茶道は無口
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第一章
茶道は無口
小林奈央は茶道の家元の家の娘である、それで通っている部活も茶道部である。
黒髪を後ろで伸ばしていて奇麗に束ねている。穏やかというよりは感情の見られない黒い大きな目で小さな赤い唇はいつも閉じられている。
背は一五〇位で色白で顔は小さく顎が尖っている。色白で雪の様な肌である。
兎に角無口で喋らない、それは茶道の時も同じで。
静々とかつ淡々にお茶を煎れる、そしてだった。
「結構なお手前で」
「はい」
この時にやっと喋る、その彼女を見てクラスでも茶道部でも言うのだった。
「小林さんって喋らないな」
「兎に角な」
「もう無口で」
「静かな雰囲気で」
「付き合いは悪くないけれど」
「一緒に食べたり遊んだりするけれど」
「何かあったら助けてくれるし」
親切ではあるというのだ。
「けれどその時もね」
「手伝うわ、だけだしね」
「有り難うって言ってもええ、だけで」
「こっちが手伝った時はお礼言ってくれるけれど」
「やっぱり有り難う、だけで」
「本当に無口で」
「喋らないのよね」
「あんなに喋らないなんてな」
ここで男子の一人が言った。
「個性か?」
「それだろうな」
「やっぱりな」
「そうした娘なんだろうな」
「まあ世の中無口な人もいるし」
「それだったら」
それならというのだ。
「そうした娘だってことで」
「付き合っていくか」
「友達としてな」
「そうしていくか」
男子生徒達が言ってだった。
女子生徒達もそうして付き合っていった、兎に角奈央は無口だった。
だがやることはやっていてクラスや学校、部活の催しにも参加してそして友達付き合いもあった。別に無口でも社交性がない訳ではなかった。
部活はいつも出ていてそれで後輩達にも丁寧に教えていた、だが。
その教え方はだ、後輩達は言うのだった。
「喋らないでね」
「あれこれ言葉で教えてくれなくて」
「見ていて、だけでね」
「先輩が実践されて」
「私達にやってみて、で」
「やってみたら駄目なところが書かれていて出されて」
それぞれにだ。
「それで終わりだから」
「それの繰り返しで」
「怒られないけれど」
「やってる途中何も言われなくて」
「それで何度も同じ間違い指摘されて」
メモでというのだ。
「気をつけるけれど」
「静かよね」
「何度言ったらわかるんだとかも書かれないけれど」
「淡々とし過ぎていて」
「ちょっとね」
「怖いって言ったら怖い?」
「怒らずに何度も指摘されるから」
そうしてというのだ。
「出来ても褒めてくれないし」
「怒ることも罵ることもなくて」
「感情が一切見えなくて」
「どうもね」
こう言うのだった、そしてだった。
後輩達は奈央の指導をかえって怖がり真剣に受けた、すると。
彼女達の茶道の腕は上がっていった、それを見てだった。
クラスメイト達はこんなことを話した。
「ひょっとして実はな」
「小林さん出来る人かも」
「無口で感情も出さないけれど」
「それでも」
「マシーンみたいだけれど」
それでもというのだ。
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