疥癬に苦しんで
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第二章
自分の前に連れて来られたモジョを見た、そのうえで話した。
「この子をですね」
「よくこちらに連れて来てくれました」
「あまりにも酷い疥癬でして」
「若しです」
「貴方が連れて来てくれないと」
「危なかったです、ですが」
それでもとだ、スタッフの人達は彼に話した。
「よく連れて来てくれました」
「ボロボロではっきり言って醜い」
「そんな様子でしたが」
「よくこの子を助けてくれました」
「そうした子を」
「外見はすぐに治れば戻ります」
ワーグナーはスタッフにこう答えた。
「それだけです、ですが命はです」
「そうはいかないですか」
「だからですか」
「それで、ですか」
「助けてくれましたか」
「獣医ではないので治療は出来ないですが」
それでもというのだ。
「私は私の出来る限りのことをしたいので」
「それで、ですか」
「助けてくれたんですね」
「そうしてくれたんですね」
「はい、じゃあモジョ今から一緒に暮らそう」
「ワンワン」
モジョは自分に優しい声をかけてくれた彼に尻尾を振って応えた、そうして彼のところに行った。するとペネロペもだった。
モジョのところに来た、すると二匹はお互い尻尾を振って向かい合った。その二匹を笑顔で見てだった。
ワーグナーは二匹を連れて家に帰った、スタッフの人達はその彼を見送ってから話した。
「あんな人がいるなんて」
「あれだけ酷い疥癬で醜くなっていた子を偏見なく助けるなんて」
「外見は治療すれば助かる」
「そう言ってですから」
「本当に素晴らしいですね」
「人間ああした人になりたいですね」
「かなり難しいですが」
それでもというのだ。
「ああした人になって欲しいです」
「そうですね」
「そしてあの人なら」
「モジョを幸せにしてくれます」
「ペネロペもそうしたんですから」
「あの人ならそうしてくれますね」
ワーグナーを見送ってから話した、その後ろ姿に神々しいまでの光も見たからこそ。それはまるで天使の様であったと彼等は後で多くの人に話した。
疥癬に苦しんで 完
2021・4・21
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