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歪んだ世界の中で

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第十一話 テスト勉強その十三

「ただ。おそらくですが」
「おそらくって?」
「遠井君のテストの成績に関わらずです」
「僕が家を出ておばちゃん達の家に行きたいって言えば」
「遠井君の大叔母さん達のお言葉次第ですが」
「それだけでだね」
「はい、出て行けると思います」
 それは可能だというのだ。
「そうできるでしょう」
「そうかもね。お父さんもお母さんもね」
「自分のことしかですよね」
「考えないからね」
 そうした両親なのだ。希望の両親は。だからこそだった。
「僕がいなくなってもね」
「特に何も思わないと思います」
「そうだね。けれどね」
「それでもですか」
「自分へのけじめとしてね」
 それでだ。あえてだというのだ。
「僕、テストでいい成績を取ってね」
「それを約束の盾として」
「親に言うよ。家を出るってね」
「そうされますか」
「そうじゃないと自分でも納得できないから」
 まさにだ。そうだからだというのだ。
「そうするよ。けれどその前に」
「大叔母さん達にはお話をされましたか?」
「ううん、まだなんだ」
 肝心のだ。それはしていないというのだ。
 だからだ。ここで彼はこう真人に話した。
「それは明日にでもね」
「いえ、今日にでもです」
「今日でもいいかな」
「いいと思います。不安ですか?」
 真人は希望を気遣ってだ。彼にこうも言った。
「大叔母さん達がいいと仰ってくれるかどうか」
「あっ、その心配はしてないよ」
 大丈夫だというのだ。そうしたことについてはだ。
「だってね。おばちゃんもポポちゃんも僕の親のことは知ってるし」
「だからですか」
「正直うちの親って一族の仲でも評判悪いんだ」
 そうだとだ。希望は困った顔になって真人に話した。
「ああした性格だから。揉めごとばかり起こすし」
「それで」
「うん。一族皆から嫌われてるんだ」
「ですが遠井君はですね」
「幸い僕は一族の間では嫌われてないよ」
 希望の救いの一つだった。彼は学校や家の中ではともかくだ。親戚の間ではだ。決して嫌われてはいないのだ。これも華麗とっては救いである。
 それでだ。今はこう言えたのである。
「だからね。確信して言えるけれど」
「受け入れてもらえますね」
「おばちゃん達にはね」
 微笑んでだ。真人にはこのことは大丈夫と言えた。
「そうしてもらえるよ。部屋もあるし」
「お部屋もありますか」
「おばちゃん達って結婚してたんだ」
 過去はだ。そうだったというのだ。
「けれど。どちらも旦那さんに先立たれて」
「そういえば前お話してくれましたね」
「うん。二人共僕が生まれる前に死んでね」
「それで小さい方の大叔母さんにはご子息がおられましたね」
「けれど今は別々に住んでてね」
「大きい方の大叔母さんはお子さんがおられなくて」
「それで今は二人で住んでるんだ」
 そうした事情をだ。希望は真人に話した。
「そうなってるからね」
「では条件は悪くないですね」
「僕にとってはね」
「そうですね。それならです」
 真人もだ。微笑んで希望に答える。
「きっと許してもらえると思います」
「じゃあ今日にでも」
「言われるといいです。ただ」
「ただ?」
「御一人で行かれるよりもです」
 希望一人でおばちゃん達のところに行く、それよりもだというのだ。 
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