「子供達にも教えないといけないから」
「そこはしっかりしよう」
「そうしましょう」
「それなら」
カレブは決意した、そしてだった。
犬、クレイブと名付けた見ると雄の彼にだった。
昼食に持って来ていた食べものをあげて懐いてもらってだった。
そのうえで車に乗せてシェルターに連れて行った、そのうえでシェルターのスタッフに事情を詳しく話してだった。
皮膚病を治してもらってSNSも使って里親を探してもらった、すると。
オースティンに住む大柄なアフリカ系の若い夫婦であるグレッグ=ジャスティンとデブラの二人が引き取った。ガソリンスタンドを経営している二人はカレブに言った。
「事情はSNSで聞いたよ」
「貴方がこの子を助けてくれたのね」
「なら今度は俺達がこの子を助けるよ」
「一生幸せにするわ」
「お願いするよ、ずっと学校の前で座っていたんだ」
カレブはクレイブのこのことも話した。見れば今の彼は酷い皮膚病もすっかり治っている。
「それは何故か」
「誰かと家族になりたかった」
「愛情が欲しかったのね」
「そう、だからこの子をずっと愛してくれるかな」
「そうさせてもらうよ」
「約束するわ」
二人も誓った、そして。
クレイブを迎え入れた、一年後カレブは妻と二匹の家の犬達と共にジャスティン家をを訪問した。すると。
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