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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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SAO編ーアインクラッド編ー
  05.圏内事件

 
前書き
第5話投稿!!!

あり得ない殺人.......その方法とは? 

 


二〇二四年三月六日 第五十六層・パニ

攻略組が次の層の攻略のためにこの層の洞窟へと集められる。

「フィールドボスを村の中に誘い込みます!」

指揮をとる少女がとんでもないことを口にする。攻略組のプレーヤーもざわつく。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!そんなことしたら村の人が」

黒衣のコートを身に纏い、黒い片手剣を背負う少年が声をあげる。

「それが狙いです。ボスがNPCを殺してる間にボスを攻撃、殲滅します」

「NPCは岩や木オブジェクトとは違う。彼らは......」

キリトが言葉を言う前に指揮をとる少女が口を開く。

「生きている....とでも」

「あれは単なるオブジェクトです。例え殺されようとまたリポップするのだから」

「俺はその考えには従えない」

「俺もキリトの意見に賛成だ。......最近のあんたはやりすぎだ」

「今回の作戦は私、《血盟騎士団》副団長のアスナが指揮をとることになっています。私の言う事には従ってもらいます」

そう、彼女は《血盟騎士団》副団長の《閃光》の名を持つアスナ。第一層の攻略の時、一緒に戦ったパーティーの一人だ。




作戦会議が終わるとすぐに俺とキリトは洞窟から立ち去る。

「よう、またもめたな」

後ろから低い男の声。振り返るとそこには、ガタイのいいこげ茶の肌色をした男。エギルだ。

「エギルか」

「お前らと副団長さんはどうしていつもああなんだ」

「きっと気が合わないんだろうな」

「彼女は攻略は少し荒っぽいからな。特に最近はな」

キリトは第一層の攻略終了時、アスナに、君は強くなる。ギルドに誘われたら断るな、と、言ったらしい。

「あぁ、は言ったけどまさかトップギルドで攻略の鬼になるとはな」




二〇二四年四月十一日 第五十九層・ダナタ

「はぁぁぁ〜、眠ぃな」

(この気候じゃ、迷宮区に潜る気にもなれないな)

ぶらぶらと歩いていると崩れた石の壁の上に座るキリトの姿が。

「おう、キリトじゃねぇか」

「シュウ、こんなところでなにしてるんだ?迷宮区に潜ったんじゃ」

「こんないい天気で迷宮区に潜るなんてもったいねぇよ。それよりお前は?」

キリトが顔で後ろを指す。そこには、木の影で寝る血盟騎士団副団長、アスナの姿が。

「なんで、ここで寝てるんだよ」

キリトから説明される。アスナが寝てしまって、キリトがそれをガードしてると。

「全く、アスナさんもぐっすりで」

ぐっすり眠るアスナは、やはり綺麗で美しい。普通に攻略の鬼じゃなければもっといいんだけどな。

「なぁ、キリト........久しぶりに試さないか」

「やる気か........。まだ、起きそうにもないしやるか」

俺とキリトは互いに向き合う。
そして、メインメニューを開き、デュエル、《初撃決着モード》をキリトに申し込む。

「それじゃあ、始めるぞ」

「行くぞ!!」




「「はぁ、はぁ」」

俺とキリトのデュエルは、全く決着がつかず日が落ちかけるまで続いた。

「くしゅん」

可愛らしいクシャミが聞こえたと思うと今まで寝ていたアスナが動く。どうやら起きたようだ。アスナはあたりを一旦見渡したあと、こちらを見る。

「えっ、なっ!な!」

「おはよう、よく眠れた」

「遅いお目覚めだったね」

アスナが急に立ち上がり、細剣に手をかける。俺とキリトは、デュエルを中断し、崩れた石の壁に隠れる。アスナは細剣を抜こうとするが、それを押し殺すように震えている。

「.......ご飯一回」

「「はぁ?」」

「ご飯、なんでもいくらでも一回おごる。それでチャラ。どう?」




第五十七層・マーテン

とあるレストランに俺、キリト、アスナは訪れた。周りの視線が俺たちに向けられる。

「血盟騎士団のアスナじゃないか?」

「あれが《閃光》の」

「あの二人の黒い奴って」

というような周りの声が耳に届く。

「あの、なんていうか」

アスナは小さな声で話し出す。

「今日はありがとう。......ガードしてくれて」

「あぁ、いや」

「まぁ、俺たちはデュエルしてたけどな」

「街の中は安全な圏内だから誰かに攻撃されたりPKされることはないけど.......眠っている間だけは別だし」

「あぁ、デュエルを悪用した睡眠PK。普通デュエルは腕試しに行われるものだけど、その最中は圏内でもHPがなくなって、ダメージを受けることになるから」

「眠っている相手にデュエルを申し込んで相手の指を勝手に動かしてOKボタンクリック。そのまま一方的に攻撃を。.......なんて事件が実際起きたし。.......だからその......ありがと」

