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歪んだ世界の中で

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第十三話 希望の親その一

 希望と千春は学校を出た。学校を出てだ。
 希望は千春に対してだ。校外のその道を歩きつつ話した。
「あのね。ここからすぐだから」
「歩いてどれ位なの?」
「五分位かな」
 希望は少し考えてから千春に答えた。
「それ位の距離だよ」
「そうなの。本当に近いんだね」
「いや、もっと近いかな」
 希望は己の言葉を訂正してきた。
「三分かな」
「三分なの」
「うん、とにかく近いんだ」
 学校からだ。そうだというのだ。
「だからね。若しもだけれど」
「そのお家に入ったら」
「通学が凄く楽になるね」
 希望はまずはこのことを話した。
「友井君と一緒に行くそれがね」
「あの人と」
「友井君も楽だと思うよ」
 彼の立場になってみて考えてもだ。そうだというのだ。
「そうなるとね」
「そうだよね。近いからね」
「近いってそれだけで」
「有り難いことなんだよ」
「千春はね。そういうことはね」
「千春ちゃんは違うの?」
「うん、すぐに行き来できるから」
 だからだとだ。千春はいつもの笑顔で希望に言った。
「近いとか遠いとかはね」
「特にないんだ」
「ないの。けれど希望達は違うんだね」
「そうだよ。近いっていうだけでね」
 どうかとだ。希望は笑顔で千春に話していく。
「嬉しいよ。それでね」
「それで?」
「近いとか遠いっていうのはね」
 その距離の概念をだ。希望は千春に話した。
「自分がどう思うか、感じるかなんだよね」
「希望がなのね」
「うん、そういうものだろうね」
 こう千春に話すのだった。
「実際のところはね」
「そうよね。自分から見てね」
「近いか遠いか。そしてこの場合はね」
「近いんだよね」
「おばちゃん達のお家はね。それにね」
「それに?」
「今度も僕から見ての言葉だけれど」
 距離の概念、それと同じくだというのだ。
「おばちゃん達のお家って温かいんだよね」
「その人達がいい人達だから」
「うん、温かいんだよ」
 そうだというのだった。
「僕にとってはとてもね」
「だからそこにいたいのね」
「いたいよ。けれどね」
 どうかとだ。希望はここで申し訳なさそうな顔も見せた。千春に対して。
「夏休みは行ってなかったね」
「そうだったの」
「夏休みには最初の頃に行っただけだったね」
「その時にだったの」
「そう。その時にね」
 まさにだ。その時だけだったというのだ。
「少し行っただけだったんだ」
「それはどうしてなの?」
「うん。千春ちゃんと会って」
 そうしてだとだ。希望は千春を見た。
 それからだ。また言ったのである。
「それにね。友井君へのお見舞いもあったから」
「そうしたことがあってなの」
「うん。おばちゃん達のところには行ってなかったよ」
 このことをだ。希望は申し訳ないといった顔で話すのだった。
「よくないね。それはね」
「けれどそれまではだったよね」
「何かあるといつも行っていたよ」
 大叔母達の家、そこにだというのだ。 
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