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夢幻水滸伝

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第百九十九話 アミンの決断その一

               第百九十九話  アミンの決断
 自らを棟梁とした国家連合を設立させたリーは前々からシンガポールを窺っていたマレーシアに攻め込む用意を整えていた、そうしてまずはミャンマーとラオス、カンボジアの兵を海からマレーシアに向かわせた。
 リーはその報をシンガポールの自身の官邸で聞いて言った。
「まずはな」
「はい、ミャンマー等の兵を動かし」
「それのうえでや」
「彼等が上陸する頃にですね」
「私達も進攻を開始する」
 マレーシアに向けてというのだ。
「そうするで」
「そのうえで、ですね」
「四つの方向から攻めて」
 そうしてというのだ。
「マレーシアを降す」
「左様ですね、ただ」
 アルフィアンはリーと共に書類仕事をしながら言った、戦を進めていても政は止まらず彼等はそちらの仕事もしているのだ。
「リーさんは実はですね」
「わかるか」
「はい、干戈を交えずに済めばですね」
「ええ、軍は動かしたが」
 それでもというのだ。
「しかしな」
「それでもですね」
「干戈を交えずに済んだらな」
 それでというのだ。
「ええ、やはり戦わずして勝つや」
「それが最善ですね」
「例え軍を動かしてもな」
「いや、この度はじめて軍を動かしましたが」
 アルフィアンは狐のその顔をやれやれとさせて言った、毛は全体的に赤がかっている。
「随分とお金がかかりますね」
「軍を動かすだけでもな」
「かなりのものです」
「私も実際に動かしてみてな」
 リーも述べた。
「実感してる」
「やはりそうですか」
「物事は実際にやってみんとわからんとこがあるが」
「戦についてもですね」
「どれだけお金がかかるか」 
 このことをというのだ。
「今な」
「実感されていますね」
「ああ、こんなんやってけん」
 とてもとだ、リーは言った。
「もうな」
「左様ですね」
「そうそうな」
「戦を好む国が衰える理由がわかりますね」
「それで経済活動も制限されるしな」
「殺し合いしているところで商売なんて出来ませんからね」
「絶対にな」
 それこそというのだ。
「しかも折角整えた田畑も街も無茶苦茶になる」
「そのことも酷いですね」
「そして何より人が傷付いて死ぬ」
「それが一番酷いことです」
「そこまで考えるとや」
「ほんま戦はせんに限ります」
「威勢のええこと言うて恰好つけたり煽ったり」
 リーは怒った顔になり戦争を煽動する輩についても語った、こうした輩も残念なことに世には存在するのだ。
「そんなこと言う奴こそや」
「戦争に行ってみろですね」
「そや、悪質な宗教家に多いな」
「思想家にもですね」
「そんな奴こそ戦場にはおらん」
「出ても狂信的なだけで碌なことをしませんね」
 アルフィアンも怒った顔で言った。 
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