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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga24-B真実を越えた先にて待つもの~History~

†††Sideフェイト†††

“界律の守護神テスタメント”という神様のような存在の1人であるという女の子、マリアさんから、ルシルの真実を追体験するような形で教えられたのは、ルシリオン・セインテスト・アースガルドという、1人の男性の激動の半生だった。

「――以上が、皆さんがルシルと慕う、ルシリオン様の真実です」

マリアさんがそう言って締めると、ここミーティングホール全体に投影されていたルシルの半生映像が消えて、ミーティングホールの元の景色へと戻った。ハンカチを涙でビショビショにしている私もそうだけど、静かになったホール内では嗚咽、鼻をすする音が響いて、空気は重いまま。当然だ。ルシルが歩んできたおよそ2万年という気が遠くなりそうな時間、その内容があまりにも救いの少ない酷いものばかりだったから。

(あれだけの地獄を経験して、それでも今なお笑っていられるのは・・・強いけど、悲しいよ、ルシル・・・)

“アンスール”の魔術師、神器王ルシリオンとして戦った再誕戦争。“戦天使ヴァルキリー”が洗脳されて“堕天使エグリゴリ”となったガーデンベルグ達と戦い、今なお続いている堕天使戦争。さらに、“テスタメント”として数多の世界に召喚され、造り壊し、殺し殺されの循環の強制。まるで奴隷のような扱いだ。
そんな数あった契約の中盤の方で、私たちとは違う歴史を歩んだ次元世界での契約の映像があった。

「私、あっちの世界じゃ蘇ること出来なかったんだ・・・。フェイトもアルフも、プレシアママと解り合えなかったみたいだし・・・」

その世界では、アリシアは蘇ることはなく・・・

「私とアリサちゃん、魔導師になれなかったんだね」

「みたいね。セレネとエオスが居なかったし、ジュエルシードの数も、あたし達の時に比べれ10個近く少なかったわ」

アリサとすずかは、セレネとエオスと出会わなかったことで魔導師にならなくて・・・

「あっちの世界のルシルは、八神家に世話になったんじゃなかったんだね・・・」

アルフの言うように、こっちの世界でもそうだったけど、私とアルフはルシルと一緒に“ジュエルシード”を集めていた。でもはやての家族にはなってなかった。

「シャルちゃんは、私やユーノ君と一緒だったんだね」

そう言ってなのはがシャルを見た。私とアルフとルシル、なのはとユーノとシャル(というよりシャルロッテさん)、それにクロノたち管理局の対立だ。

「なぁ。ベルカ時代の話はないの・・・ですか? イリュリアの融合騎の話とかさ。あたしとシグナム達が出会ってた、みたいな・・・」

「その辺りについては何も。ただ、この世界でルシリオン様の元に夜天の書を転生させたのは私で、アギトさんをルシリオン様付きの融合騎となるよう企てたのはリアンシェルトです。私たちの介入が無かったあちらでのベルカにおいて、アギトさんがシグナムさん達と知り合っていたかどうかは判り兼ねます」

「そ・・・っか」

マリアさんとリアンシェルトは、ルシルのために色々と都合のいいようにこの世界で暗躍して、実行してきた。アイリも初めからルシル専用融合騎として開発されたらしいし、たった今言っていたように“闇の書”をルシルの元に転生させた。あっちの世界でのアギトの出生は知れず。それを聞いて悲し気に俯くアギトを抱きしめるのはリインだった。

「闇の書事件・・・。ルシルが居ねぇ所為か、あたしら普通に局員を襲ってんな」

「なりふり構わずだったわね、私たち・・・」

「挙句、リーゼ姉妹と言ったか、あの2人にしてやられていたな」

あっちの“闇の書”事件はグレアム元提督とその使い魔リーゼ姉妹の暗躍で進んだ。元“闇の書”の所有者アウグスタや“ナハトヴァール”というプログラムも存在しなかったことで、そこまで大きな戦いにはならなかった。
さらに言えばシャルの前世――シャルロッテさんの真技で“闇の書”の闇はバラバラに刻まれて消滅。それで闇の書”事件は終結・・・したんだけど、あっちの世界のアインスは生き残ることなく、すぐに旅立った。

