ロックマンX~Vermilion Warrior~
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Mission:5 鋼鉄のマッシモ
ジャンゴーを倒し、総督府を取り戻したエックスとゼロはジャンゴーとの戦闘でのダメージを直し、司令室に集まったのだが。
「どうにか基地を取り戻しはしたが…」
「確かに大した設備だが、俺達だけではな」
「ああ、はっきり言って宝の持ち腐れって奴じゃねえの?」
身も蓋もないスパイダーの言葉だが、事実なだけに誰も言い返せない。
「そうだ。だからここから北西にあるティアナ島にリベリオンに捕らわれたレジスタンスがいる。」
「捕虜収容所…と言ったところか」
[もしかして、そこに捕らわれているレジスタンスの人達を助け出して仲間にしようって言うの?]
「そうだ。特に助け出して欲しいのは、システムオペレータのナナだ。彼女がいればこの基地の機能を復活させることが出来る」
「ちょっと待った。サイバーエルフのチビの力でどうにかならないのか?」
サイバーエルフのソニアに基地のサイバースペースにダイブしてもらうことで基地機能の復活は出来ないのだろうか?
[うーん、無理だと思うよ。私がいたハンターベースのサイバースペースとかとは色々と勝手が違うもん。情報一つ引っ張り出すのも苦労するから基地機能にアクセスはちょっと…]
ようするにギガンティスとハンターベースのサイバースペースは勝手が違いすぎてどうにもならないと言うことらしい。
「やはり専門のレプリロイドがいないと駄目か、分かった…行こう」
エックスがそう言うと、早速ティアナ島に向かうことになり、ティアナ島に乗り込んだエックス達は慎重に通路を進んでいく。
「それにしてもアルの奴、命令だけして俺達をこき使うつもりだぜ。それもタダで」
「アルは戦略タイプのレプリロイドだからな」
「戦闘はお前の方が得意だろう。タダ働きが嫌ならアルに言ってみればいい…おい、エックス…」
「え?」
「あいつは…ソニアはどこに消えた?」
ゼロの言葉に慌てて周囲を見渡すと、ソニアの姿がどこにもない。
「もしかして、あのサイバーエルフ…迷子になっちまったんじゃねえの?」
「よりにもよって敵地でか…どうして似なくてもいい部分は似るんだ…」
スパイダーの呆れたような声にゼロは似なくてもいい部分が後輩に似てしまった後輩達の愛娘に頭痛を感じた。
[わ、わ、わ~!!]
「侵入者発見!侵入者発見!!」
ソニアは先に進んで見つかってしまいプレオン・チェイサーに追いかけられている。
[あ!?か、壁…どうしよう…]
「侵入者排除!]
[こ、来ないでよ!]
頭を庇いながら縮こまった瞬間であった。
「でりゃああああ!!」
「!?」
プレオン・チェイサーが背後の緑のアーマーを纏った大柄の青年が手に持ったビームランサーで横一文字に両断された。
[え?]
「ふう…ふう…良かった、間に合って。大丈夫か?」
[あ、ありがとう…助けてくれて…]
息を整えると、優しげな口調で言う青年に安心してソニアは礼を言う。
「いや、俺が見つけたのは本当に偶然だったんだよ」
青年がソニアを見つけたのは本当に偶然だった。
ある人物を助けに来たのはいいのだが、慣れない場所で右も左も分からない状況で途方に暮れていたところを偶然プレオン・チェイサーに追いかけられていたソニアを発見したのだ。
[本当にありがとう!私はソニア、あなたの名前は?]
「俺?俺は…マッシモだ!鋼鉄のマッシモと呼んでくれ!いや、マッシモでいい…かな?」
[私に聞かれても…うん、マッシモね。ありがとうマッシモ。ねえ、マッシモは何しにここに来たの?]
「ここに…俺の知り合いが囚われているんだ。だから助けに来たんだ。と言ってもどうやって先に進めばいいのか分からないから全く成果は出てないんだけど…」
[もしかして、リベリオンと敵対してる?]
「勿論だ。俺の知り合いを捕らえたのはリベリオンだ。そんな奴らに従う理由はない(怖いのもあるけど)」
[そっか…ならお父さん達と一緒に戦ってよ!!]
