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イベリス

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第七話 入学式の後でその九

「おい、あの人か」
「お父さんも知ってるの」
「グループの上の人達も占ってもらってるそうだ」
「グループっていうと」
「八条グループだ」
「お父さんの会社だけじゃないの」
「ああ、グループ全体でな」
 それでというのだ。
「占ってもらってるんだ」
「そうなのね」
「もう日本でも指折りの占い師だぞ」
「そんな人だったの」
「ああ、お父さんでも知ってる位だ」
 こう咲に言うのだった。
「そんな人からか」
「アルバイトにどうかってね」
「何でお前がって思うけれどな」
「私占いは漫画とかで読んでるけれど」
 それでもというのだ。
「けれどね」
「自分はしないな」
「全然ね」 
 そうだと父に話した。
「だから私自身ね」
「何で声をかけられたかわからないか」
「ええ、けれどなのよ」
「声をかけられたんだな」
「速水さんの占いの結果ね」
 それでというのだ。
「それでなのよ」
「そうか、じゃあ一回うちに来てくれるんだな」
「そう言ってるわ」
「それじゃあ来てもらえ」
 父も即答だった。
「いいな」
「お父さんも賛成なのね」
「賛成っていうかな」
 どうかとだ、父は娘に答えた。
「信じられないってな」
「思ってるのね」
「ああ」
 その通りという返事だった。
「本当にな、けれどな」
「それでもなのね」
「来てくれるならな」
「来てもらって」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「アルバイトに雇ってくれるならな」
「是非なのね」
「そうしてもらえ」
「それじゃああね」
「それであんたはジムとか雑用よね」
 母は咲に横から聞いてきた。
「そうよね」
「ええ、占いは速水さんだけがされてね」
「それでなの」
「そう、私はね」
「そうしたお仕事ね」
「それだけらしいわ、速水さんにコーヒー淹れたりね」
 そうしたというのだ。
「お仕事らしいわ」
「成程ね」
「速水さんの占いがどんなのか詳しく知らないけれど」
「タロットみたいよ」
「そうなの」
「タロットで何でも占われるらしいわ」
 母は咲に雑誌で得た知識を話した。
「そうらしいわ」
「そうなの」
「だからね」
 それでというのだ。
「あんたのこともね」
「タロットでなのね」
「占ってね」
「私と会ったの」
「そうだと思うわ、これはね」
 娘にさらに言った。
「運命ね」
「速水さんとお会いしたことは」
「それで採用してもらったら」
「それもなのね」
「運命よ、いや運命ってあるのね」
 母はここでしみじみとした口調になって述べた。 
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