「こちらの世界線での私は幸運だったのですよ。マリアの干渉があったからこそ、事件後も8ヵ月もこの世に留まれたのですから。ありがとう、マリア」

「いいえ。皆さんにとっての幸運などはすべて、私たちのルシリオン様のためという、独善的・打算的な計画の副次的な結果ですから、お礼を言われるようなものではありません」

“闇の書”の欠片事件や砕け得ぬ闇事件が起こらなかったあっちの世界は、「まさか、私がマッドサイエンティストだったとはね」と、ドクターが苦笑いを浮かべるような事件に突入した。プライソンや“スキュラ”は存在としておらず、ドクターとシスターズ(あちらではナンバーズ)と、シャルロッテさんやルシル達“テスタメント”が敵対する“アポリュオン”の一角、“大罪ペッカートゥム”を敵として歩んだ歴史。

「ドゥーエ姉様が亡くなっちゃいましたね~」

「解せぬ」

「お母さんは殉職したままなんだ」

「お兄ちゃん・・・」

ゲイズ中将やグランガイツ一尉、ドゥーエ、事件以前にクイント准尉とティーダ一尉は死亡。JS事件と名付けられた一件後、ドクター、ウーノ、トーレ、クアットロ、セッテは投獄。でも、チンク、セイン、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディードは、こっちの世界と同じようにナカジマ家、聖王教会に迎えられた。

「父さんや私たちスキュラが居ないおかげで、まぁ割と平和だったんじゃない? 自分が存在しない世界があるというのは、不思議な感じで不満でもあるけどね」

こっちとあっちの歴史は、JS事件から大きく変わってきた。

「私の前世――テルミナスが私に見せた記憶が、テスタメントの騎士シャルロッテとルシルとの戦いだったなんて・・・」

ルシルとシャルロッテさんがあちらの世界に召喚されるよう暗躍していたテルミナスによる、機動六課襲撃、そして決戦。この戦いで、ルシルとシャルロッテさんはあっちらの世界から離れた。その辺りの映像の最中、私はずっと悲しいやら照れ臭いやらで大変だった。

(私、ルシルのことが好き・・・だったんだ)

ところどころで、はやてやシャルから視線を受けてた自覚はあった。あっちとこっちでは違うとしても、ルシルに恋をして、射止めようとした私はライバルだ。でも、世界が違うという違いをしっかり認識しているから、2人からは何のアクションも無かった。あったらあったで困るんだけど。
ルシルが次にあっちの世界に召喚されたのは3千年後、あちらの時系列で言えば4年後。セレスを首謀者として起こったテスタメント事件。セレスは、魔術全盛期の魔導書を使って、殉職した局員を亡霊として召喚して、彼らと魔族を戦力とした組織テスタメントを設立。そして、殉職者遺族と殉職者の意思として、局への抗議を理由とした事件を起こした。

「お姉ちゃんが死んだとしたら私もたぶん・・・向こうの私と同じように狂ってたと思う」

「でも、そうはならなかった。・・・それでいいよ、セレス」

テスタメント事件はセレスの死亡、彼女を操っていたルシル達“アンスール”のかつての敵、ヨツンヘイム皇帝アグスティンの消滅によって終結。それと同時に、シャルロッテさんが“テスタメント”から解放される日でもあった。シャルロッテさんは“神意の玉座”から解放されて、そして、イリスとして生まれ変わった。

「わたしが、なのは達を見て感情バランスを崩してた理由がこれなんだね」

「そうなりますね。ただ、シャルさんが記憶や人格を保持したまま転生したのは、私としても驚くべきことでした。ベルカはアウストラシアにてフライハイト家が存続し、シャルさんの神器キルシュブリューテの絶対切断効果をスキルとして継承していた子孫を発見したことで、すぐに私は歴史に介入を始めました。存続、存在はしてはいましたが、表舞台に立っていなかった家柄を、裏から操作してに表に立つように仕向けました」

