井戸に落ちた犬達
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第二章
澄江も同僚達もコブラを警戒した、だが。
コブラはスタッフ達にも犬にも何もしない、そして。
「あれっ、何か」
「そうだよね」
「何か見張ってるね」
「それで犬達を守っている」
「そんな感じだね」
「空井戸ですが」
澄江は周りを見た、するとだった。
井戸の端に水があった、そこは子犬が入ると溺れる様な場所だった。その水を見て澄江は同僚達に言った。
「お水があって」
「子犬達がそこに行かない為にか」
「遅れない為に」
「それでか」
「見張ってるのか」
「そうでしょうか。ですが子犬達にも私達にも何もしないですし」
それでとだ、澄江はスタッフ達にさらに話した。
「それならです」
「子犬達を助けよう」
「そしてコブラもここにいたらどうにもならないし」
「助けよう」
「そうしよう」
スタッフ達も話してだった。
そのうえでだ、子犬達を助けて。
コブラも助けたがコブラも大人しかった、毒を持っているので警戒されていたがそれでもであった。
コブラも井戸から出された、子犬達を救助すると井戸のところでずっと心配そうにいた二匹の母犬、黒い垂れ耳のやや大型の犬が。
二匹のところに駆け寄ってだ、尻尾を振って顔を舐めた。
「ワンワン!」
「ワン!」
「ワンワン!」
二匹も尻尾を振って母犬にじゃれついた、飼い主もその彼等を見て笑顔で言った。みれば二匹共雌だった。井戸の中は暗くそこまで見極められなかったが今はわかった。
「サティー、ミカーニャ、サーニャよかったな」
「そうですね、コブラが護ってくれてたんです」
澄江が飼い主に話した。
「ずっと」
「コブラがかい」
「傍にいて子犬達がお水のところに行かない様に」
井戸のそこにというのだ。
「そうしていました」
「そうだったんだな、コブラはナーガだから」
「インドの神様ですね」
「だから命も助けるんだな、必要な時以外は生きものを襲わないし」
蛇はというのだ。
「食べる時以外は。それで何かしないと」
「噛むこともしないですね」
「だからだな、子犬達もな」
「護っていたんですね」
「そうだった、よかった」
そのコブラも見た、見れば。
コブラは再会を喜ぶ犬の親子を見ていた、だが。
何時しか自然の中に帰って行った、そしてだった。
澄江は蛇の姿も見て笑顔になった、そのうえで。
澄江はインドでの活動を続けていった、井戸に落ちた犬達だけでなく蛇のことも思いながら。命を助けることの素晴らしさを噛み締めながら。
井戸に落ちた犬達 完
2021・6・15
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