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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二話 荀彧、帝を甘やかすのことその九

 帝はだ。劉備に笑顔でこう話すのだった。
「近頃ですが」
「朱里ちゃんのことでしょうか」
「彼女と」
 そしてだった。他には。
「荀彧と陸遜です」
「三人共ですか」
「三人に色々と教えてもらって」
 満足している笑顔でだ。劉備に話すのである。
「朕もこの国を治めていけそうです」
「それだけのものが帝に」
「備わってきていると思います」
 そうなっているとだ。劉備に話すのだった。
「彼女達のお陰で」
「そうですか。ではその御言葉は」
「彼女達に伝えていいでしょうか?」
「そうして下さい」
 帝は笑顔のままだった。
「是非共」
「はい、それでは」
「それにしても。今は大変な時期ですが」
 戦乱は終わったがだ。まだ不穏な者達は残りだ。
 しかもまだ国は安定していない。それは間違いなかった。
「それでも。人は多いですね」
「はい、あちらの世界からも来てくれていますし」
「では。劉備よ」
 帝は劉備にも声をかけた。
「これからも宜しく御願いしますね」
「わかりました」
 笑顔で応える劉備だった。
「私もやらせてもらいます」
「そうして下さい」
 こうしたやり取りも行われるのだった。帝も今大きく羽ばたこうとしていた。
 しかしそれを聞いてだ。司馬尉はというと。
 苦い顔になりだ。己の屋敷でこう言うのだった。
「帝は暗愚であって欲しいけれど」
「帝が暗愚であればですね」
「そこに付け込めるからですね」
「その通りよ」
 まさにそうだとだ。妹達にも話す。
「だからだけれど」
「しかし今はです」
「我等は宮廷に警戒されていますし」
 もっと言えば劉備達にだ。そうなっているのだ。
「ですから仕掛けられません」
「忌まわしいですが」
「そうね。今は様子見しかないわ」
 苦い顔でだ。司馬尉もこう言うしかなかった。
「そうするわよ」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
「それならそれでやることがあるし」
 これだけで諦める司馬尉ではなかった。それでだ。
 妹達にあらためてだ。こんなことを言ったのだった。
「定軍山よ」
「あの山ですね」
「あの山において」
「まずはあの者達を消しましょう」
 このことにだ。重点を置くというのだ。
「そうするわ。いいわね」
「わかりました。それでは」
「手を打っておきましょう」
「既に網は仕掛けているわ」
 司馬尉の顔に笑みが宿った。冷酷な笑みがだ。
 その笑みでだ。こう話したのだった。
「けれどその網をね」
「さらにですね」
「幾重にも仕掛けていくのですね」
「そうするわ。そうして確実にね」
「あの者達を消すのですね」
「まずは」
「堤を崩すには」
 どうするのか。司馬尉は例え話をはじめた。
「まずは穴を少し開けるのよ」
「さすればそこから水が入りですね」
「堤全体を脅かしやがては」
「堤を全て壊す」
「そうなるからですね」
「今がまさにそれよ」
 そのだ。巨大な堤に穴を開ける時だというのだ。
「わかったわね」
「はい、それでは」
「その穴を確実に開けましょう」
 こうした話をだ。三姉妹は密かに話していた。
 そのうえでだ。また怪しい動きがはじまろうとしていたのだった。


第百二話   完


                      2011・8・11
 
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