とある3年4組の卑怯者
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15 恋路
前書き
藤木が笹山さんを好きになるきっかけを私的に創作してみました。「ちびまる子ちゃん」アニメ2期68話「冬田さんの恋」の巻で藤木は1年生の時から笹山さんが好きということ、また、20周年記念スペシャルの「友達になろう!」の巻を観て藤木と笹山さんは1年生の頃はクラスは同じか違うか不明だったということで、「1年次は違うクラスで2年生で同じクラスになった」という設定にしました。勝手な設定すみません。
藤木は笹山と初めて接触し、彼女に惹かれた時を思い出していた。
(初めて笹山さんを好きになったのは1年生の頃だったな・・・)
2年前、当時1年2組の藤木茂は運が悪いと言われていた。永沢とは彼から、自分にだけ弟か妹ができると伝えたことから親友とは思っていたが、永沢からは嫌々付き合っていると嫌味を言われることが多かった。
クラスメイトの誤解で卑怯と言われたことも何度かあった。卑怯がこのころから藤木のもう一つの名前と化しつつあった。そのせいでいい友達が中々できずに性格がだんだん暗くなり学校生活が苦痛に感じた。
(せっかく、クラスの皆の名前をみんな覚えたのに、どうしてもっといい友達ができないんだろう・・・)
ある時、藤木は廊下を歩いていた。その時、後ろから急に誰かが自分の尻に蹴りを入れた。激痛で泣くしかなかった。
「そこに立ってちゃ邪魔なんだよ、ボケェ!!」
「だからって蹴らなくてもいいじゃないか・・・」
「うるせえ!!ボケーっと歩いてんじゃねえ!!」
しばらく立てなかった。藤木は泣いたが、心配してくれる友達がいなかった。その時、一人の女子が気の毒そうな表情で歩み寄ってきた。自分のクラスの女子ではなかった。
「大丈夫・・・?」
その女子は優しく話しかけた。
「後ろから蹴られたんだ・・・」
「きっとウチのクラスの堀内君ね。あの子本当酷いことをするのよ」
女子は涙を拭いてとハンカチを差し出した。
「あ、ありがとう、優しいね・・・」
「そうかな・・・」
「うん、だって僕には友達が少ないし、運が悪いから皆に避けられるし、それに卑怯者って呼ばれるんだ」
藤木は自分のことをさらけ出した。
「そうなの、何だか可哀想・・・」
女子は藤木に同情していた。自分の気持ちを理解ってくれている・・・。そして卑怯者と呼ばれる自分を心配してくれるなんて・・・。こんなに優しい子に会うのは初めてだと藤木は思った。やっと立てるようになると、当時の2組の担任の先生がちょうどやってきた。女子は事情を説明してくれた。そして笑顔で藤木に顔を向けた。
「元気出してね。それじゃ、またね」
女子はそう言って自分のクラスの教室に戻っていった。藤木はその女子の美しい笑顔と優しさに惹かれていた。
(あの子と友達になれたらいいのに・・・)
藤木はその女子の事をずっと考えていた。
数日後の登校中だった。前に一人の女子が目に入った。あの時の女子だった。
(お礼を言おう・・・!)
藤木は思いきって話しかけた。
「あ、あの・・・!」
女子が振り向いた。
「君はあの時の・・・?」
「この前はどうもありがとう・・・」
「どういたしまして」
女子は微笑んだ。
(か、可愛いなあ・・・)
藤木は照れた。
「あ、君の名前は?」
「私?私は1組の笹山かず子。宜しくね」
「ぼ、僕は藤木。2組の藤木茂っていうんだ。あの、僕と、と、友達・・・」
と、その時、その女子の友人と思われる女子が現れた。
「笹山さん、おはよう」
「あ、城ヶ崎さん、おはよう、それじゃ藤木君、またね」
「あ・・・」
友達になってくれとは言えなかったが、その女子の名前が笹山かず子ということを知ることができた。
(笹山かず子さん・・・か)
藤木は笹山の事がより好きになっていった。そして、学校が少し楽しく感じていった。
2年生になった。藤木は3組に配属された。そして・・・。
「あ、藤木君も3組なんだ。宜しくね」
「さ、笹山さん。うん・・・、宜しく」
藤木は笹山と同じクラスになれたことが何より嬉しかった。が、同時にあの堀内と同じクラスでもあった。堀内は授業を勝手に抜け出したり、酷い悪戯を好んだ。ある時、女子の身体測定の時、堀内は急に保健室に乱入してきた。その後、クラスメイトの城ヶ崎が泣いていた。堀内に体を弄られたらしい。これが原因で城ヶ崎は女尊男卑な態度をとるようになったとか。堀内はどれだけ先生に注意されても直りようがなく、皆は彼を嫌うようになった。藤木も堀内から何度か被害を受けた。邪魔だと急に突き飛ばされたり、給食当番や掃除当番の代わりを押し付けられたり、宿題をやらされたり・・・。しかし、必ずではないが笹山が慰めてくれた。もし笹山に会わなければ不登校になっていたかもしれない。
そして、3年生となり、堀内とはクラスが別れた。藤木と笹山は同じ4組となった。
「藤木君、また一緒のクラスだね。宜しくね」
「う、うん・・・宜しく」
藤木はまた笹山とクラスメイトになれて嬉しかった。
藤木は笹山との日々で物思いに耽っていた。
(それで今、リリィが転校してきて、今、僕の前には好きな子が二人いる事になっている・・・。どうしよう・・・)
「藤木君、どうしたの?」
リリィが心配そうに聞いてきた。
「あ、ちょっと、ボーっとしてたんだ!」
その時、堀内がものすごい勢いで入ってきた。
「おいテメエ、さっきはよくも調子こいでくれたな!!」
「わ、わーっ!!」
藤木は慌てて後ろのドアから廊下へ逃げた。
「逃げんじゃねえ、卑怯者!!」
堀内は反対のドアから廊下を出て追う。藤木がずっこけた。堀内が勢いをつけて蹴りを入れる。
「なめてんじゃねえぞ!!」
藤木が目を瞑る。その時誰かの声がした。
「やめて!!」
藤木が目を開けた。蹴られたのは藤木ではなく、彼を庇った笹山だった。
後書き
次回:「負傷」
堀内の蹴りで身代わりで負傷した笹山に罪悪感を感じる藤木。藤木は永沢の言葉によって自分が笹山に庇って貰った事が卑怯だと感じた藤木は保健室から戻って来た笹山に謝罪する・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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