八条学園騒動記
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第六百十一話 普通の人が悪人になってその十一
「これがね」
「そうはいかない」
「技術が必要ね」
「簡単に書いてよくわかってもらう」
「それにはね」
「それこそね」
ダイアナはさらに言った。
「子供でもわかる様な」
「そうそう、簡単なね」
「そんな言葉使うにはね」
「小難しい言葉はもっともらしく書けばいいから」
「適当に言葉を出してね」
「けれどわかりやすい言葉は」
「そうはいかないわね」
ルビーもレミも言った。
「そう考えたら」
「簡単にわかりやすく書く方が難しいわね」
「わからないから馬鹿じゃなくて」
ダイアナは考える顔であった、そのうえでの言葉だった。
「わからない文章を書く方がね」
「馬鹿ね」
「そういうことね」
「そのことがわかったわ、というかね」
「というか?」
「というかっていうと」
「いや、シェークスピアが何故今も生きているか」
彼の作品がというのだ、シェークスピアはエウロパはおろか連合でもマウリアでもサハラでも愛されているからこその言葉だ。
「それがわかったわ」
「わかりやすい」
「人間をはっきりと描いてるからね」
「もう観ればわかる」
「読んでわかるレベルでね」
「だからなのね」
それ故にと言うのだった。
「今も生き残ってるのね」
「若しそれがね」
「わかりにくかったら」
二人も言った。
「残ってないわね」
「絶対にね」
「それこそその時有名でも」
「すぐに消えていたわ」
「もう後は記憶にも残らない」
「そうなっていたわね」
「そうだったと思うわ」
ダイアナはそのレミとルビーに答えた。
「やっぱりわかりやすい」
「もうそれが第一ね」
「何といっても」
「そうよね、小難しい文章とかいらないわ」
ダイアナは言い切った、そうしてだった。
紅茶の最後の残りを飲んだ、そうしてから三人で自分達の仕事場に戻った。紅茶を飲んだ後はそのはっきりした香りと味が心地よかった。
普通の人が悪人になって 完
2021・3・9
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