「お父さん?」
「いた!大丈夫かソニア!?」
騒動を聞きつけたエックス達が駆け寄った。
「あれが君の父親かい?(なるほど、父親代わりと言うことか)」
マッシモはエックスを見て父親代わりなのだと理解したようだ。
[うん、そうだよ!]
「敵地に来て早々に何をしてるんだお前は?」
呆れたように聞いてくるゼロにソニアは頭を下げて謝罪した。
[ごめんなさい、プレオンに追い掛けられて、マッシモが助けてくれたの]
「マッシモ?」
エックス達の視線がマッシモに集中する。
自分に集中する視線に思わずたじろぐマッシモ。
「マッシモって、ギガンティスの勇者マッシモか?」
「(ただ者ではなさそうだが、何だこの臆病そうな態度は?)」
優れた戦士の勘でマッシモの実力を見抜くゼロ。
確かに実力は勇者と呼ばれるに相応しいかもしれないが、この臆病そうな態度はなんだろう。
「ソニアを助けてくれてありがとう。マッシモはどうしてここに?」
娘であるソニアを助けてくれたマッシモにエックスは警戒を解いており、好意的な態度でマッシモに接する。
「え?あ、ああ、決まっているだろう。ここに囚われている知り合いと仲間を助けるためだ!」
[ねえ、マッシモに仲間になってもらおうよ]
「え?まあ、俺は構わないけど」
仲間は1人でも多い方が良いし、何より娘を助けてくれたのだから拒む理由がない。
[やったー!決まりだね!]
「おい、いいのかよゼロ?」
「エックス達が決めたのなら決定事項だ。諦めろ、それに今は人手が欲しい時だろ」
こうなったら何度言っても聞かないからゼロは既に諦めの境地に達している。
そしてマッシモを仲間に加えた一行は先へと進む。
「っ…みんな、敵だ!」
プレオン・チェイサーとガルプファーが出現し、全員が武器を構えた。
「俺に任せろ!おりゃああああ!!」
プレオン・チェイサーをランサーで容易く縦一文字に両断するマッシモ。
「す、凄いパワーだ!パワーならゼロに匹敵…ん?」
先程の一撃にパワーが入りすぎたのか、床に亀裂が入って浸水した。
[か、海水が!みんな退いて!!]
「わ、分かった!頼む!」
ソニアが慌てて凍結弾を放って海水を凍らせることで事なきを得た。
「やはりここでは全力で戦えんな。」
「だな、俺のカードボムはともかく、あんたらは光学兵器だからな。武器の出力落としとけよ」
エックス達は即座に武器の出力を落とし、この威力ならば少なくとも壁や床に穴が空くことはないはず。
「………」
[まあまあ、ここでの光学兵器の使用は禁物だと分かったんだし、結果オーライだよ。ね?]
「フォローありがとう……」
落ち込んでるマッシモにソニアが慌ててフォローするのであった。
時折現れるメカニロイドやプレオンを返り討ちにしながらデプス4海底プリズン・メインゲートに入った一行は、警備であるドーベルワンとビッグモンキーを発見した。
[うん、ここならバスターとかの出力を最大にしながらでも大丈夫そう。ビッグモンキーは重装甲タイプだから……マッシモ、何か一気に殲滅出来そうなのある?]
「あ、ああ…あるには…あるけど…」
[なら決まりだね、ビッグモンキーにそれをぶちかましてやりなよ。それじゃあ行っくよ!]
「あっ!こら!!」
「あの馬鹿チビめ…」
突撃するソニアに慌てるエックス。
頭を押さえながらゼロもZセイバーを抜いて突撃する。
「スパイダー!俺達も続くぞ!」
「へいへい」
腕をサンダーバスターに変形させたエックスと溜め息を吐きながらスパイダーも警備兵に突撃していく。
「よし…エネルギーチャージ開始!行くぞお!!」
マッシモのアーマーの背部の翼に高密度のエネルギーが収束されていく。
[ゼロ!お父さん!スパイダー!あいつを転ばせて!]
「任せておけ、零式波動斬!!」
「ああっ!」
「よーし、ぶっ倒れな!」
セイバーを地面に突き立て、それによって生じた衝撃波でビッグモンキーの体勢を崩す。
そしてエックスとスパイダーが追撃を放って転ばせた。
[今だよ!ぶちかましちゃえマッシモ!!]
