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ドリトル先生と不思議な蛸

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第十二幕その十

「それでもね」
「毒のある蛸がいるなんてだね」
「今まで知らなかったわ」
「それがなんだ」
「実際にいてなのね」
「注意が必要なんだ」
「そうなのね」
「だからね」
 先生はさらにお話しました。
「僕も今お話したんだ」
「私に」
「イギリス近海にはいないけれど」
「いないのね」
「暖かい海にしかいないから」
 そうした蛸だからだというのです。
「それでなんだ」
「イギリスの海は寒いから」
「特に冬は寒いね」
「ええ、というかイギリス自体がね」
 サラは先生に答えました。
「日本よりもね」
「寒いね」
「緯度が高いから」
 そのせいでというのです。
「日本よりもね」
「そう、だからね」
「あの蛸もいないのね」
「日本近海にはね」
 そうだというのです。
「だからイギリスにいる分にはね」
「安心していいのね」
「あの蛸についてはね」
「そうなのね」
「けれど日本にはいるし」
 それにというのです。
「そしてオーストラリアにもね」
「いるのね」
「だからこうした国々の海にね」
「行くとなのね」
「特に海が温かい夏はね」 
 この季節はというのです。
「注意しないと駄目なんだ」
「そういうことね」
「そこは覚えておいてね」
「わかったわ、というかね」
 サラはお兄さんの言葉に頷いてからこうも言いました。
「日本の夏は暑いわね」
「この神戸はかなりましだよ」
「そうだれど全体的にね」
「イギリスの夏よりはだね」
「遥かに暑いわ」
 そうだというのです。
「本当にね」
「湿気も凄いね」
「ええ、それでも冬はね」
「イギリスの冬よりはだね」
「遥かにましよ」 
「そうだね」
「これはドイツやフランスから見てもよね」
 欧州のこうした国々から見てもというのです。
「そうよね」
「何しろパリで日本の宗谷岬より北にあるんだよ」
「あのパリでね」
「緯度でね」
「そう思うとよね」
「欧州のそうした国々はね」
 イギリスだけでなくドイツやフランスのかなりの部分もというのです。
「日本よりもね」
「遥かに寒いわね」
「日本の冬も寒いけれど」
「欧州の冬よりはね」
「遥かにましで」
 それでというのです。
「暮らしていくにもね」
「苦労が少ないわね」
「まだね」
「いや、イギリスの冬はね」
 サラはもうそれはというお顔で先生に言いました。 
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