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真の百獣の王

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第一章

                真の百獣の王 
 アメリカテキサス州のある野生動物保護施設でだ。
 若い女性のスタッフが中年の男のスタッフに怒って言っていた。
「あの、あまりにもです」
「酷い話だな」
「はい、撮影用に色々連れ出して酷使してですか」
「もう用済みとなったらだよ」
「いらない、でですね」
「飼育放棄されてな、餌も碌に与えないで相手もしないで」
 そうしてというのだ。
「もうそれでだよ」
「シェーラはですね」
「・・・・・・・・・」
 女性スタッフの先に雌ライオンがいた、彼女は。
 蹲ったまま動かない、暗く悲しい顔でじっとしている。女性スタッフはその彼女を見てそうしてさらに言った。
「栄養失調とストレスで」
「あの通りだよ」
「喋らなくなってですね」
「食べることもなくなって。寄生虫にも苦しめられて」 
 飼育放棄された結果そうなってというのだ。
「今はだよ」
「柔らかいミートボールをお口の中に入れて」
「何とか栄養を摂ってもらっているよ」
「そうですよね」
「まだ吐くけれどね」 
 すとれすの結果だ。
「そこまでやられたよ」
「命があるのに」
 それなのにとだ、女性スタッフはさらに怒って言った。
「そんなことするなんて」
「僕も同感だよ、全く以てね」
「酷いことですね」
「うん、そしてね」
 ここでだ、男性スタッフは女性スタッフに話した。
「同じ飼い主から引き取った雄ライオンがいるから」
「やっぱり撮影用であれこれ酷使されて」
「用済みになってだよ」
「飼育放棄ですか」
「そこから保護した子がいるから」
「その子とですね」
「シェーラを会わせるよ」
 そうするというのだ。
「その子の名前はカーン、飼育放棄の中でストレスと暇潰しで自分で尻尾を噛んで潰したけれど元気だよ」
「ストレスでっていうのが」
「酷いね」
「本当に最低な飼い主なんですね」
「世の中そんな奴もいるもんだ」
 男性スタッフは苦い顔で述べた。 
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