「ベルセルクチャージ!発射!!」
マッシモの翼から発射された高出力のレーザーがビッグモンキーの装甲を容易く貫いて粉砕した。
「ヒュ~♪大した威力じゃないか」
ベルセルクチャージの破壊力に思わず口笛を吹くスパイダー。
「ふっはははは!どうだ、師匠直伝の技は!!」
「師匠?」
「あ、いや…何でもない…」
マッシモの言葉にゼロが疑問符を浮かべていたが、即座に誤魔化すマッシモ。
[それじゃあ、私とお父さんとゼロがイーストブロック。スパイダーとマッシモがウエストブロック。それぞれのブロックにいるレジスタンスのメンバーを助けようよ]
「そうだな、二手に分かれた方が効率が良い。スパイダー、マッシモ。任せた」
「へいへい」
エックス達が二手に分かれて、囚われたレジスタンスの捕虜達を解放していく。
そして解放したレジスタンスを基地に転送すると、エックス達はレジスタンスのメンバーを助けた際に得た情報を言う。
[レジスタンスのメンバーに化けたドーベルワンの情報によると、ナナって人ははもっと下のダークルームの方で強制労働させられてるらしいね。で、先に行くためのカードキーがこれ。これはお父さんが持っててね]
「ああ、分かった」
ソニアからカードキーを受け取り、エックス達はナナを救出するためにダークルームを目指す。
そしてリフトで下の階に行くと、どんどん暗くなっていく。
[うわあ、真っ暗だね。]
「センサーで敵の位置がある程度分かるから問題ないけど、ゼロとマッシモは一応気を付けてくれ」
遠距離からの攻撃が主であるエックスとスパイダーはともかく、近接戦闘が主となるゼロとマッシモはこの暗闇ではかなり厳しい戦闘を強いられることになるだろう。
「ふん、この程度の暗闇など大したことはない。これくらいは部隊制があった頃は何度もあった」
[ゼロは0部隊の隊長さんだったもんね。この収容所のルートは調べておいたから安心して進めるよ。みんな、ついて来て]
ソニアがこの施設のサイバースペースにダイブし、ルートを調べておいてくれたから比較的迷うことなく進むことが出来た。
そしてダークルームに辿り着き、そこには拘束された桃色の髪が特徴的な少女がいた。
[モニターで見た人と特徴が一致するよ]
「彼女がナナのようだな」
「だが、見張りがいる…蹴散らすぞ」
「おう」
こちらに気付いたナナの監視のプレオン達がエックス達…特にマッシモを見ると動揺した。
「ん…?侵入者か!?お前はマッシモ!?死に損ないめ、こいつは渡さんぞ!」
「彼女は返してもらうぞ!!喰らえ!!」
サンダーバスターのショットを喰らわせてプレオン・ポッドに大ダメージを与える。
「零式突破!!」
ナナの近くにいたプレオン・ポッドもゼロがセイバーによる突きで吹き飛ばす。
凍結弾の発射準備に入っていたプレオンポッドに強烈な突きを喰らわせる。
プレオンの重装甲では倒すまでには到らないが、凍結弾発射は阻止出来た。
「あのタイプは確か凍結弾を発射するタイプだったっけ…?なら」
「発射前に転ばせるんだよ!フォーチュンカード…フラッシュ!!」
エックスとゼロに続いてスパイダーもプレオン・ポッドに攻撃を喰らわせて転倒させる。
「そらあっ!!」
マッシモは雷属性の耐性を持つプレオン・スパークを一刀両断する。
「よしっ!チャージショット!!」
サンダーバスターのチャージショットにより、雷属性を弱点とする残ったプレオン・ポッドを一網打尽にし、エックス達は拘束されているレプリロイド…ナナの元に向かうのだった。
「システムオペレータのナナだね?俺はエックス。君を助けに来た」
[大丈夫?今外してあげるからね!]
