本町絢 外伝 絢と僕の留メ具の掛け違い・・そして 結末
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5-⑵
私とお母さんは、藤沢さんのお宅に居た。
「もうすぐ、うちの人も澄香も帰って来よるから、でも、もっと気楽にしてくださいね」
「素敵なお庭ですね。いろんな樹が植わってて」とお母さん、話を続けていた。ガラス戸越しに桜の花が見える。
「最近はあんまり手を加えていないんでの。うちの人、興味ないみたいで・・・」
私は、庭に出てみた。池があったけど、いまは水が入っていなかった。その向こうに築山があって、石灯籠の横に桜が満開だった。そのむこうの方にお城の天守閣が、西陽に照らされて眩しかった。私は、実感していた。ここで、私は新たなスタートだと。
澄香さんが帰ってきて、私の部屋に案内された。もう、花柄のベッドカバーとか机とか置いてあった、東側の小窓からはあのお城が見える。南側にも大きな窓があって、とても明るい。
「夏はチョット暑いかもしれないけど、ドァーを開けておくと風が通るわょ。アハー、私は隣の部屋だから、何かあったら、言ってネ。私、お兄ちゃんしか居なかったから、妹が出来て嬉しくって。ねぇー、私のことは『お姉ちゃん』と呼んでね、アハーッ。今年から私も1年生だけどネ」
澄香さんは、教育学部を出て、今年から地元の小学校の先生になった。私の先輩だ。すごく、明るいし、気さくなんだし、私の姉が居たらこんな感じだったのかなと思った。
「やぁ、いらっしやい。本町君は元気にしているかな。おぉー、おじさんのこと覚えているかな。お宅に寄せてもらった時、おとなしくして、側でずーと絵を描いちょったのが、こんな美人さんになったのかぁー」
そういえば、会ったことがあったかも知れない。この大きな声。お父さんより5才位年上らしい。その夜は、泊っていけということで、食卓には、地元の刺身、寿司、揚げ物、野菜とめちゃくちゃ並んでいた。
「絢ちやん、たっぷり食べてくれ。なにが好きなのかわからんかったから・・肉のほうが良かったか。おい、澄香、『やましげ』に電話してステーキ肉届けさせろ」
私、思わず
「もう、充分です。とてもこんなに食べられません」
次の日、お母さんと大学に行って入学の手続きを終えた。
よし、待ってろよ! 水島基・・・ 君
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