ベルカに逃れていたヨツンヘイム皇室分家のカローラ家、将来ルシルやシャルと出会う予定になるだろうからという理由での騎士カリムの先祖であるグラシア家、再誕戦争時から存続していたヴィルシュテッター家、ヴァルトブルク家、アルファリオ家などを、アウストラシアの味方として起用。大戦時は味方だったシュプリンガー家、ヴォルクステッド家、ブラッディア家は、元から敵国イリュリア側であっても表舞台に上がっていたこともあって、そのまま放置したとのこと。

「この次元世界は、ルシル君のために歴史を改変されて歩んできた世界・・・そうゆうわけなんやな」

「そうです。すべて、私が勝手に進ませてきました。酷いことをしているという自覚はあります。恨まれて当然だとも・・・」

「・・・でもさ、結果的に言えば私たち、幸せだよね? 私はプレシアママのおかげで蘇った、スバルのお母さんもティアのお兄さんも、グランガイツ一尉、ゲイズ元中将、ドゥーエは死ななかった。ウーノ達も投獄されなかった」

「私たちスキュラや父さん、ジェイル・スカリエッティは死んだけどね」

頬杖を突いたアルファがジロリとアリシアを見たから、アリシアは「あ・・・」って表情を曇らせた。だからアルフが牙をむいてアルファを威嚇するんだけど、「やめなさい」ってリニスが窘めた。

「気にすることはないさ、アリシア君。私としては、あちらの私も死ねばよかったと思えるほどだ」

「ドクター。そのようなこと仰らないでください」

「そうですよ。娘として、それは聞きたくありません」

「あちらのマッドなドクターも魅力的でしたけどぉ~」

「私たちのドクターは、あちらのドクターとは違ってとても素晴らしい方です」

「ああ。世のため、人のためと、頭脳と技術力を以て貢献していました」

「うん、うん! だから、死ねばよかった、なんて言ったらダメだと思う」

シスターズの面々が、ドクターを窘めるようなことを言っていった。娘たちからの言葉にドクターも「そうだね。馬鹿なことを言った、すまない」と、シスターズに体を向けて頭を下げた。そんなドクターに向かって、「そんなんだから、復活の機会を棒に振るんじゃないの?」と、デルタが椅子でくるくる回りながら失笑した。

「復活の機会って・・・?」

「え、なになに? スバル聞きたいの?」

「あ、うん、まぁ」

「教えてちょうだい、デルタ」

「ティアナもそう言うんなら、しょうがないな~。デルタ達はね、エインヘリヤルとしての召喚直後に神器王からある提案を受けたんだよ。神器王はガーデンベルグと闘いの後、確実にこの世界が消滅するから・・・えっと・・・」

「この世界線の住人であり、すでに亡くなっている私たちを、エインヘリヤルから解放すると言ったのよ・・・」

「つまりは、そこのリインフォース・アインスと同じように、神器王の創世結界ヴァルハラから独立した存在になるということね」

「と、いうことは・・・ある種の蘇りってこと・・・!?」

デルタ、ベータ、アルファと続けて教えてくれて、なのはの確認に「そういうこと!」とデルタが満足気に頷き返した。私とアリシアとアルフは、バッとプレシア母さんとリニスを見た。アリシアが震える声で「プレシアママも、リニスも、蘇るの・・・?」と聞いた。私も同じ思いで、「そうなんだよね?」って聞く。

「私とリニスは、彼の提案を断ったわ」

「はい。私たちは、このままルシリオン君を共に消えることを選びました」

「「「え・・・?」」」

まさかの蘇り拒否に、私とアリシアとアルフは絶句した。2人になぜ?と問い質す前に、ウーノが「ドクターは受けましたよね!?」とドクターに聞いた。ドクターはシスターズの視線を一手に受けながらも首を横に振って、「私も同様にルシリオン君と共に消えることを選んだよ」と寂しげに笑った。だからシスターズや私たちは席を立って、蘇りのチャンスを拒否したプレシア母さん達に詰め寄った。するとプレシア母さんとドクターが何度目かの顔見合わせ。