早速ソニアがパネルを操作してナナの拘束を解除した。
「あなた達が侵入してきたのが分かったので、警備システムに細工して、警報が鳴らないようにしてたんです。」
[ああ、だから全然リベリオンの兵士が見当たらないんだね。ありがとうナナ、助かったよ]
どうやらナナのおかげで自分達は最小限の負担でダークルームまで来ることが出来たようだ。
「いえ…拘束されていた私にはこれくらいのことしか出来ませんでした…私…捕まって…従わないと捕虜の人達を殺すって…それで…」
「人質か…イレギュラーめ…」
それを聞いて吐き捨てるように言うゼロに全員も同じ気持ちなのか不愉快そうに顔を顰めていた。
「ナナ、もう大丈夫だ。安心してくれ、俺達がみんなを助ける」
[そうだよ!後は私達に任せて!]
「よし、それじゃあナナを苦しめた悪者の所に行くとしようかい」
「私はここに残って、皆さんのサポートをします」
「何だと?」
予想外の言葉に全員が目を見開いた。
「…許せないんです…私に皆さんのお手伝いをさせて下さい!」
彼女の瞳に宿る深い怒りを見たソニアはエックスを見遣る。
[ねえ、お父さん。私がここに残ってナナを守るよ]
「え?」
ナナの言葉以上に予想外の言葉にエックスの目が見開かれた。
「だってナナは非戦闘型のレプリロイドなんだよ。誰かが守らないといけないじゃない、私なら戦えるから大丈夫だよ」
「いや、正論なんだが…」
ソニアの言葉に同意はしつつも渋るエックス。
確かにソニアは戦える力はあるが、プレオン系等の敵を複数相手にすることになったらまず敵わない。
しかし、ソニアの言う通りナナを1人にするわけにはいかないためにエックスは溜め息を吐きながら口を開いた。
「仕方ない…ソニアだけに任せるわけにはいないから俺がここに残る。ゼロ達は先に行っててくれないか?」
「ああ、分かった。ナナを任せたぞエックス、ソニア。」
リーダーであったエックスが一時抜けることでサブリーダーの位置にいたゼロが代わりとなって進もうとした時、マッシモが躊躇いながら口を開いた。
「あ…そうだ。ナナさん…ここにマッシモが…俺が捕まってるって記録はないかい?」
[へ?どういうこと?]
マッシモの問いに疑問符を浮かべるソニアだが、ナナは合点がいったのか口を開いた。
「マッシモ…鋼鉄のマッシモね。確かに、10日前にマッシモが捕らえられて、最下層の独房に入れられたって記録があるわ。でも、リベリオンへの協力を拒み続けて、その5日後に処刑されたって記録されています」
「死んだ…?」
愕然となるマッシモにスパイダーが不愉快そうに口を開いた。
「はあ?誰だか知らねえが、人違いで殺されたってことか。奴ら酷えことしやがる。」
「私はここでリベリオンの情報を集めてみます。皆さんはシルバー・ホーンドの撃破をお願いします」
「分かった。何かを発見したら通信する。」
ゼロ達がダークルームを後にし、エックスはソニアとナナに気を配りながらも警戒を続ける。
「エックスさん、すみませんでした。我が儘を言ってしまって…」
「ここに残って俺達をサポートすることにか?」
「はい…私、本当に許せなかったんです。私の目の前で、仲間を殺したシルバー・ホーンドのことが…囚われてから、あなた達に救われるまでのことを…私は決してあの日々を忘れられない…許せない」
「そうか…」
[大丈夫だよ、ナナ!お父さんやみんなは凄く強いんだから絶対にそいつをやっつけてくれるよ!]
「ありがとう…」
ソニアの真っ直ぐな言葉に幾分救われたのかナナが初めて笑みを浮かべた。
ナナの言葉を聞いていたエックスもホーンドへの怒りを燃やしている。
[そう言えばお父さん、マッシモの代わりに捕まっちゃった人ってそんなにマッシモに似てるのかな?]
