八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百十二話 年末の来日その二
「もう大丈夫だって思って飲んだら」
「晴れたんですね」
「よくありますよね」
「天気予報も外れますからね」
「そんな時もありますね」
「それで慌てて走ってな」
そうしてというのだ。
「酒抜いて登板したんだよ」
「無茶ですね」
「昔はそんな人いたんですね」
「それで山田さん勝ったんですか?」
「確か無茶苦茶ホームラン打たれてましたね」
このことを言う者もいた、実際に山田久志の被本塁打数は歴代二位である、一位の鈴木啓示は三百勝を達成しているが被本塁打数は五百七十を越えており山田のそれも五百近い。日本シリーズのそれを入れると確実に五百を越える。
「確かに凄い人でしたが」
「ああ、何か凄いらしいな」
「山田さんってホームランバカスカ打たれてたんだよな」
他の生徒達も言った、そのことを。
「シリーズで王さんに逆転サヨナラスリーラン打たれてたしな」
「ペナントでもとんでもない数打たれてたな」
「それじゃあな」
「二日酔いで投げたらな」
「ああ、ホームランは知らないが四点取られた」
二日酔いで投げたその時はだ。
「それでも勝ったけれどな」
「よかったですね」
「阪神だったら四点だとまず負けてましたね」
「今は兎も角昔は貧打線でしたしね」
「伝統的に」
僕も思った、昔の阪神なら負けていたと。今の黄金時代の超強力打線とはそこは全く違っていたのだ。
「四点も取られていたら」
「もうですよね」
「昔の阪神だと負けですね」
「ほぼ確実に」
「そうなっていましたね」
「ああ、それでも勝ってな」
先生もこう言った。
「阪神なら無理でも当時の阪急は打線も強かったからな」
「よかったですね」
「それは運がいいですね」
「二日酔いでも勝った」
「凄いことですね」
「それで走っているのを西本さんも見てな」
当時の半球の監督だった西本幸雄さんがだ。
「それで山田は頑張ったって言ってたんだよ」
「努力して走ってですか」
「それで勝ったから」
「それで、ですか」
「そうだ、それで二日酔いだったらな」
それならというのだ。
「まずは走れ」
「それでお酒抜いて」
「それで、ですか」
「そうしてですか」
「部活を本格的にやる」
「そうするんですね」
「ああ、そうするぞ」
こう言ってそうしてだった。
僕達は先生と一緒にランニングをはじめた、寒い外を走るけれどその中でもジャージの上にウエアを着て走るとだった。
汗をかいてお酒が抜けてきた、それで皆言った。
「お酒抜けてきたな」
「ああ、どんどんな」
「汗かいてな」
「最初は頭痛くてな」
「身体もだるかったけれど」
「それがな」
「どんどん抜けて来てるな」
こう口々に言っていた。
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