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石の格

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第三章

 天は顔を顰めさせて夏織に言った。
「聞こえるわよね」
「ええ」
 夏織も顔を顰めさせて答えた。
「私もね」
「そうよね、これはね」
「やっぱりね」
「出るのね」
「幽霊がね」
 話をしていたそれがというのだ。
「そうね」
「いや、お塩とか持って来てよかったわね」
 夏織は心から言った。
「本当に」
「そうよね」
「じゃあね」
「幽霊探すのね」
「ここの何処に出るか」
「それをね」
 二人でこう話してだった。
 周りを見回して少し歩いた、すると。
 大きな岩があった、その上に小さな石が置かれている。そして泣き声は。
 岩から聞こえていた、天はそれを見て隣にいる夏織に話した。
「泣き声はね」
「ここから聞こえてくるわね」
「この岩からね」
「あれっ、幽霊じゃないの?」
 夏織は首を傾げさせて言った。
「それじゃあ」
「岩に幽霊が憑いてるとか」
「それかしら」
「少なくともね」
「この岩からね」
「泣き声聞こえるわね」
「そうよね」
「そうだ」
 岩がここで言ってきた。
「泣いているのはわしだ」
「貴方がなの」
 天は岩のその声に聴き返した。
「そうなの」
「そうだ、言っておくがわしは幽霊ではない」
 岩はこのことは断ってきた。
「れっきとした岩だ」
「そうなの」
「そうだ」 
 まさにというのだ。
「それは言っておく」
「ここに出て来たのは幽霊じゃないのね」
 夏織は考える顔で言った。
「そうなのね」
「左様、わしだ」
 岩は夏織にも答えた。
「わしが泣いている」
「それでどうして泣いているの?」
「わしの上に石があるな」
 岩は夏織に言って来た。
「そうだな」
「ああ、その小さな石ね」
「ここにたまたま来た旅人が何でもないと思って置いた」
 その石をというのだ。
「こんな格下の小石をな」
「格下?」
「そうだ、わしはこの通りの立派な岩だ」
 岩は自分のことも言った。 
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