「…そうなんじゃないかな?」
「あの、マッシモさんのことなんですけど…」
スパイダーからの通信を受けて、扉のロックを解除するために端末を操作していたナナが口を開く。
「[?]」
「あの方、本物の鋼鉄のマッシモではないかもしれません。データベースにあった。マッシモさんの記録とはちょっと違うのです。何か事情があるのだと思って黙っていましたけど…」
「そう言えば、あの時、ベルセルクチャージを放った後、“師匠直伝の技”と言っていたな。もしかしたら…後継機か何かだろうか?」
[でも、マッシモは私を助けてくれた良い人だよ。悪い人じゃないよ絶対に]
確信を持ったように言うソニアにエックスとナナは少し目を見開いた後に微笑んだ。
暗いダークルームだが、ほんの少しだけ雰囲気が優しくなったような気がする。
一方、エックス達の話題となっていたマッシモは扉のロックが開くまでの間、最下層の独房にいる彼の元に来ていたのだが…。
「あ…ああ…」
目の前に映る現実を直視出来ず、思わず後退するマッシモ。
「お前か…」
「マッシモ師匠!何てことだ…何て…」
あの強く気高い師が四肢をもがれ、死にかけの状態で磔にされていた。
「奴らの協力を拒み続けていたら…このザマだ。アーマーをお前に託しておいてよかった…」
「違う!俺はあなたみたいに強くない!このアーマーを身に纏う資格があるのは…“鋼鉄のマッシモ”を名乗る資格があるのは…あなただけだ!俺は…“マッシモ”にはなれない…っ!!」
「お前は…充分に…強い…それに気付いていないだけだ…お前は…マッシモに…それ以上になれる…だから…今は…その…アー、マーを…」
「師匠…?マッシモ師匠!!」
目の前の師のエネルギー反応が消えたことにマッシモは悲痛な叫びを上げた。
そして場所はダークルームに戻り、異変に気付いたエックスが身構えると大型レプリロイドがダークルームに現れた。
「……っ」
ホーンドの姿を見たナナが思わず体を震わせた。
「お前達か…人の庭で好き勝手しているのは…」
エックスは即座にホーンドの情報を引き出す。
あのジャンゴーと同じ、ラグラノ廃墟でカスタマイズされた1体だろう。
「シルバー・ホーンド…あいつもリベリオン幹部か…」
「言ったはずだ。余計な真似をしたら捕虜を殺すとな。しかし、捕虜は逃がされたからお前を痛めつけてやるとするか」
「ふざけるな!罪のない者を私欲のために殺すイレギュラーであるお前を俺は許さない!!」
サンダーバスターを構えてショットを当てるエックス。
「チッ」
氷属性のホーンドにはサンダーバスターの一撃が効いたのか少しだけ表情を歪めた。
「(馬鹿な…弱点の属性を当てたのにあの程度のダメージか!?)」
弱点属性の攻撃を受けても大したダメージを受けていないようなので見た目通りの防御力の持ち主のようだ。
「確かに雷には弱いが…この程度の攻撃では俺は倒せん」
「(俺1人でどうにか出来る相手じゃない…ここはゼロ達と合流して迎え撃つしかないな)」
長年の戦闘経験の賜物か、自分の不利を即座に理解してエックスにゼロ達との合流を決断させた。
「ソニア!」
[OK!!]
エックスの言いたいことを理解したのか、ソニアはナナを見た目に似合わぬ力で持ち上げるとダークルームを飛び出し、エックスもまたダークルームを抜け出す。
「逃がさんぞ!」
当然ホーンドも追いかけてくるが、それくらいは予想済みであるエックス達。
[喰らえ!]