「ま、まぁそのどういたしまして」

「いえいえ」

話すことがなくなった。だが、この沈黙はすぐに破られた。破ったのは俺でもキリトでもアスナでもない。

「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

女性の叫び声だ。

俺たちはレストランから飛び出し、広場に向かう。すると、そこにはロープに吊るされる甲冑の男。その体には短槍が突き刺さっている。

「早く抜け!!!」

キリトが叫ぶも、甲冑の男は苦しみだす。どうやら痛みで抜けないようだ。

「君は下で受け止めて!」

アスナが建物の中に入って行く。

「わかった!」

キリトが走る。

「待ってろ!!」

甲冑の男はさらに苦しみ出す。

「クッソ!!間に合え!!」

少し距離をとり、甲冑の男が吊るされる建物の壁に向け走る。

体術《壁走り(ウォールラン)》
壁を走り、甲冑の男の元まで走る。

(間に合え!!)

手を伸ばす.......が、その時にはもう遅かった。
甲冑の男は呻き声をあげながら、俺の目の前で光の欠片となり消滅する。

(クッソ!間に合わなかった)

「みんな!デュエルの【Winner】表示を探せ!!」

(そうか!圏内で殺せる方法はデュエルしかない)

「中には誰もいないわ!」

野次馬に集まったプレーヤーをみるが誰にも【Winner】表示は存在しない。ロープを確認するが普通のロープだ。だとすると.......問題は短槍。

「どういうことだ。これは」

「普通に考えればデュエルの相手が被害者の胸に槍を突き刺して、ロープを首に引っ掛けて窓から突き落とした。ってことになるのかしら」

「でも、【Winner】表示はどこにも出なかった」

「ありえないわ。圏内でダメージを与えるなんて、デュエル以外の方法は」

外がざわつく。

「どちらにせよ、このまま放置はできないわ」

「そうだな」

「もし圏内PK技を誰かが発見したのだとしたら外だけでなく、街の中にいても危険ってことになってしまうわ」

(そんな、技があるなら絶手ェ止めねぇと!)

「しばらく前線を離れることになるけど仕方ないか」

アスナが俺とキリトに近づいてくる。

「なら、解決までちゃんと協力してもらうわよ。言っとくけど昼寝の時間はありませんから」

アスナの手をキリトが握る。

「してたのはそっちの方だろ」

アスナの顔が赤くなり、キリトの小さな悲鳴が部屋に響く。




「すまない!さっきの一件を最初から見ていた人。いたら話を聞かせてほしい!」

野次馬がざわめく中、青髪のロングの女性が前に出てくる。

「ゴメンね。怖い思いをしたばっかりなのに。あなたお名前は?」

「あ、あの私、ヨルコって言います」

その声には聞き覚えがあった。

「もしかして、最初の悲鳴も君?」

「は、はい、私さっきの殺された人と一緒にご飯食べに来てたんです。あの人名前はカインズって言って、昔同じギルドにいたことがあって、でも広場ではぐれちゃって。周りを見渡したら、協会の窓に彼が」