「娘たちが噛みついてきそうだから私から話そうか。私はね、人であることに誇りを持っていたいのだよ。特別に長い寿命を設定されてはいるが、プライソンのように不老不死ではなく、不死に苦しむこともなかった。ただ、長命なだけの人間だった。しかし、エインヘリヤルからの解放となれば、私は真に人間ではなくなる。定期的な魔力の供給を受けねば生き続けられないという枷は、私の誇りを傷つける。私は、人間として生き、そして死んだ。私はそれで満足している。・・・それにもう、スカラボにはすずか君が居てくれるからね。安心して、再び旅立てるよ」

「・・・ドクター、ジェイル・スカリエッティという、ひとりの人間の尊厳を守る・・・ですね。とても寂しいですけど、悲しいですけど・・・。尊重しないといけないですよね」

「ありがとう、すずか君。ウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、チンク、セイン、セッテ、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディード。私を父と慕い、想ってくれるのであれば、私の死を受け入れてほしい」

ドクターの強い意思を聞いたシスターズからの反論はもう出なかった。なら、プレシア母さんとリニスはどうなんだろう?ということで、私たちは2人に視線を戻した。2人も私たちの視線を受けて、プレシア母さんが「そうね・・・」と話し出してくれた。

「私も、スカリエッティ博士と似たような意見かしらね。あなた達のこれからの成長を見守っていきたい気持ちもあるわ。けれど、私はもう死んでいるのよ。その事実から逃げるつもりはないわ。それに、あなた達はもう、親が面倒を見る必要のないほどの立派な大人に成長しているもの。すぐ側で見守る必要はないと思うわ」

「私はプレシアの使い魔ですから、主と運命を共にするだけです。それに・・・私たちが居なくても、あなた達は大丈夫でしょうから」

「待ってよ! 私、プレシアママやリニスとまだ一緒に居たい!」

「そうだよ! あたし、リニスからまだまだ教わりたいことあるぞ! プレシアも・・・まぁ、なんだ、フェイトをイジめてた頃とは違うから、別に一緒でもいいけどさ!」

それがプレシア母さんとリニスの意思だった。でも、シスターズとは違って、アリシアとアルフはすぐに受け入れなかった。もちろん私だって「プレシア母さん、リニス・・・」と、ルシルの提案を受け入れてほしいって、縋るような声色で名前を呼んだ。

「いい? まず、エインヘリヤルからの解放、そして独立ということについてハッキリさせましょう。独立後の在り方は基本的に使い魔と同じよ。魔力供給を受けて命を繋ぎながら、見た目は老いることなく生き続ける。・・・確かに私は愛娘2人の成長を見守っていきたいわ。でもね、子が自分の年齢を追い越し、そして老いて死ぬのを、親が見たいと思う?」

もし、もし私の成長が止まって、エリオとキャロが私を追い越して歳を取って、おじいさん・おばあさんになって、私より先に亡くなるようなことを見ているしか出来ないとなってくると・・・。

(いやだ、辛い・・・! しかもこれ、エリオとキャロが私を存命させるために魔力供給を行うとなれば・・・)

私の生死を、あの子たちに任せることになる。つまり、私があの子たちの老いを見たくないと、だから先に逝きたいと言えば、あの子たちは魔力供給をやめるだろうか。ううん、やめたとしてもそれは・・・私を死なせるという行為。それをあの子たちに強いる? 無理、ダメ。血の気が引いた。

「フェイトは察してくれたみたいね。親として、子に自分を死なせるような真似をさせたいと思うかしら?」

「「あ・・・!」」

アリシアとアルフも、“エインヘリヤル”からの解放・独立の欠点に気付いたみたい。親しい間柄な分、辛い選択を迫られるということに、元“エインヘリヤル”の生死という選択を・・・しなければならないと。

「私たちに復活の機会を与えたとは言っても、そういう心情的な欠点を残していて・・・。ルシリオン(かれ)の善意は無意識の悪意とも言えるわ。でもまぁ、こうして最後にまた愛娘たちと会話が出来るのだもの。それは感謝しているわ。・・・それで、アリシア、フェイト、アルフ。私をまだ蘇らせたいかしら?」