凍結弾を放ってホーンドの足を凍らせ、エックスがチャージを終えたサンダーバスターを構えた。
「チャージショット!!」
フルチャージの一撃を受けたホーンドが大きく仰け反り、その隙にエックス達はホーンドとの距離を離し、ゼロ達と合流するために通信を繋いだ。
エックス達から通信を受けたゼロ達はアクアコロシアムと呼ばれる場所にいた。
「エックス達からの通信によるともう間もなく来るだろう。」
「ああ…マッシモ、行けるか?」
どこか調子が悪そうなマッシモを見遣りながら尋ねるスパイダー。
「あ、ああ…」
師匠の死を目の当たりにしたせいで少々不安定な状態だが、ランサーを握り締めるマッシモ。
徐々に近づいてくるエネルギー反応に全員が気を引き締めた。
「来るぞ!」
ゼロが叫んだのと同時にエックス達とホーンドがアクアコロシアムに入ってきた。
「へえ、こいつがシルバー・ホーンド…思っていたよりでかいな」
「ふん、図体がでかい分斬り応えがある」
「貴様ら…ここの捕虜共を出した挙げ句随分と好き勝手してくれたな…全員スクラップにしてくれる!」
「好き勝手ねえ、てめえが言えることかよ!」
スパイダーが先制攻撃を数発喰らわせるが、ホーンドの重装甲にはろくな傷が付かない。
「そらっ!!」
巨大な拳を床に叩きつけると、極低温の衝撃波がエックスを襲う。
「うっ!?」
咄嗟に有効範囲から逃れたエックスだが、アーマーの一部が凍結した。
「エックス!」
「なるほどな、こんな水だらけの所だから当然あいつも氷属性か。ならメガサンダーを喰らいやがれ!」
ゼロがセイバーでエックスを拘束している氷を砕くと、スパイダーは雷属性のエレメントボムであるメガサンダーを投擲してホーンドにダメージを与える。
「ありがとう、助かったよ。サンダーバスターでは大したダメージは与えられない…なら!ハイパーモード・Xファイア!!」
エックスはハイパーモードを発動し、変化したコレダーを構えて突撃する。
「ぬうっ!?」
射撃型のエックスが格闘戦を挑んでくることにホーンドは驚き、コレダーによる一撃をまともに受ける。
「Xコレダー!!」
「ぐうっ!」
弱点属性ではないが、ハイパーモードで出力が大幅に上がっていることもあり、サンダーバスターよりもダメージを与えられている。
「行くぞマッシモ!」
「お、おう!」
エックスに続き、ゼロとマッシモもセイバーとランサーを構えてホーンドに攻撃する。
「零式烈斬!!」
「そらあああっ!!」
ゼロの連撃とマッシモの渾身の一撃によってホーンドの重装甲に浅くない傷を負わせる。
「離れてろお前ら!フォーチューンカード…トライカード!!」
カードスリットから3属性のカードを放つ。
氷属性のカードは効かないが、炎属性と雷属性のカードがホーンドにダメージを与える。
「このガキ共め!タイダルウェーブ!!」
ホーンドが大きくジャンプし、振動を起こしながら着地するとアクアコロシアムの水が大津波を起こすと全員が大津波に飲まれる。
壁に叩きつけられるが、全身や武器、部屋全体が水浸しの状態になり、これでは雷のエレメント系武器が使えない。
「まずはお前からだ!踏み潰してやる!!」
ホーンドは倒れているナナを踏み潰そうとする。
「止めろ!」
「どけっ!」
阻止しようとするエックスを弾き飛ばして、ホーンドがナナに迫るが…。
「ハイパーモード・ブラックゼロ!!零式波動斬!!」
ゼロが間に入って地面に勢い良くセイバーを突き刺して衝撃波を繰り出した。
「何っ!?」
ハイパーモードで強化されたゼロのパワーはホーンドの巨体すら揺るがせる。
「零式突破!!」
その隙に強烈な突きを浴びせてホーンドを吹き飛ばして尻餅を着かせる。
「俺はイレギュラーハンターだ。俺の前で好きにはさせんぞイレギュラー!!」
「ゼロに続くんだ!チャージコレダー!!」
「こいつでくたばりな!ハイパーモード・トリックスター!フォーチューンカード…ストレート!!」
エックスがチャージコレダーをホーンドに叩き込み、直後にハイパーモードを発動したスパイダーが追撃でカードを連射する。
「舐めるな!アビスプレッシャー!!」
ハイパーモード状態のエックス達の猛攻を耐えたホーンドは、頭部の砲門を向けて固定すると、強烈な砲撃をお見舞いした。
「ぐっ!!」
この中で防御力に秀でているエックスが前に出て防いだが、あまりの威力に耐えられず吹き飛ばされてしまう。
「マッシモ!」
しかしホーンドが見せた大きな隙を見逃さないスパイダーが叫んだ。
「!?」