泣きながらヨルコさんは話す。アスナは彼女の慰めるため背中を摩る。

「その時、誰かを見なかった?」

「一瞬でしたが、カインズの後ろに人影が立っていた気がします」

「その人影に見覚えはあった?」

ヨルコさんは首を振る。

「その嫌な話を聞くようだけど、心当たりはあるか。カインズさんが誰かに狙われる理由に」

ヨルコさんは少し考えるが首を振る。




「すみません、こんな場所まで送ってもらっちゃて」

ヨルコさんを家まで送り届けた俺たちはこの圏内殺人について考えをまとめる。

「あのスピアの出処がわかればそれから犯人を追えるかもしれない」

「槍のことなら何となくは知識があるが、あんな槍は見たことねぇな」

歩きながら俺たちは話す。

「となると鑑定スキルが必要だな。お前とシュウがあげて......るわけないな」

「当然、君たちもね」

アスナが急に足を止める。

「ていうか、そのお前っていうのやめてくれない」

アスナが少し怒り気味なる。

「あ、あぁあ、じゃあ......あなた?」

アスナが不機嫌な顔をする。

「副団長さま......閃光さま?」

アスナは少し呆れた顔をする。

「普通にアスナでいいわよ」

「それで、鑑定スキルとかだけどフレンドに当ては?」

「う〜ん、友達で武器屋やってる娘が持ってるけど.....今は一番忙しい時間だしすぐには頼めないかな?」

「それなら俺の知り合いの雑貨屋にでも頼むか」

「あいつに頼むのかよ」




第五十層・アルゲード

街の本通りから一本逸れた道にあいつの店はある。

「相変わらずアコギな商売してるようだな」

「よう、キリトか」

この店はエギルの雑貨屋。

「久しぶりだな、エギル」

「おう、シュウも一緒か」

「安くしいれて安く提供するのがうちのもっとうなんでね」

「後半は疑わしいもんだな」

キリトとエギルが拳を合わせる。

「頑張ってるな、エギル」

「おめぇに心配されなくても心配ねぇよ」

俺とも拳をを合わせる。

すると俺たちの後ろからついて来たアスナの姿をみるやいなや、俺とキリトをカウンターに引きずりこむ。

「ど、どうして、ソロのお前らがしかも、あ、アスナと一緒とは、どういうことだ!お前ら仲悪かったんじゃないのか!?」

事情をエギルに話すと、店の奥で話を話す。

「圏内でHPが0に。デュエルじゃないのか?」

「【Winner】表示を発見できなかった」

「直前までヨルコさんと話していたなら睡眠PKの可能性もないわね」

「突発的なデュエルにしてはやり口が複雑すぎる。事前に計画されたPKだってことは確実だろうな」

「そこでこいつだ」

キリトは、カインズに刺さっていた短槍を取り出す。

エギルがそれを鑑定する。

「プレーヤーメイドだ」

「本当か?」

「誰ですか、作成者は?」

「グリムロック。聞いたことのねぇ名前だ。少なくとも一線級の刀匠ではねぇ。それに武器自体も変わったことはねぇ」

「でも、手がかりにはなるはずよ」

「一様、固有名も教えてくれ」

「《ギルティー・ソーン》となっているな。罪の茨ってところか」

エギルが武器をキリトに渡す。

「罪の......茨.......」

ギルティー・ソーンをキリトがじっと見る。よし、そして何か思いついたように刃先を自分に向ける。

「待ちなさい!!」

自分の手を突き刺そうとするキリトをアスナが止める。

「なんだよ」

「なんだよじゃないでしょ!?バカなの!?その武器で実際に死んだ人がいるのよ!?」

「でも、試してみないとわからないだろ」

「そういう無茶はやめなさい!?」

キリトから槍を奪い、エギルに渡す。

「この武器はエギルさんが預かっててください」

乱暴にアスナはエギルに武器をわたす。




翌日にヨルコさんから詳しい話を聞いた。

ヨルコさんの入ってたギルド、《黄金リンゴ》内でいざこざがあったらしい。何でも、たまたま倒したモンスターが敏捷力をあげる指輪を落としたらしく、その指輪をギルドで使うか売却して分配するかで意見が別れた。結果は5対3で売却でした。そして、ギルドのリーダーのグリセルダが売却しにいったあと帰って来なくなったそうだ。グリセルダは死んでいたそうだ。死んだ理由は不明。そして、グリムロックがグリセルダの旦那だったことを聞いた。

そして、俺たちは指輪の売却に反対したヨルコさん、カインズとあと1人の元へ向かった。

《聖竜連合》のディフェンス隊のリーダー、シュミットの元へ。

「グリムロックの武器でカインズが死んだというのは本当か」

「.......本当よ」

ヨルコさんがゆっくり頷く。シュミットが青ざめた顔をする。

「何で今更カインズが殺されるんだ!あいつが.......あいつが指輪を奪ったのか!?グリセルダを殺したのはあいつだったのか。グリムロックは売却に反対した全員を殺す気なのか。俺やお前も狙われているのか」

「グリムロックさんに作ってもらった他のメンバーの仕業かもしれないし.......もしかしたらグリセルダさん自身の復讐かもしれないし」

「えっ!」

「だって、圏内で人を殺すなんてこと幽霊でもない限りは不可能だわ」

シュミットが再び青ざめる。

「私、夕べ寝ないで考えた」

ヨルコさんが立ち上がる。

「結局のところグリセルダさんを殺したのはメンバー全員でもあるのよ!!」

急にヨルコさんが声をあげる。

「あの指輪がドロップした時、投票なんかしないでグリセルダさんの指示に従えば良かったんだわ!!」

俺たちが見てきたヨルコさんからは考えられない声で彼女は叫ぶ。彼女は窓枠に座る。

「ただ1人、グリムロックさんだけはグリセルダさんに任せると言った。だからあの人には私たちは全員に復習してグリセルダさんの仇を打つ権利があるんだわ」

シュミットが震え出す。

「冗談じゃない。.......冗談じゃないぞ。今更、半年も経ってから......何を今更......お前はそれでいいのかよ!!こんなわけもわからない方法で殺されていいのかよ!!」

シュミットがヨルコさんに詰め寄ろうとする。それを俺とキリトが止める。

グシャ!

何かが突き刺さったような鈍い音がどこからか聞こえる。ヨルコさんの様子がおかしい。

(........まさか!!)

その嫌な予想は的中してしまったヨルコさんの背中に短剣が突き刺さっている。

ヨルコさんは窓から落下していく。

「ヨルコさん!!」

キリトと俺は窓の外を見るとそこには、地面に着くと同時に光の欠片となり、消滅するヨルコさんが。

「うそ.....だろ」 
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