八条学園騒動記
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第六百十二話 わかりやすいことその十一
「生きていられないのよ」
「それでだね」
「もうね」
「お酒を飲むなって言うと怒るんだ」
「そうなの」
実際にというのだ。
「死ぬから」
「それ今もなんだ」
「もうそれが無意識の中にあるみたいで」
酒がないイコール死と、というのだ。
「だからね」
「今もなんだ」
「お酒を飲むなって言う政治家はね」
「嫌われるんだ」
「それで失脚もね」
これもというのだ。
「普通にするから」
「そうなんだね」
「そういうことよ、わかりやすいでしょ」
「かなりね」
ルシエンもはっきりとした声で答えた。
「お酒は本当に命だね」
「ロシアではね」
「だから技術が発達してもなんだ」
「お家があったかくなってもよ」
「お酒を飲むなって言ったら」
「どんな政治家でも終わりなのよ」
アンネットはさらに言った。
「ロマノフ朝もそれで終わったし」
「革命の原因?」
「いえ、国民の支持を失ったのよ」
一次大戦の時に酒を規制してというのだ。
「ゴルバチョフはそう言ってでね」
「お酒を飲むな働け」
「この一言でどんな政治家も終われるのよ」
ロシアではというのだ。
「そういうことよ」
「それはもう絶対だね」
「ロシアではね」
「それで普段から飲んでるんだね、ロシアでは」
「皆ね、誰も止めないっていうか」
「止めたらそこで人生終了だね」
「そうよ、それで私もね」
アンネットはここでウォッカの瓶を出した、そして。
そのうえでだ、ルシエンとウェンディにさらに話した。
わかりやすいこと 完
2021・3・16
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