「うおおおお!!」
大きく振りかぶったランサーでホーンドの体を斬り裂き、深い裂傷を刻む。
「はあ…はあ…」
「くっ…ん?お前はマッシモ?いや、違うか。あの弱っちいマッシモならこの俺が処刑してやったからな」
「…今、何て言った?マッシモが弱い?マッシモが弱いだとお!?」
「弱い弱い。話にならんよ。リベリオンへの協力を拒み続けるからこの俺が引き裂いてやったよプチプチとな…フハハハハハハハハハハ…ぐおっ!?」
笑った次の瞬間、勢いよくホーンドの巨体が壁に叩きつけられた。
マッシモがホーンドを殴り飛ばしたのだ。
「マッシモが弱い…?マッシモが弱いだと!?ふざけるなぁっ!!」
師を侮辱されて激昂したマッシモがホーンドへと迫る。
「鋼鉄のマッシモはお前のような、弱い者を力でねじ伏せるような奴に絶対に負けはしない!」
「面白い。まずはお前からバラバラにしてやる!!」
巨大なホーンドの拳がマッシモに迫るが、咄嗟に屈んでかわし、逆にホーンドの胴体に拳を叩き込んだ。
「がっ!!」
「どりゃああああ!!」
今までの臆病さが嘘のようにランサーを巧みに扱い、ホーンドを圧倒していく。
「凄い…あれがマッシモの実力なのか…」
[マッシモは偽物なんかじゃないよ。優しくて格好良い勇者だよ]
師を想って激怒するマッシモは優しさと力を併せ持った本物の勇者のように思える。
「パワー全開!行くぞーーー!!ハイパーモード・ダイモニオン!!」
黄金のアーマーを身に纏うマッシモがハイパーモード・ダイモニオンを発動したことで攻撃力と防御力が補強されて、よりホーンドを追い詰めていく。
「ば、馬鹿な。俺は選ばれたレプリロイドだ!こんな…こんな奴などに!」
現実を認められずにマッシモから距離を取り、アビスプレッシャーを放とうとするホーンドだが、マッシモは既にその攻撃の弱点を見切っていた。
「その攻撃の弱点は!!」
放たれる直前で勢いよくジャンプし、がら空きになった背中にランサーの一閃を見舞う。
「があああ!?」
「放つ際に、頭部を前方に向けなければならない。しかも威力故に反動が大きいために、体を固定しなければならないために咄嗟の行動が出来ない。」
「ぐ、うう…」
「お前はもう終わりだ…地獄で…お前が殺した師匠とレジスタンス達に詫びてこい!エネルギーチャージ開始!!」
マッシモのアーマーの背部の翼に通常時とは比較にならないエネルギーが収束していく。
「チャージなどさせるか!!」
ベルセルクチャージのエネルギーチャージを妨害しようとするホーンドだが。
「残念!そうはいかないんだな!フォーチュンカード…ストレートフラッシュ!!」
「零式…兜割!!」
「チャージコレダー!!」
マッシモを援護すべく、エックス達がホーンドにそれぞれの攻撃を叩き込む。
スパイダーのストレートフラッシュとゼロの零式兜割、エックスのチャージコレダーがホーンドを大きく後退させて、全身に裂傷を刻ませた。
「パワー全開!ベルセルクチャージ!!」
仲間の援護を受け、マッシモの翼から放たれた最大出力の高出力レーザーがホーンドを粉砕した。
「…………」
それを見ていたナナは思わず熱い物が込み上げてくるのを抑えられなかった。
ホーンドによって虐げられていた地獄のような日々がようやく終わりを告げた。
[やったー!やったねマッシモ!流石勇者様だね!!]
「違うんだ…俺は違う……昔、ある男がいた。」
「マッシモ…?」
セイバーをバックパックに収めたゼロがマッシモに振り返る。
「男は、戦闘型として生まれたにも関わらず、臆病で弱い自分が嫌で強くなりたいと…有名な戦士…マッシモの元を訪れた…マッシモはその力で弱い者の為に戦う英雄だった…俺は…俺は師匠に…あの人みたいになりたかった!マッシモ師匠みたいに強くなりたかったんだ!!だが、師匠は死んでしまった……俺はどうすれば…」
「まあ、あれだ。リベリオンみたいな連中がいる限り、勇者マッシモの弟子である鋼鉄のマッシモはその意志を継いで戦い続ける。そういうことだろうマッシモ?」
「まだまだリベリオンの力は強大だ。リベリオンがその力で弱き者達を蹂躙し続けるのなら、お前は勇者マッシモの意志を継いでいかなければならない。」
「鋼鉄のマッシモ。俺達と共に戦ってくれるか?」
シルバー・ホーンドを撃破したエックス達。
そして勇者マッシモの弟子、鋼鉄のマッシモが仲間になった。
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