「「「・・・」」」

「それでいいのよ。・・・リニス。あなたは残ってもいいのよ? この際、アリシアの使い魔になってしまいなさい」

「えええ!? ここでそう言いますか!? 私はプレシアの使い魔として共に逝こうと・・・!」

「リニス! 私の使い魔になってよ! 私、魔力総量もたくさんになったし、リニスひとりなら余裕だよ!」

「え、ですが・・・!」

「私たちが消えるまでに決めておきなさい、リニス。・・・私たちからは以上よ」

アリシアとアルフにしがみ付かれたままのリニスは困惑顔を浮かべて、私に助けを求めるかのように見てきた。プレシア母さんの復活は、プレシア母さんの意思を尊重して諦めたけど、リニスだけでも残ってほしいという思いは私も当然持っているわけで。

「私も、リニスには残ってほしい」

私はリニスの背後に回って、ギュッと後ろから抱きしめた。リニスに残ってもらいたいっていう、私とアリシアとアルフとプレシア母さんの4票に、プレシア母さんと一緒に消えるというリニスの1票。多数決であれば残留決定だけど、やっぱりリニスの意思も大事だ。いつまで居てくれるかは判らないけど、それまでに説得できたらいいな・・・。

「デルタ達はどうすんの?」

「もっちろん、残る! ね? アルファ」

「せっかく生き返らせようとしてくれているんだし、受けない考えはないわね。神器王のヴァルハラからエインヘリヤルの9割が消滅したから、割と寂しいのよ・・・」

「そうなのね。で、誰のお世話になろうって言うの?」

「ホテルアルピーノで雇ってもらおうか?って、デルタ達は考えてるね」

「あー、ルールー達と仲良いもんね」

「メガーヌさんも、スキュラのみんなを正式に従業員に迎えたいって言ってたし、ちょうどいいかも」

「ならさ。お休みの日とかミッドにおいでよ。また一緒にゲーセン巡りしようよ、デルタ」

「行くぅー!」

“スキュラ”の子たちは残留の意思があるみたいで、魔力供給をしてもらう予定はアルピーノ家と考えているようだ。

「シュテル達はどうするの?」

「我々は残るつもりはありません」

「当然であろう。我らのオリジナルは、遥かに遠いとはいえ今も異世界で生きておるのだ。偽者の我らが残る必要性は感じられん」

ディアーチェ達フローリアン家は残るつもりはないみたい。言っていることは正しいけど、ちょっぴり寂しい。オリジナルのレヴィ達とはもう10年以上逢えていないし。もう会えなくなるという事実に、私たちは最後になるだろうお喋りタイムに入った。

「ご歓談中申し訳ありませんが、皆さん、傾注をお願いします」

「うぬらは我らの消滅まで談笑と洒落込みたかったであろうが、そうも言っておれん。T.C.の最終フェイズがそろそろ開始される」

10分くらいお喋りした後、シュテルがそう告げると、私たちの視線は自然とディアーチェへ向いた。私たちの前にモニターが展開されて、表示されたのはルシルとアイリ、そしてミミル、ルルス、フラメルの“エグリゴリ”だ。

「T.C.の王ルシリオンと、その融合騎アイリ、それに加えパイモン、ルルス、フラメルが、ここ本局に攻め込んでくる」

「なんで・・・!?」

「保管庫にある魔力保有物ね。ルシルがT.C.のリーダーだっていう考えに至った瞬間、ルシルは改めて本局を襲撃するだろうな~って思ったよ。だからセラティナとクララを、保管室前に待機させたんだし。ただ、ミミルとルルスとフラメルがあっち側だって言うのは想定外だったけど」

「では、パイモンについて教えてやろう。感謝するがよい」

そう言った後にディアーチェが、ミミルとルルスとフラメルの戦闘スタイルや使用する魔術などを私たちに教えてくれた。リアンシェルト達が絡んでいるとはいえイリュリア製の“エグリゴリ”でありながら、ルシルと・・・シェフィリスさんが生み出したオリジナル“エグリゴリ”と同等スペックという脅威力。
そんなまずい人を伴って、ルシルが戻ってくる。きっと、私たちを倒してでも・・・奪いに来る。
 
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